上方修正&割安株の出番到来、上値期待の「とっておき好業績6銘柄」 <株探トップ特集>
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―決算シーズン通過、上方修正を追い風に水準訂正が進む好実態株にフォーカス― 3月期決算企業の26年3月期上期(4~9月)決算がほぼ出揃った。上期決算では、米国の関税政策や為替動向を慎重に織り込んだ期初計画を見直す動きが広がるなか、AI(人工知能)需要の拡大やコスト環境の改善などが追い風となり、通期見通しを上方修正する企業が相次いだ。折り返し地点での上方修正は、企業の先行きに対する自信の高まりを映すもので、更なる上振れや来期業績の伸びを意識させる材料となる。そこで今回は、直近で通期予想を引き上げた企業のなかから、株価指標面で割安感が強く、上値余地が期待できる銘柄を探った。 ●上方修正471社、下方修正235社と明暗分かれる 10月1日から11月21日までに26年3月期通期の業績見通しを修正した企業を集計したところ、経常利益(米国会計基準と国際会計基準は税引き前利益)予想を上方修正した企業は471社に達した。トランプ関税や為替動向、世界経済の減速懸念などを背景に、4月時点では保守的な計画を示していた企業が多かったこともあり、およそ4社に1社が上方修正に踏み切った格好だ。 業種別では、AI・半導体関連の設備投資拡大が追い風となった電気機器や非鉄金属、金利上昇を背景に利息収入が増加した銀行、内需の底堅さや工事採算の改善が収益押し上げにつながった建設、大阪・関西万博効果などで利用客が伸びた鉄道などで上方修正が目立った。 一方、通期の経常利益予想を下方修正した企業は235社。市況悪化によって収益環境が厳しさを増した鉄鋼や紙パルプのほか、コンテナ運賃の下落が響いた海運などで見通しを引き下げる動きがみられた。 ●AI・半導体関連株が調整の一方、中小型株に資金シフト 東京株式市場では、AI相場の過熱感を警戒した利益確定売りが広がり、相場の牽引役だったAI・半導体関連株に調整が入る一方、出遅れ感のある中小型株に資金流入が目立ち始めている。こうした地合いのなか、通期業績を上方修正した銘柄のなかには、株価指標面でなお割安感が強く、押し目買い候補として注目できるものが少なくない。AI関連株の調整が一巡すれば、改めて好業績株に視線が向かいやすくなるだろう。 以下では、26年3月期の経常利益予想を上方修正した企業のうち、予想PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、配当利回りといった株式指標の水準に投資妙味のある好業績バリュー株を6銘柄ピックアップした。波乱含みの相場展開を踏まえ、押し目狙いの候補としてマークしておきたい。 ●東海理はトヨタ増産と円安が追い風 東海理化電機製作所 <6995> [東証P]はスイッチ類を主力とする自動車電装部品大手。売上高の7割超を占めるトヨタ自動車 <7203> [東証P]の生産台数増加や円安進行を追い風に、足もとの収益環境は良好だ。期初に警戒されていた米関税リスクも織り込みが進むなか、上期決算では通期の経常利益を従来予想の200億円から340億円(前期比1.4%減)に大幅上方修正し、配当も10円増額した。もっとも、上期経常利益の進捗率は7割超と高く、下期の前提為替レートを1ドル=140円と実勢より約15円も円高に設定している点を考慮すると、一段の上振れが期待できそうだ。株価は12日に約9年9ヵ月ぶりの高値をつけたあとは上昇一服しているが、予想PER9倍台、PBR0.7倍近辺、配当利回り3.7%前後と割安感は鮮明で、再評価余地は大きい。 ●東テクは安定成長かつ積極還元姿勢が高評価 東テク <9960> [東証P]はダイキン工業 <6367> [東証P]の業務用空調機器の有力代理店で国内トップの取扱高を誇る。アズビル <6845> [東証P]の特約店として自動制御システムの設計・施工も担い、空調販売と計装工事の両方を手掛ける国内唯一の存在だ。4~9月期は大都市再開発の新築案件、データセンター、工場、ホテル、官公庁案件を取り込んだうえ、採算重視の工事案件も増加し、売上高、経常利益ともに上期ベースの過去最高を達成した。好調な業績を踏まえ、14期連続最高益見通しの通期同利益を168億円(前期比7.9%増)に引き上げ、配当も従来比13円増の117円に増額修正した。安定した業績成長と強固な財務基盤を背景に14期連続の増配を計画し、配当利回りは3.3%台と株主還元の切り口からも魅力が高い。 ●AGSはDXニーズ捉え業績絶好調 AGS <3648> [東証S]は2004年にりそなグループから独立したシステムインテグレーター。自社データセンターを基盤に、システム構築から運用・保守までワンストップで提供する。4~9月期は売上高133億6900万円(前年同期比22.3%増)、経常利益13億4800万円(同2.2倍)といずれも上期ベースの過去最高を大幅に塗り替えた。ソフトウエア開発事業で法人向けDX案件や自治体向けの案件が大きく伸びたほか、情報処理サービス事業では金融機関向け運用業務に加え、データセンターやクラウドサービス案件の受注が好調だった。足もとの好調な業績を受け、上期決算発表前に通期業績見通しと配当予想の増額修正に踏み切っている。株価は10月20日に上場来高値をつけた後は押し戻されているが、予想PERは13倍台と妙味は十分で、押し目形成後の反発に期待がかかる。 ●日精化は3期ぶり最高益へ増額、国策テーマでも注目 日本精化 <4362> [東証P]は水と油の両方になじみやすい特殊な性質を持つ「リン脂質」を主力とする化学メーカー。スキンケア、メイクアップ、ヘアケアなどの化粧品向け原料をはじめ、医薬品原料や電子材料、工業用原料まで幅広い分野で事業展開している。4~9月期は羊毛由来の天然油脂「ウールグリース誘導体」が好調に推移し、期初計画を上回って着地。業績上振れに伴い、減益予想だった通期の経常利益を57億3000万円(前期比10.0%増)に上方修正し、3期ぶりのピーク益更新見通しを示した。今期配当は94円(前期比20円増)と9期連続増配を計画するほか、上期に20億円規模の自社株買いを実施するなど株主還元にも積極的だ。足もとではペロブスカイト太陽電池用素材の実用化を進めており、高市政権の政策テーマ関連としての側面からも注目度が高い。 ●ホクリヨウは鶏卵相場の高止まりで再度の上方修正も ホクリヨウ <1384> [東証S]は鶏卵の生産から加工・販売まで手掛ける大手養鶏会社。北海道と東北に複数の生産拠点を持ち、鳥インフルエンザなどのリスク分散にも配慮した生産体制を構築している。鶏卵相場は昨秋以降に流行した鳥インフルエンザや猛暑の影響で供給不足が続き、想定を上回る高値圏で推移。加えて、原価の6割を占める配合飼料価格の下落も追い風に、上期決算では今期2度目の業績見通しと配当予想の増額修正を発表した。通期経常利益は35億円(前期比74.9%増)と2期ぶりに最高益更新を見込むが、上期実績の進捗率は73.2%と高水準で、鶏卵卸売価格も2年ぶり高値圏にあることから、更なる業績上振れも意識される。予想PER10倍台と割高感は乏しく、見直し買いの余地は大きい。 ●国際計測は5年ぶり高値圏でも割安感鮮明 国際計測器 <7722> [東証S]は試験計測装置メーカー。タイヤを回転させて振動・騒音の原因となる不釣り合いを計測するバランシングマシンで世界トップシェアを誇るほか、シャフト歪み矯正機で国内首位を獲得するなど、自動車関連分野で高い存在感を示す。4~9月期はアジアを中心にタイヤ試験機の販売が大きく伸び、経常利益は前年同期比7.1倍の10億8600万円と急拡大して着地。これを受け、従来は減益予想だった通期の経常利益を12億円から15億円(前期比6.2%増)へ上方修正し、配当も35円(同5円増)に引き上げた。株価は14日に約5年ぶり高値をつけたが、予想PER10倍台、PBR0.9倍前後、配当利回り4.5%台と依然として割安感は強く、三拍子揃ったバリュー株として注目される。 株探ニュース
