「ハイパーバリュー株」大逆襲、株高変貌カウントダウンの超割安5銘柄 <株探トップ特集>
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―AI・半導体株顔負けの株高修正期待を内包、バリュー・ローテーションの流れ捉える― ここ最近のマーケットはヘアピンカーブの連続であり、しかも前方は視界不良で予想がつかない投資家泣かせの展開が続いている。合理から軌道を外れた株価の上げや下げは、個別単位でみればファンドの設定やクローズなどに伴う機械的な売買要因も絡むが、多くは人間心理のバイアスがかかったがゆえの産物である。しかし、近年は人工知能(AI)による高速アルゴリズム取引など、生身の人間の相場観では太刀打ちできない異次元の局面も多くなってきた。 直近ではAIバブル論議がかまびすしいが、それだけAIに関わるITや半導体などのビッグテックの株価が強烈なパフォーマンスを演じたことが背景にある。そして、この激しい値動きこそAIトレードのなせる業であるが、今はその負の側面が足もとで顕在化している。ただし、全体株価を左右する変数は一部のAI関連の主力株に偏っているものの、冷静に東京市場を俯瞰すると決して弱気相場に足を突っ込んでいるわけではないことが分かる。AI周辺のハイパーグロースに代わって、成長ダイナミズムを内在させるバリュー株、ハイパーバリューに投資マネーがシフトする動きが一部で観測される。これらの銘柄群は流動性が低い分だけ、AIトレードが介入しにくくファンダメンタルズに焦点を当てた投資が有効性を発揮しやすい。ここは小回りの利く個人投資家の強みを生かし、雌伏局面を経て動き出したハイパーバリューに照準を合わせ、新たな果実を獲得する好機ともいえる。 ●エヌビディアの“燕返し”の株価急落で騒然 週末21日の東京株式市場は日経平均株価が前日比1200円近い大幅反落となった。ここ上下にボラティリティの高い相場が続いているが、日米ともに AI関連株や半導体周辺株に足もとで逆風が強まっていることは確かのようだ。米国ではAI関連の象徴株としてマーケットの視線を浴びるエヌビディアの株価が決算発表を契機に大きく揺れており、これが投資家心理を不安に陥れている。 エヌビディアが現地時間19日に発表した四半期決算は今後のガイダンスも含めて文句のつけようのない好内容であったが、これを受けて時間外で大幅に買われたものの一夜明けた20日の通常取引では、上昇一巡後に突風にあおられるようにバランスを崩し、結局大きく下げに転じて取引を終えた。東京市場でもソフトバンクグループ <9984> [東証P]やアドバンテスト <6857> [東証P]などをはじめ、エヌビディア決算プレーによって一度は大きく買われた主力銘柄が21日は一転して売り込まれた。その結果、日経平均は4万8000円台半ばまで水準を切り下げ、前日に上昇した分を吐き出す格好となってしまった。 ●“逆バブル”修正期待の銘柄に舵を切る しかし、相場の中身をみるとリスクオフ一色というわけではなく、むしろリスク選好の地合いといってもよかった。これまで花形ポジションにいたAI・半導体関連は派手な下げに見舞われたものの、全体で見ればプライム市場の何と8割を超える銘柄が上昇するなど個別株物色意欲の強さが際立っていた。今の相場は日経平均の値動きと個人投資家の体感温度には大きなギャップが生じている。 ここまで米国株市場を発信地に繰り広げられていたAI関連株の大相場に、足もとでやや陰りが出てきていることは確かだ。半導体やデータセンターなどインフラに関わる企業も含め、AIのテーマで括られる銘柄群はPERやPBRなどトラディショナルな株価指標はあまり投資判断のモノサシには使われてこなかった。しかし、生成AI市場の予想を超える成長スピードを目の当たりにしながらも、一方でマネタイズ(収益化)がなかなか難しいという認識も広がっており、回収の利かない過剰投資ではないかという疑念がにわかにクローズアップされている。いわゆる理想買いの一巡で割高感が意識され始めた。 これに対して指標面で割安に放置されているバリュー株の一群は、足もとの業績が好調であっても、リターンリバーサルの対象として日の目を見ることがない状況が続いていたが、ここにきてムードが変わりつつある。1倍を大きく下回るような低PBR銘柄は、赤字で配当もしていないような銘柄であれば投資対象として除外されるが、赤字どころか利益成長トレンドを確保し、配当も積み増しているような企業で解散価値を下回る株価に放置された“逆バブル銘柄”も少なくない。 ●アクティビストの存在もテーマ買いを後押し 東証は2023年3月に上場企業に対し「資本コストや株価を意識した経営」を要請し、マーケットでも一時投資テーマとしてPBRが1倍に満たない、つまり解散価値を下回る(一株純資産を下回る)株価に位置する銘柄に対して、投資資金が食指を動かした経緯がある。当該企業が資本効率を改善させるため、言い換えればPBRを1倍以上に上昇させるべく成長投資や株主還元に取り組む可能性を示唆するため、企業価値向上期待から投資対象として魅力的という判断が成り立つからだ。しかし、実際のところは今なお、PBRが1倍に届かない銘柄が上場企業の約4割を占めている状況にある。 一方、そうしたなかで“物言う株主”いわゆるアクティビストの数が近年急増している。株式市場でも著名な投資ファンドの名前が大株主に浮上すると、その銘柄の株価が強く刺激され上昇するというケースが恒常化している。PBR及びそれと密接に関係するROEの改善を求めるのがアクティビストの常道である。もちろん、アクティビストが絡まなくても好実態で低PBRであれば常に株価に潜在的な修正ニーズが働いていることになり、企業側としてもその株高修正のプロセスを是としないケースは考えられない。 今回のトップ特集では、個人投資家好みの株価3ケタ台の中低位株を対象に、好実態かつ成長シナリオを有する低PBR銘柄で、ここから株価水準訂正の動きが大いに期待できる超割安株を5銘柄選りすぐった。基本はPBR1倍復帰を目指すことが終着点ではないものの、中期的な目標として意識されることは間違いない。仮にそこを一つのメルクマールとしても、株価の変貌度合いはハイテク成長株顔負けとなるだけに、要注目の5銘柄といえる。 ●大変身期待のハイパーバリュー5銘柄はこれだ ◎藤倉化成 <4620> [東証S] 藤倉化は自動車向けを主力とする樹脂系コーティング材で世界的シェアを有するほか、導電性樹脂材料など電子材料も手掛けている。製品価格上昇効果で利益採算が向上、自動車向け塗料はインドのほかベトナム、インドネシアなどアジア地域での拡販が牽引、集合住宅向け塗料も堅調だ。同社の筆頭株主はフジクラ <5803> [東証P]で20%超の株式を保有するが、資本関係だけでなく業務面の取引もある。現状は電子材料分野におけるプリンテッドエレクトロニクスでフジクラに貢献しているが、フジクラとはコーティング事業分野での連携も模索していく方向にある。26年3月期業績は営業利益段階で前期比23%増の16億円を見込むが、中間期(25年4~9月)時点で前年同期比40%増の10億1700万円を達成しており、通期も上振れ余地を残している。一株純資産は前期実績ベースで1368円と高水準であり、0.4倍前後のPBRは割安感が際立つ。一方で年間配当は前期に18円に引き上げており配当利回りは3%近辺と高く、バリュー株素地に富んでいる。 株価は11月13日に658円の年初来高値をつけた後、調整を入れているが600円近辺の株価は魅力的な仕込み場となっている。潤沢な純資産を活用し、今後フジクラとの連携を背景に成長投資に振り向けるシナリオや株主還元を強化するといった思惑も内包しており、中期的に大きく株価の居どころを変える公算が大きい。早晩、新値街道への復帰から700円台での活躍を視界に入れる展開が見込まれる。 ◎日本精工 <6471> [東証P] 日精工は自動車や工作機械向けを主力とするベアリングメーカーで、半導体向けでも実績が高い。その商品競争力では国内トップに位置している。業績面は、今年9月にステアリング事業を手掛ける持ち分法適用会社の全株式を取得し完全子会社化したことで、トップライン、利益ともに押し上げ効果が鮮明となり、会社側従来見通しを大きく上回る状況にある。26年3月期は営業利益段階で従来予想の220億円から300億円(前期比5.4%増)に大幅増額、2割以上の減益を見込んでいたが、一転して増益見通しに変わった。また、来期についても増益トレンドが維持される公算が大きい。なお、今期最終利益については70億円から160億円に2倍以上となる上方修正で前期比1.5倍化を見込んでいる。 PBRは0.6倍台に放置される一方、株主還元に積極的な点は評価され3.8%台の高配当利回りを考慮すると時価は評価不足が歴然だ。解散価値を30%を超えて下回る時価は割安感が強く、早晩大きく見直される可能性が高い。11月5日にマドを開けて大幅高に買われた後、900円台でもみ合ったのちに水準を切り下げているが、ここは強気に買いで対処して報われよう。21年6月以来となる4ケタ大台回復も中長期的には通過点に過ぎない公算がある。 ◎信和 <3447> [東証S] 信和は仮設資材メーカー大手で物流機器の製造・販売も行っている。仮設資材は主力の建設現場向けシステム足場(次世代足場・くさび式足場)が快調に売り上げを伸ばし業績拡大に貢献。特に施工効率を40%上昇させるというロック機能付き次世代足場の拡販が進んでおり利益率改善に寄与している。一方、物流機器も大型倉庫向けなどを中心に多様化する顧客ニーズを捉えている。営業利益は25年3月期に前の期比2.3倍化するなど回復色を鮮明としたが、続く26年3月期も好調が続き、従来計画の16億5000万円から20億円(前期比23%増)予想に大幅増額した。PERが10倍未満で、PBRも解散価値を3割近く下回る0.7倍台と評価不足は明らかだ。加えて、配当利回りは3.8%台と高く、インカムゲインの観点でも魅力を内包している。 株価は11月6日に好決算発表に反応してザラ場916円の高値をつけたが、その後は伸び悩む展開で時価は800円台後半で売り物をこなしている状況だ。しかし、株価指標面から割安感が際立つほか、時価総額100億円台の小型株で、なおかつ株式需給面でも信用買い残が枯れた状態にあり上値は軽い。中期的には20年1月につけた1150円近辺が戻りのターゲットとなりそうだ。 ◎プレス工業 <7246> [東証P] プレス工はトラック用フレーム(骨格)やアクスル(車軸)を主力とする独立系自動車部品メーカーで国内トップクラスに位置する。主要顧客はいすゞ自動車 <7202> [東証P]で、売り上げの約3割を占めている。海外売上高比率は6割近くに達するが、そのなか米国やタイにおける生産台数増加が強力な追い風として寄与しており、国内では建機関連で油圧ショベル向けの需要獲得が進んでいる。26年3月期業績は期初予想を増額、売上高は小幅減収を見込むものの、営業利益については前期比横ばいの97億円予想から111億円(前期比15%増)と2ケタ成長見通しに変わった。株主還元姿勢も注目され、自社株買いや自己株式消却を積極的に進めている。また、毎期増配を続けるなか、今期配当は前期実績比3円増となる35円を計画、配当利回りは4.6%と抜群に高い。それにもかかわらずPBRは0.6倍台と格安に放置され水準訂正余地が大きい。 株価は11月11日を境に急動意、13日に744円の高値をつけた後は高値圏もみ合いで推移していたが、20日に新値街道に再突入。21日に763円まで水準を切り上げ、大勢2段上げが見込まれる状況にある。700~800円台は滞留出来高も低水準で、需給面から上値追いが加速するケースも考えられる。株価は指標面から割安感が強く、昨年5月につけた高値808円奪回から1990年以来となる4ケタ大台回復を視野に入れる展開へ。 ◎サンエー化研 <4234> [東証S] サンエー化研はプラスチックフィルム加工メーカーで、軽包装材や産業資材、機能性材料を収益の3本柱としている。軽包装材は食品から医療医薬品、日用品まで幅広い領域で活用され、産業資材は自動車や電子部品などに使う粘着製品に必須である剥離紙を製造する。機能性材料では主にスマートフォンや液晶テレビなどに使用される表面保護フィルムで実績が高い。製品開発にも傾注しており、完全密封包装された状態のまま電子レンジで加熱調理できる「レンジDo!」を業界に先駆けて開発している。足もとの業績も急回復局面に移行。前期にレゾナック・ホールディングス <4004> [東証P]から事業譲受した表面保護フィルム事業で業容拡大効果が発現、売上高で10億円程度の押し上げ効果をもたらし利益面にも貢献している。26年3月期営業利益は7億5000万円(前期は3400万円の赤字)と22年3月期以来の水準を取り戻す見通しだ。 PBR0.3倍前後と極めて低い水準に放置されているが、強固な財務基盤を背景に近年の営業赤字局面でも配当を途絶えさせたことがない。前期に自社株買いも決議するなど株主還元への取り組みにも余念がなく、株価は600円台半ばでの収れんを経て、大勢2段上げに向かう公算大。約7年ぶりの高値圏だが、わずか70億円台の時価総額は見直しが必至。800円台までは累積売買代金が希薄なこともあって戻りに弾みがつく可能性は十分だ。 株探ニュース
