大型施設の新設相次ぎ成長加速、光を放つ「ライブ・エンタメ関連」 <株探トップ特集>

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コラム

―市場規模は30年に8700億円規模へ、「トキ消費」「推し活」なども寄与―

 株式市場は、利下げ観測の後退などを背景にした米国株市場の不安定な動きを受けて、日本株市場も不透明感が強まっている。エヌビディアが現地時間19日に発表した8~10月期決算と業績予想を受けて、AI・半導体バブルへの懸念はいったんは後退したかにみえるが、一方で割高感を指摘する声もあり、予断を許さない。

 こうしたなか、AI・半導体株の次の「柱」を模索する動きもみられるが、注目は実態面での裏付けのある銘柄であろう。折しも3月期決算企業の中間決算発表も一巡し、好業績を再評価する時期でもある。

 そこで今回は、実態面での裏付けがあり、成長性も期待できる分野としてエンタテインメント(エンタメ)分野に注目。特に、コロナ禍からの回復から成長ステージへと移行しつつある、ライブ関連に注目したい。

●ぴあが26年3月期業績予想を上方修正

 国内におけるライブ関連銘柄の代表格で、チケット流通国内最大手のぴあ <4337> [東証P]は11月13日、9月中間期決算と同時に26年3月期通期連結業績予想について、売上高を470億円から500億円(前期比10.2%増)へ、営業利益を34億円から42億円(同59.3%増)へ上方修正した。会社側によると、国内レジャー・集客エンタメ市場の活況が継続したことに加えて、大阪・関西万博のチケット販売や関連出版物の収益増も寄与したという。業績予想の修正にあわせて、期末一括配当予想も10円から20円へ引き上げた。

 また、同月14日には大手芸能事務所のアミューズ <4301> [東証P]が9月中間期決算の発表とあわせて26年3月期の連結業績予想を営業利益で38億円から43億円(前期比53.7%増)に上方修正した。A-Sketchの連結除外の影響などから、売上高は650億円(同4.7%減)と減収を見込むものの、足もとでサザンオールスターズや星野源のコンサートツアーなどによりイベント関連収入が伸長。また、印税収入や子会社である極東電視台の番組制作収入の好調もあって営業利益は上方修正した。

●ライブ・エンタメ市場は過去最高を更新

 両社ともに共通しているのは、集客エンタメやコンサートなどライブ関連の好調だ。

 ぴあ子会社で、エンタメ分野に特化したシンクタンクであるぴあ総合研究所は6月24日、毎年実施しているライブ・エンタテインメント市場動向調査の2024年確定値を発表。24年のライブ・エンタテインメント(音楽・ステージ)の市場規模は、7605億円(前年比10.9%増)と過去最高を更新した。ジャンル別では、音楽分野が5299億円(同11.4%増)、ステージ分野が2306億円(同9.8%増)と、ともに大幅成長となった。

 同社によると、市場拡大の背景として、「トキ消費」「推し活」など新たな消費行動の定着に加え、大規模会場の新設・高稼働化や、人気アーティスト・コンテンツの集客力強化、チケット単価の上昇など複数の要因を挙げている。また、1公演あたりの動員数やチケット単価も、引き続き高水準を維持しているという。同社では、今後も同市場は年平均成長率2.4%で成長し、30年には8700億円まで拡大すると予測している。

●アリーナ新設相次ぎ「箱」不足解消

 市場拡大の背景として、特に注目したいのが、長年集客エンタメ分野でボトルネックとされていた大規模会場、いわゆる「箱」不足の解消だ。大規模ライブの会場となるスタジアムやアリーナの多くは地方自治体が建設・所有しているが、大阪城ホール(1983年開業)、東京ドーム(88年開業)、横浜アリーナ(89年開業)などバブル期に建設されたものが多く、近年では更新期を迎えていた。一方、新設に関しては地方自治体の財政悪化から、大型の「箱物」は先送りされる傾向にあったことから、スポーツ興行とライブ公演が増加するのに対応しきれず、これがボトルネックとなっていた。

 しかし、東京オリンピックの会場として建設され、22年から本格的にイベント利用が始まった「有明アリーナ」や、23年にオープンした音楽に特化した「Kアリーナ横浜」、昨年オープンした「LaLa arena TOKYO-BAY」など近年、大型施設の新設が相次いでおり、「箱」不足は解消されつつある。これ以降も、「GLION ARENA KOBE」(神戸市中央区)、「IGアリーナ」(名古屋市北区)、「TOYOTA ARENA TOKYO」(東京都江東区)など収容人数1万人以上のアリーナがオープンしており、興行数や公演数は今後も増加が見込まれている。

●ライブ関連の注目銘柄

 そこで今回は、市場拡大が続くライブ・エンタメ関連の注目銘柄をピックアップしてみた。前述のぴあ、アミューズ以外にも足もと業績の良いものが多く要注目だ。

 ヒビノ <2469> [東証S]は、コンサートの音響や映像をサポートする専門家集団として、音響・映像・照明機器などの販売・施工や建築音響に関する設計・施工、コンサート・イベントの音響・大型映像サービスを提供している。11月10日に発表した9月中間期連結決算は、営業利益23億8100万円(前年同期比62.6%増)と大幅増益で着地。M&Aに伴う連結範囲の拡大に加えて、コンサート・イベントサービス事業が、大阪・関西万博の開催やコンサート・イベント市場の活況に伴う旺盛な需要を捉えて計画を上回ったとして、26年3月期通期業績予想を営業利益で43億円から44億5000万円(前期比6.7%増)に上方修正した。同月17日にはスポーツ・エンタテインメントの施設設計で国内有数の実績のある梓設計のスタジアム・アリーナビジネスユニットとの業務提携を発表しており、施設の企画・設計の初期段階から高付加価値な空間体験を創出する施設提案を行うとしている。

 エムアップホールディングス <3661> [東証P]は、「Official髭男dism」「SUPER BEAVER」「あいみょん」をはじめとする数多くのアーティストのファンクラブやファンサイト運営を展開するほか、電子チケット販売などを手掛けている。11月14日に発表した9月中間期連結決算は、営業利益が27億100万円(前年同期比38.0%増)で着地した。会社側では、主力アーティストを中心に既存ファンクラブの新規会員獲得が進んだことや、電子チケット事業の取扱枚数・収益が大幅に増加していることなどを要因に26年3月期通期の業績予想を営業利益で47億円から52億円(前期比27.9%増)に上方修正している。

 スペースシャワーSKIYAKIホールディングス <4838> [東証S]は、国内最大級の屋内音楽フェスである「FUKUOKA MUSIC FES.」のプロデュースをはじめとして「SWEET LOVE SHOWER」など音楽ライブイベントの企画・制作を手掛けているほか、アーティストのファンクラブ運営やライブハウス運営なども展開。11月13日に発表した9月中間期連結決算は、ライブ・コンテンツ事業が牽引役となり、営業利益は13億3900万円(前年同期比2.3倍)と大幅増益で着地。これを受けて26年3月期業績予想を営業利益で13億円から16億円(前期比82.3%増)へ上方修正しており、中期経営計画で目標とする28年3月期営業利益16億円を前倒しで達成する見通しだ。

 エイベックス <7860> [東証P]は、ダンス系音楽を中心に、多様なエンタテインメントコンテンツを企画・制作・販売。近年ではライブやイベントなど非音楽パッケージ分野の強化に力を入れており、11月13日に発表した9月中間期連結決算では、スタジアムやアリーナなどの大型ライブ公演数が84公演(前年同期72)に増加しライブ動員数も113万人から150万人に増加した。チケット単価も上昇しており、ライブを含む音楽事業の収益が改善。また、「ガチアクタ」などアニメ作品の海外配信と映画興行の好調も牽引役となり、営業利益は11億1900万円(前年同期21億2200万円の赤字)と黒字に転換。既存事業の整理一巡で財務体質が筋肉質になったことなども貢献した。なお、26年3月期通期では営業利益30億円(前期18億1900万円の赤字)を見込む。

 サイバーエージェント <4751> [東証P]は、インターネット広告事業を祖業にメディア事業やゲーム事業を展開している。11月14日に発表した25年9月期連結決算で、営業利益は717億200万円(前の期比78.9%増)と大幅増益で着地。「ABEMA」が開局後10年ぶりに黒字化したほか、ゲーム事業で大型ヒットタイトルを創出したことなどが業績を押し上げた。「ウマ娘」をアニメや映画のほか、音楽ライブやミュージカルにも展開し人気を維持しているほか、2.5次元ミュージカルを手掛けるネルケプランニングも業績に貢献。なお、26年9月期は営業利益500億~600億円(前期比30.3%~16.3%減)を見込む。

 セレスポ <9625> [東証S]は、イベントの企画から設営や運営までを一括して請け負っている。12年の「ぎふ清流国体」、14年の「長崎がんばらんば国体」など国体の開・閉会式の企画や設営にも携わっており、スポーツイベントに強みがある。11月13日に発表した9月中間期単独決算は、営業損益が1億300万円の黒字(前年同期1億3300万円の赤字)と黒字に転換して着地。スポーツ事業の案件数が順調に回復していることなどが寄与した。なお、26年3月期通期では営業利益7億円(前期比12.5%減)を見込む。

株探ニュース

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