脱炭素社会で活躍秒読み、「カーボンクレジット」関連株が走り出す <株探トップ特集>
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―排出量取引の本格稼働控え高まる関心、ニーズ追い風に市場は更に拡大へ― 化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、エネルギーの安定供給・経済成長・排出削減の同時実現を目指すグリーントランスフォーメーション(GX)は政府が推進する重要な取り組みのひとつだ。2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)達成という国家目標が掲げられ、26年度にGX-ETS(排出量取引制度)の本格稼働を控えているなか、カーボンクレジットへの関心が高まっている。 ●上昇するクレジット価格 排出量取引とは、企業などが排出する二酸化炭素(CO2)に価格をつけるカーボンプライシングの枠組みのひとつで、各企業に設定された温室効果ガス排出量の目標値(基準)と実際の排出量との差分を売買する制度。排出量が基準より少なければ、その削減分を超過削減枠として他社に売却することができ、逆に基準を超えて排出してしまった企業は不足分を購入することで対応する。 一方、カーボンクレジットは、森林保護や省エネ技術、再生可能エネルギーの導入などにより、CO2排出削減・除去に取り組んだ結果を数値化して認証し、市場などで売買できるようにしたもの。排出量取引が排出枠を企業間で売買できる制度であるのに対し、カーボンクレジットは排出削減量そのものを取引可能なクレジット(排出権)として認証したものである点に違いがある。 企業の脱炭素経営が重要視されるなか、カーボンクレジットは カーボンニュートラル達成に向けた手段として注目されており、東京証券取引所が23年10月に開設した市場では開設から25年10月31日までの約定値段(加重平均)が省エネルギーは2831円(22年度の実証事業段階では1431円)、再生可能エネ(電力)は4623円(同2953円)に上昇している。 直近では米アルファベット傘下のグーグルがアマゾン熱帯雨林の再生に取り組むブラジル企業と大型の炭素除去契約を締結するなど、カーボンクレジットを求める動きが世界的に広がっており、関連銘柄に目を向けてみたい。 ●価値創出に向けた動き続々 ソフトバンク <9434> [東証P]傘下のステラーグリーンは17日、北海道北斗市とゼロカーボンシティの実現に向けた連携協定を締結した。これは地域森林資源の可視化・価値化を通じたカーボンニュートラルの実現と持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めるもので、具体的には森林資源を活用したカーボンクレジットの創出や地域資源の有効活用など多岐にわたる活動を展開する予定だとしている。 大東建託 <1878> [東証P]は14日、太陽光発電によって創出された再生可能エネ量をクレジットとして国が認証するJクレジット制度を活用し、11月下旬からサプライチェーン企業向けに再生可能エネ由来のカーボンクレジットとして販売を開始すると発表。同社は30年までに太陽光発電設備1万5000棟の設置を目標に掲げ、年間約2万トンのクレジットを発行する構えだ。 旭化成 <3407> [東証P]は7日、森林由来Jクレジット(適切な森林管理によって生じるCO2吸収量を環境価値として評価し、クレジットとして国が認証する制度)創出支援システムを開発したことを明らかにした。同システムは、宮崎県延岡市における森林由来Jクレジット創出で試験的に活用され、同市の申請業務の作業量を約90%削減することができたという。 フルッタフルッタ <2586> [東証G]は6日、サステナブルな農法を実践する生産者とサステナブルな原料を求めるメーカーをマッチングし、ウェブ上で原料の売買を行うプラットフォーム「SCOPE3Neo」を構築・リリースしたと発表。これにより、企業への義務化が進むScope3排出量(製品の原材料調達から製造、販売、消費、廃棄に至るまでの過程において排出される温室効果ガスの量)の可視化と削減を支援する。 チェンジホールディングス <3962> [東証P]は5日、子会社の東光コンピュータ・サービス(TCS)が森林経営活動に基づくJクレジットの創出支援事業で、東北地域の4県(秋田・岩手・宮城・青森)の森林組合と契約したことを明らかにした。TCSは同契約を通じて約17万6000トンのCO2削減・吸収量の認証取得を目指し、総額17億6000万円相当の環境価値の創出を見込む。 ●スカパーJなどにも注目 また、スカパーJSATホールディングス <9412> [東証P]傘下のスカパーJSATは10月、Green Carbon(東京都千代田区)と資本・業務提携したと発表。同社はGreen Carbonが展開するカーボンクレジット創出事業の将来性に着目し、自社が進める衛星データを活用したスペースインテリジェンス事業とのシナジーを見込んでいるという。 大阪ガス <9532> [東証P]は10月、出光興産 <5019> [東証P]や兼松 <8020> [東証P]、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]傘下の三菱UFJ信託銀行、芙蓉総合リース <8424> [東証P]、SOMPOホールディングス <8630> [東証P]傘下の損害保険ジャパン、東邦ガス <9533> [東証P]、Green Carbonとともに、各社がフィリピンで推進する間断かんがい技術(AWD)を活用した二国間クレジット制度(日本とパートナー国が協力して温室効果ガスの削減に取り組み、その成果を両国で分け合う制度)の普及拡大を目指すコンソーシアムを組成したことを明らかにした。 このほかでは、群馬県森林・緑整備基金などと森林由来Jクレジット創出事業を行うINPEX <1605> [東証P]、子会社がクレジット調達支援を手掛けているエスプール <2471> [東証P]、カーボンクレジットモニタリング解析のスタートアップに出資している三菱電機 <6503> [東証P]、沖縄県石垣市及び八重山森林組合と森林に由来するJクレジット創出で連携協定を結んでいるヤマハ発動機 <7272> [東証P]、クレジットの創出・調達・仲介などを展開するバイウィル(東京都中央区)に子会社を通じて出資しているスパークス・グループ <8739> [東証P]などが関連銘柄として挙げられる。 株探ニュース
