海と陸の垣根をなくす瞠目の技術、地方創生も担う「陸上養殖」関連株 <株探トップ特集>(訂正)
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―NTTなどを筆頭にさまざまな業界から参入相次ぐ、ここから狙う中小型株はこれだ― 「海と陸の垣根がなくなる」、ともするとSFめいた話に聞こえるが、これがある意味で現実になりつつある。経済成長を続ける中で世界的に食料需要が増大し、水産物を無計画に乱獲する国々の影響はもとより、気候変動によって生態系自体に揺らぎが生じている「海」の代わりに水質や成長環境を管理できる陸上での 養殖が拡大しつつある。株式市場でも今後テーマ性を帯びる可能性が高い「陸上養殖」関連に注目したい。 ●人口減、環境変化による放棄地増大の処方箋 人口減少に向かっている日本の姿は、ほとんどの人々が認識しているはずである。しかし、ここで改めてその認識をクリアなものにしておくと、出生及び死亡に関する前提条件によって推計に幅が出るが、出生「低位」かつ死亡「中位」とする推計では、2050年代前半には人口が節目の1億人を割り込むことが指摘されている。この時の人口に占める65歳以上の割合は40%近くにまで上昇することになるという。 さて、この人口減や環境変化に伴って、必然的に巻き起こるのが放棄地や廃止施設の増加問題だ。既にこうした問題は地方から起こっているが、その一方で処方箋も考えられ始めている。その一つの選択肢が「陸上養殖」である。 ●廃止水道施設を利活用して新境地開拓 例えば、「県庁版社内ベンチャー制度」を通じて、現在実証実験を行っている神奈川県のケースを紹介したい。場所は、横須賀市にある木古庭揚水ポンプ所で、ポンプと名前にある通り、もともと廃止された水道施設である。水道施設は、存置設備の除却が膨大であり、立地場所や接道状況も悪く、跡地活用や譲渡が困難な状態が続きやすいという。産経新聞の取材によれば、廃止水道施設は県内に45カ所存在するとのこと。わずか1県でそれだけの数があり、なおかつ廃止施設は紹介した水道関連にとどまらないというのがポイントである。施設によって、存置設備や立地場所はさまざまであり、先程の木古庭揚水ポンプ所ではバナメイエビが選ばれたが、状況に応じて適切な養殖対象を選定できる点も強みとなるだろう。 このほかにも、三重県志摩市では廃止された真珠の養殖場をイノベーション拠点に活用しようとする例や、静岡市清水区では斎場跡地でクエタマの陸上養殖を行うなど、今まで処置がしにくいと判断され放置されてきた土地や施設跡の活用が近年動き出している。 ●「海なし県」でも地方創生の大きな手段に また、昔からいわゆる「海なし県」と呼ばれる自治体で、特色ある養殖を行い、ブランド化することで地方創生や魅力向上につなげている事例も増えている。 養殖の期待感が高いのは、生物自体の研究が日々進むことによって、その性質を深く理解したうえでなおかつ加速度的に進化するIT技術を組み合わせ、最適化された環境で取り組みを進めていけるようになっていく点である。将来的に、日本の新たなお家芸の一つとなる可能性を「陸上養殖」は秘めている。 ●大手通信事業者が食指を動かすテーマに 同分野には大手通信事業者が相次ぎ参入している。NTT <9432> [東証P]はグループのNTTアクアにおいて循環式陸上養殖システムの研究開発から事業化まで推進しているほか、NTTグリーン&フードでは陸上養殖を軸にした環境負荷の少ない魚介類を生産するプラント、その餌となる藻類の生産プラント、魚介類の排泄物などを浄化する水質浄化プラントを手掛けている。 KDDI <9433> [東証P]はデータの見える化やデータ蓄積などのIoT化に特化したサービス「KDDI IoTクラウド Standard」を活用し、センサーからクラウド環境、データ表示機能までワンストップで提供。22年から長崎県五島市の五島ヤマフ(長崎県五島市)と陸上養殖に取り組んでいる。ソフトバンク <9434> [東証P]もスマート養殖実現に向けて継続して取り組んでおり、エッジAIで養殖産業をサポートする最新技術が、世界最大級のテクノロジー展示会である「CES 2025」で「CES Innovation Awards」を受賞している。 ●大手商社をはじめ業界を問わず参入相次ぐ 大手商社では、三井物産 <8031> [東証P]が閉鎖循環式陸上養殖でサーモン養殖を手掛けるFRDジャパン(さいたま市岩槻区)へ出資し、サーモン陸上養殖事業に参画している。三菱商事 <8058> [東証P]はマルハニチロ <1333> [東証P]との合弁会社アトランドにおいてサーモンの陸上養殖事業を行っている。丸紅 <8002> [東証P]はアトランティックサーモンの養殖を行っているプロキシマーとの独占販売契約によって、日本初の陸上養殖アトランティックサーモン「FUJI ATLANTIC SALMON」を販売する。 また、富士通 <6702> [東証P]は水温・水質を測るセンサーと水中カメラをIoT化することで、誰にでも養殖管理ができる「Fishtech養殖管理」システムを手掛けている。更にカナデビア <7004> [東証P]は陸上養殖に必要な水処理システムをパッケージ化し、持続可能で安定的な水産物供給に貢献している。こうした事例は事欠かないが、このほか今回の特集では、株価的妙味を考慮して、陸上養殖に関連する中小型株を中心に関連有力銘柄を紹介していく。 ●陸上養殖で活躍期待の中小型株 ◆オーケーエム <6229> [東証S]~流体配管に使われるバタフライバルブを中心に流体制御機器を製造。FRDジャパンが千葉県富津市で建設中のサーモントラウト陸上養殖商業プラントにおいて、配管計装工事の設計・施工を担う日揮ホールディングス <1963> [東証P]を通じて、養殖に不可欠な水処理・循環システムに同社バルブが採用された。水質管理・流体制御の要となる設備において、高い信頼性と耐久性が評価されている。 ◆リックス <7525> [東証P]~高圧液圧応用機器を中心とした産業用機械を手掛ける。23年10月に陸上養殖設備の開発・実証試験を開始したと発表。海水に強いFRPポンプや、ポンプを制御するインバーター、フィルターなど、陸上養殖設備に関する機器を同社グループ内で取り扱う。完全閉鎖循環式陸上養殖設備のため水替えは必要なく、完全養殖で産卵させた稚魚を加熱処理した配合飼料で育成させるため、アニサキスなどの食中毒の発生が極めて低い。 ◆ニチモウ <8091> [東証P]~水産専門商社だが、九州電力 <9508> [東証P]などと共同出資したフイッシュファームみらい合同会社において、九州最大規模となる陸上養殖場で「みらいサーモン」を生産している。福岡県豊前市の豊前発電所の敷地を活用して陸上養殖場を運営。 ◆古野電気 <6814> [東証P]~魚群探知機など舶用電子機器の大手メーカー。養殖管理に必要な各種データをセンサーから自動的に蓄積・統合し、効率的な養殖を実現する統合型ソリューション「魚体重推定システム」を展開する。同システムは専用カメラユニットで撮影した映像をAIで解析し、魚体重・尾叉長・体高などのデータをクラウド上に蓄積・統合する。 ※お詫びと訂正 ゼネラル・オイスター <3224> については、2024年5月22日開催の取締役会において、ゼネラル・オイスター連結子会社である株式会社ジーオー・ファーム(沖縄県島尻郡)の全保有株式を株式会社グッドフィールド(神奈川横浜市)に譲渡することを決議し、2024年5月22日付けで株式譲渡契約を締結、現在は撤退しているため本記事より削除しました。 株探ニュース
