市川雅浩氏【日経平均5万円台維持、上昇トレンドは続くのか】 <相場観特集>
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―騰勢一服も反動安に至らず底堅さ発揮、決算シーズン後の日本株の展望を読む― 週明け10日の日経平均株価は反発し、終値は5万円台を維持した。この日は米政府機関の閉鎖が解除されるとの期待感が支えとなったが、月初までの株高が急ピッチだったことを背景に、調整局面に移行することへの警戒感は根強く、相場のボラティリティも高まっている。決算発表シーズンを経て、日本株のトレンドはどう変化するのか。三井住友DSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト、市川雅浩氏に話を聞いた。 ●「リスク回避局面突入なら短命か」 市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト) 10月の株高のスピードが極めて速く、一時的な反動リスクが警戒されているものの、中長期的に日本株の上昇が続くとの見方自体は変わっていない。過去数年単位でみると国内では物価と賃金が上昇するなど、マクロ環境は大きく変化した。東京証券取引所の働きかけを受け、資本効率の向上に向けた企業の意識改革も進んでいる。日経平均は10月末に5万2000円を突破する場面があったが、この時の高値を試す形で、今後1ヵ月間では日経平均は5万2500円程度まで上昇する可能性があると個人的には考えている。一方で、AI関連企業の中長期的な成長性や高市政権の経済政策に対する期待を後退させるような悪いニュースが出た場合、短期的には4万9000円を下回る水準への調整が見込まれる。米中関係では関税発動の延期が決まったが、あくまで延期に過ぎず、米中の対立要因が消えたわけではない点にも留意が必要だ。 上場企業による4~9月期の決算発表をみると、その内容は悪くはなく、国内景気や来期の企業業績回復を巡るマーケットの期待が損なわれるような感じにはなっていない。米国景気に関しては、トランプ関税による悪影響がこの先緩やかに発現し、景気の減速につながるとの見方がある。ただし9月と10月に続いて、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも連続利下げが決まるとみており、年明け以降の財政拡張策による効果を含め、米国経済を下支えする要因となると考えている。米株式市場では半導体関連株のバリュエーションが切り上がり、AIバブルへの懸念は根強いものの、業績やキャッシュフローの面での実績が乏しいまま買われている訳ではなく、バブルというよりは「ブーム」と言える。物色動向の偏りの反動からバリュエーションの観点で一時的な調整が入ったとしても、すかさず押し目買いが入ると考えており、ハイテク株安に端を発したリスクオフの期間は短いものとなると想定している。 日経平均はウエートの高い一部銘柄の動きに大きな影響を受けており、ハイテク株の物色動向に左右される展開が続くだろう。注目テーマとしては、やはり高市政権の経済政策に関連したものとなる。 AIやバイオをはじめ17の戦略分野を強化する方針が明らかになっている。造船やサイバーセキュリティー、防衛を含め17分野はいずれも注目度の高い投資テーマとして、継続的に物色されることになりそうだ。 (聞き手・長田善行) <プロフィール>(いちかわ・まさひろ) 日系・米系銀行で、株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を長く担当。現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。三井住友DSアセットマネジメントのウェブサイト「市川レポート 経済・相場のここに注目」にて日々レポートを掲載中。 株探ニュース
