10兆円規模の新経済圏を創出へ、「ステーブルコイン関連」総検証 <株探トップ特集>

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コラム

―国内フィンテック企業が先月発行スタート、メガバンクは金融庁支援のもと実証実験へ―

 金融分野のイノベーションに光が当たっている。新興フィンテック企業のJPYC(東京都千代田区)は10月27日、資金決済法に基づく国内初の円建て ステーブルコインの発行を始めた。誰もが自由に利活用できる「オープンな金融インフラ」として、さまざまな事業者と連携して新しい経済圏の創出を狙う。今後3年で10兆円規模の発行残高を目指すという。株式市場では既にステーブルコインへの注目度は高く、JPYCの発行に向けた動きが報じられた8月ごろから投資テーマとして浮上。その後も目先の相場動向にかかわらず、将来的な普及を見据えた投資家の根強い期待が寄せられている。

●米国で「天才法」成立

 ステーブルコインとは仮想通貨(暗号資産)と同じく ブロックチェーン技術を基盤とした電子決済手段のこと。法定通貨、あるいは金などのコモディティーと価値が連動するように設計されており、従来の銀行送金と比べ低コストで迅速に取引できる点が強みだ。ブロックチェーンを用いているため透明性も高いとされる。

 各国で動きが出始めており、米国ではトランプ大統領の肝いりで、ステーブルコインの利用促進を目的とした「ジーニアス法」が7月に成立。EU(欧州連合)では欧州中央銀行(ECB)による「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」の発行計画が足もと話題だが、9月には域内の大手民間銀行らがユーロ建てステーブルコインの発行を目指した新会社設立を明らかにしており、官民で取り組みを積極化させている。中国でも香港において普及に向けたルール整備が進められている。

●GMOは4年前から発行

 日本も動き出している。直近では三菱UFJ銀行などメガバンク3行がステーブルコインを共同発行すると報じられた。3行が出資する新興フィンテック企業Progmat(プログマ、東京都千代田区)のシステムを使い、今後実証を進めていくという。金融庁は7日、この実証実験を支援する方針を発表した。ふくおかフィナンシャルグループ <8354> [東証P]は7月、TIS <3626> [東証P]や米フィンテック企業などとステーブルコインの事業化に向けた共同検討を開始すると発表。SBIホールディングス <8473> [東証P]は3月に傘下の仮想通貨取引所でドル建てステーブルコイン「USDC」の取り扱いを国内で初めてスタートした。

 また、CCIグループ <7381> [東証P](旧北國フィナンシャルホールディングス)は2024年から国内初の預金型ステーブルコイン「トチカ」を提供中。GMOインターネットグループ <9449> [東証P]は21年から米国子会社で円建て・ドル建てステーブルコインを発行している。

●中小型ITシステム系銘柄に注目、独自コイン計画など

 関連銘柄としてまず押さえておきたいのが、JPYCに出資(直接またはファンド経由含む)している銘柄群だ。なかでもシステム開発のアステリア <3853> [東証P]、情報処理サービスの電算システムホールディングス <4072> [東証P]は投資家の物色ターゲットになっている。JPYCを巡る8月の報道の前後で、アステリアは株価を600円台半ばから2500円台へ、電算システムは2700円前後から5000円台へそれぞれ急騰させた。その後、両銘柄とも調整局面に入ったものの、足もと報道前の株価を上回る水準をキープし堅調に推移している。出資企業にはパーソルホールディングス <2181> [東証P]、アイフル <8515> [東証P]、ユナイテッド <2497> [東証G]、TWOSTONE&Sons <7352> [東証G]なども名を連ねる。

 このほか注目なのがマーケティング支援のSpeee <4499> [東証S]。同社は子会社のDatachain(データチェーン)を通じて前述のプログマに出資しており、関連有力株として人気化する場面がしばしばみられる。証券会社向けシステム開発のインタートレード <3747> [東証S]は持ち分法適用会社デジタルアセットマーケッツが電算システムのステーブルコイン決済送金基盤の構築支援を決めたことを明らかにしており、同社株も注目度が高い。

 まだまだ関連銘柄は挙げられる。システム開発会社のグラッドキューブ <9561> [東証G]は9月に独自のステーブルコイン「SPAIA(スパイア)コイン」(仮称)を26年度内に発行する計画を打ち出した。就活支援サイトなどを運営するポート <7047> [東証G]は8月にステーブルコイン市場の成約支援事業に参入すると明らかにした。金融機関向けシステム開発のシンプレクス・ホールディングス <4373> [東証P]はステーブルコインの発行・償還システム「Simplex Stablecoin」を6月に発表している。ステーブルコインを含むフィンテック周辺に広げると、インターネットイニシアティブ <3774> [東証P]が見逃せない。グループ会社のディーカレットDCP(東京都千代田区)が開発するデジタル通貨「DCJPY」を、ゆうちょ銀行 <7182> [東証P]が導入すると伝わっている。

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