新築・更新需要増で追い風強力、「ビルオートメーション関連」起動へ <株探トップ特集>

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コラム

―カーボンニュートラル実現目指しビルの省エネ化進む、IoTやAIなどへの対応も―

 歴史的な上昇となった10月相場から一転、11月相場は軟調なスタートとなった。日経平均株価の10月の上昇幅は7478円(16.6%)と過去最大の上げ幅を記録したが、11月に入り5日までの2日間で2199円(4.2%)下落した。6日には671円(1.3%)高と急反発したものの、予断を許さない状況が続いている。

 10月相場を牽引した「高市トレード」も一巡感が感じられるなか、決算発表集中期もあって相場は「森より木」が意識されているが、業績好調が期待される企業の多いテーマへの関心も高まっている。今回はその一つとして、省エネルギーや運用の効率化に対するニーズの高まりから需要が高まっているビルディング・オートメーション(BA)関連に注目したい。

●BA関連企業で好決算相次ぐ

 10月30日、国内におけるBA最大手のアズビル <6845> [東証P]が26年3月期の連結業績予想について、売上高を2970億円から2980億円(前期比0.8%減)へ、営業利益を430億円から455億円(同9.7%増)へ上方修正した。アズビルテルスターの連結除外による売上高・利益の目減り分があるものの、BA事業において堅調な市況を背景に、工事を期末に集中させない負荷平準化などの取り組みにより採算性が良い既設・サービス分野が増加。価格転嫁をはじめとする各種収益力強化策の効果により採算性が改善したことも寄与する。

 また、BAシステムの設計、施工管理、保守保全を一貫して提供する日本電技 <1723> [東証S]は11月4日、9月中間期連結決算を発表し、売上高186億6800万円(前年同期比24.6%増)、営業利益41億4000万円(同78.6%増)と大幅な増収増益を達成。それに伴い26年3月期通期業績予想についても売上高を435億円から460億円(前期比6.8%増)へ、営業利益を92億円から105億円(同15.1%増)へ上方修正した。会社側では、BAなど空調計装関連事業の増加を要因として挙げており、首都圏・地方都市再開発の大型新設物件などの需要堅調が背景にある。

●省エネ化で求められるBA

 好決算が相次いだBA関連企業だが、そもそもBAとは、ビルなど建物内のさまざまな設備やシステムを自動的に制御・管理するシステムのこと。空調制御や照明制御、セキュリティーやアクセス制御、エネルギー管理、防災・防犯設備、エレベーター制御などが関連してくる。

 国土交通省の建築着工統計調査によると、新築着工床面積は近年縮小傾向にある。非居住用の建築着工床面積は2006年度には7211万4000平方メートルだったが、24年度には3875万1000平方メートルに半分近くまで縮小した。その一方、1990年代から2000年代初頭に建設された大型物件が改修の目安となる築25年を超えたことで、さまざまな改修・リニューアルが必要となっており、これがBA市場の拡大につながっている。

 特に重要視されているのがビルの省エネ化だ。建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)が改正され、25年4月から、原則として全ての新築建築物に対する省エネ基準への適合が義務化された。ビル全体のエネルギー使用状況を「見える化」し、空調・照明・換気設備などを効率的に制御することで、省エネ化と快適性の両立を実現するためにもBAの重要性は高まっている。

 また、既存建築物についても、エネルギー効率向上に加えて、 IoTやAIなど先端技術への対応やセキュリティーと安全性の向上、運用コストの最適化と維持管理費の削減などの面からもBAの重要性は高まっている。国内におけるBAに関する市場規模の詳細な調査はないものの、海外の調査会社のなかには日本のBA市場について、25年から33年の期間で年7%台の成長を見込むところもあり、BA市場は拡大が見込まれている。

●BA関連の注目銘柄

 BA関連銘柄は前述のアズビル、日本電技のほかにも、24年にビル分野の顧客協創型研究施設を刷新した日立製作所 <6501> [東証P]や、ビル設備システムとセキュリティーシステム、省エネ管理システムなどを連携させたトータルソリューションを提供する三菱電機 <6503> [東証P]、次世代型ビルオートメーションシステムを手掛けるNECネッツエスアイを傘下に有するNEC <6701> [東証P]、照明・空調・入退室など建物設備を総合的に監視・制御するBAを提供するパナソニック ホールディングス <6752> [東証P]などの電機大手が関連銘柄として挙げられる。更に、次のような設備工事会社なども要注目だろう。

 三機工業 <1961> [東証P]は、独自の汎用オープンBA監視・制御システム「SanBACS」を提供しており、六本木ヒルズ・森タワー(東京都港区)や虎ノ門ヒルズ・ビジネスタワー(同)などに納入実績を持つ。26年3月期のビル空調衛生事業の受注高は第1四半期時点で1130億円(前期比62.4%増)を予想するが、期首予想の840億円から増額するなど足もとの受注状況も良好。なお、11月14日に中間決算の発表を予定している。

 ダイダン <1980> [東証P]は、クラウド型ビル制御システム「REMOVIS(リモビス)」を中核とする建物設備監視管理ソリューションサービスを提供し、ビルの省エネ化とともにビル管理の省力化・省人化に貢献している。足もとの受注環境は良好としており、26年3月期は会社全体で2830億円(前期比0.6%増)と過去最高水準だった前期並みの受注高を予想。なお、11月7日に中間決算の発表を予定している。

 東テク <9960> [東証P]はビルや施設の計画段階から参画し、BAの設計・施工から竣工後の保守・メンテナンスを行う総合エンジニアリング企業で、前述のアズビルの大手特約店でもある。足もとでは大都市を中心とした再開発の新築需要に加え、民間投資案件や官公庁案件の需要を取り込み、BAなど計装事業を含む工事事業の受注が順調に拡大。なお、11月11日に中間決算の発表を予定している。

 オーテック <1736> [東証S]は、環境システム事業として、新築から改修工事における空調自動制御システムの設計、施工からメンテナンスまでを提供。中央監視装置・自動制御システムにアズビルの製品を採用しているのが特徴となっている。足もとで環境システム事業における受注高は膨らんでおり、26年3月期の環境システム事業の受注高は190億円(前期比0.6%増)を見込む。なお、11月10日に中間決算の発表を予定している。

 また、空調工事以外でもエレベーター保守で独立系最大手のジャパンエレベーターサービスホールディングス <6544> [東証P]にも注目。エレベーターメーカー大手は本体価格を抑えることで新しいビルへの採用を促進する一方、メンテナンス価格を高めに設定することで利益を確保する傾向にあるが、独立系である同社はメーカー系と同等の高品質なサービスを安く提供することで、顧客基盤を順調に拡大させている。このほか、防災システムを手掛ける能美防災 <6744> [東証P]、ホーチキ <6745> [東証P]などもビルリニューアルで需要が拡大しており注目したい。

株探ニュース

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