大塚竜太氏【思惑錯綜の11月相場、日経平均と個別株の展望】 <相場観特集>
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―5万円台を更に駆け上がるのか、それとも調整局面が接近か― 3連休明けとなった4日の東京株式市場は日経平均株価が大幅反落したが、TOPIXは相対的に下値抵抗力を発揮した。全体相場は主力どころの銘柄に買い疲れ感もみられるが、ここから東京市場は年末に向けてどのような軌道を描くのであろうか。企業の決算発表が徐々に本格化するなか、個別物色の流れや全体観に変化が生じる可能性はゼロではない。ここからの全体相場の展望と個別株の物色方向について、経験豊富なベテラン市場関係者である東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏に意見を聞いた。 ●「日経平均は調整でも個人が恩恵享受しやすい相場に」 大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト) 日経平均は前週末に1000円を超える上昇で5万2000円台まで水準を切り上げたが、さすがに目先はその反動で売り優勢の展開となっている。 AI・半導体 関連株が牽引する相場の全体像に変化はないが、主力株の決算発表を通過すれば、やや行き過ぎた物色人気も沈静化に向かう公算が小さくない。主力どころに買いが集中する相場は既にヤマを越えた感触もある。そうしたなか、来週11日に予定されるソフトバンクグループ <9984> [東証P]の決算は注目イベントだが、ここでAI相場もいったん一巡する可能性がありそうだ。 日経平均の構成比率上位にあるAI・半導体関連の主力銘柄の上値追いが止まれば、日経平均の上げ足も止まる。しかし、これは相場が弱くなるということではなく、個人投資家にとってはむしろ風向きが良い方向に変わる契機ともいえる。これまでは日経平均が上がっても一極集中的に半導体製造装置関連などのハイテク系主力株に買いが集まった結果で、その他の銘柄は“蚊帳の外”というケースも多く見受けられた。しかし、これからは個人投資家が長期で保有しているような銘柄群にも物色の矛先が向かう可能性があり、いわゆるリターン・リバーサルの動きが顕在化してくることが予想される。三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]をはじめとするメガバンクやトヨタ自動車 <7203> [東証P]などの自動車株、このほかハイテク系でも日立製作所 <6501> [東証P]や富士通 <6702> [東証P]といったこれまでとは毛色の異なる大型株に水準訂正の動きが広がりそうだ。 米国の決算発表はおおむね一巡したが、総じて内容は良好であったとみていいであろう。日本でも決算発表が徐々に本格化しているが、ここまでの展開をみると跛行色は否めないものの上方修正銘柄が多く、市場センチメントを強気に傾ける背景ともなっている。トランプ関税の影響は恐れていたほど企業業績の足かせとはなっていない状況が見える。もちろん、収益に関して企業の自助努力による部分もあるが、最初の段階で関税を過度にネガティブに織り込んだ部分の修正も、ここまでの上昇相場を後押しした可能性がある。 今後はこれまで相場の牽引役として偏って買われてきた銘柄については、利益確定売り圧力が重荷となりやすく、したがって日経平均の上値も重くなりそうだ。11月は月間で5万4000円近辺を上限ラインとするボックス相場をイメージしており、下値については5万円大台を割り込んで推移する場面もあるとみている。ただ前述したように、個人投資家はこれまで日経平均が上昇しても持ち株が上がらないという状況から、日経平均が弱含みで推移しても持ち株が上がるといった逆転現象が起こり得る。新たに物色する際にも出遅れ株を中心としたポートフォリオに切り替えるのが有効かもしれない。 (聞き手・中村潤一) <プロフィール>(おおつか・りゅうた) 1986年岡三証券に入社(株式部)。88~98年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。2000年から東洋証券に入社し現在に至る。 株探ニュース
