黎明迎える「ペロブスカイト太陽電池」、サナエノミクスで騰勢加速へ <株探トップ特集>

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コラム

―本格的な量産化を控え、“国産”推進背景に成長ロード走る関連銘柄―

 21日、高市早苗政権が発足した。いわゆる「高市トレード」を追い風に、日経平均株価はついに未踏の5万円乗せを達成した。高市トレードによりサイバーセキュリティー関連株をはじめ、核融合、量子コンピューター、宇宙開発、防衛など幅広いセクターに投資家が食指を動かしているが、忘れてはならないのが「ペロブスカイト太陽電池」関連株だ。高市首相は、景観を破壊する外国製の太陽光パネルで埋め尽くされている現状に対し“猛反対”の立場を鮮明にする一方、日本発のペロブスカイト太陽電池に対しては強力に推進する構えをみせている。本格的な量産化を目前に控え、関連銘柄も急速に広がりをみせている。サナエノミクスを錦の御旗に、強烈な追い風が吹くペロブスカイト太陽電池関連株のいまを追った。

●「日本に富を呼び込む」ケースに

 高市首相は自民党総裁選の出馬表明記者会見で、ペロブスカイト太陽電池について「この材料は日本で開発された。これを日本国内もとより海外にも展開していく」と発言。更に「日本に富を呼び込む一つのケースになっていく」と同電地への強い期待感を述べた。24日に行われた所信表明演説においても、ペロブスカイト太陽電池などを始めとする国産エネルギーの重要性に言及しており注目度がいっそう高まっている。

 今年2月に公表された第7次エネルギー基本計画でも、「ペロブスカイト太陽電池の早期の社会実装を進めていく」と記載された。「屋根設置型の太陽光発電」などの自家消費・地域消費型の再生可能エネルギー導入を重点的に加速させる方針で、ここでも軽量で曲がるといった特徴を持つ同電池の真骨頂が発揮されることになりそうだ。森林など自然の景観を壊すことなく、屋根や壁面、そして窓面など新たなポテンシャルを活用する場が開拓されることで、量産体制の確立とともに需要拡大に弾みがつくことになる。

 また、ペロブスカイト太陽電池の主原料となる ヨウ素は、世界産出量の約30%が国内産であり、輸入に頼ることなく安定供給が可能な点は経済安全保障上でも大きなメリットとなる。株式市場でもヨウ素生産に携わる伊勢化学工業 <4107> [東証S]、K&Oエナジーグループ <1663> [東証P]、豊田通商 <8015> [東証P]などの銘柄に、投資家の物色の矛先が向かい株価も変貌している。高市首相も、経済安保の観点から「国産」に強いこだわりをみせているだけに、地産地消が完遂できるペロブスカイト太陽電池は政策にもマッチしている。

●リードする積水化

 積水化学工業 <4204> [東証P]はペロブスカイト太陽電池分野をリードするが、今年1月には量産化に向けて、同太陽電池の製品設計・製造・販売を行う積水ソーラーフィルムを設立した。2027年に100メガワット製造ラインの稼働を計画し、需要獲得を進め30年にはギガワット級の製造ライン構築を図る方針だ。同電池の基板では、現在のところガラス基板が大勢を占める状況だが、より軽量で柔軟性の高いフィルム基板の商用化を目指す同社への期待は大きい。早期の量産化を目指すなか、株価は政策期待を背景に最高値圏で乱舞している。海外展開も視野に入れており、正念場のいま積水化から目が離せない。

 また、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた実証実験を多方面で進めているアイシン <7259> [東証P]や、26年にもペロブスカイト太陽電池の試験販売を始めると伝わるパナソニック ホールディングス <6752> [東証P]の動向にも注視しておきたい。

 前週末には、紫外線吸収剤を主力製品とするケミプロ化成 <4960> [東証S]が急動意しストップ高になり、きょうもその勢いは止まらず新値追いとなった。同社は、ペロブスカイト太陽電池材料の開発推進を標榜しており、改めて同電池に向ける投資家の関心の高さをうかがわせるものになった。4月には、ペロブスカイト太陽電池用材料の開発が、産業技術総合研究所の「被災地企業等再生可能エネルギー技術シーズ開発・事業化支援事業」に採択されたと発表している。同電池の開発競争が急速に進むなか、新たな銘柄発掘にも投資家の熱い視線が向かいそうだ。

●日電硝は超薄板ガラスで攻勢

 FPD(フラットパネルディスプレー)用ガラス大手の日本電気硝子 <5214> [東証P]は、超薄板化することでフレキシブル性を実現した軽量で曲がるガラス「G-Leaf」を開発。耐熱性、ガスバリア性など、ガラス本来の優れた特長も兼ね備えている。さまざまなアプリケーションで活用が進むほか、ペロブスカイト太陽電池においても採用期待が膨らむ。ディスプレー分野で培ったオーバーフロー技術を生かしニーズを捉えている。25年12月期連結営業利益は、前期比4.4倍の270億円を計画。株価は年初来高値圏を快走している。

●NITTOK、西部技研は案件受注

 NITTOKU <6145> [東証S]はコイル製造自動巻線機の最大手だが、7月にペロブスカイト太陽電池の製造プロセスにおける生産ラインの大型受注を獲得したと発表し、株価を刺激することになった。同社は、ロール・ツー・ロール設備について、ペロブスカイト太陽電池向けを中心にして受注活動に力を注いできた。受注金額は数十億円規模で、仕向け地は国内。売り上げは来期以降の業績に寄与するという。8月には26年3月期の連結業績予想について、売上高を380億円から400億円(前期比20.2%増)へ、営業利益を22億8000万円から33億円(同2.9倍)へ上方修正。株価も好調に推移しており、きょうは2473円まで買われ年初来高値を更新している。

 西部技研 <6223> [東証S]も6月、ペロブスカイト太陽電池製造工場向けの案件を受注したと発表。同社は、デシカント除湿機などの特殊空気処理機器や装置の製造・販売を世界展開するが、今回ペロブスカイト太陽電池製造工場向けの低露点対応型デシカント除湿機を受注した。受注金額は約4億円で、納入時期は26年12月期第2四半期を予定している。7月には電気自動車(EV)用リチウムイオン電池製造工場向け大型案件の受注を発表するなど、幅広い分野に活躍領域を広げている。

●戦略製品に位置付ける日精化

 日本精化 <4362> [東証P]も、ペロブスカイト太陽電池用素材を戦略製品の一つとして位置付けている。今月14日に公表された同社の「統合報告書2025」によると、同素材について27年頃から数億円の売り上げを見込み、30年度に向けて順次拡大を図る計画だという。同社は、独自製法により開発したペロブスカイト太陽電池で効率よく発電するための素材である正孔輸送材料「Spirokite(スピロカイト)」を手掛けており、今後攻勢をかける構えだ。26年3月期連結営業利益は、前期比2.1%増の50億円を計画しており、23年3月期の最高利益50億5700万円に迫る見込みだ。株価は、8月13日に2873円まで買われ年初来高値をつけた後は調整しているものの、今月14日の2392円を起点に切り返しに転じている。

●MORESC、早期開発の取り組み加速

 独立系の化学品メーカーのMORESCO <5018> [東証S]は、ペロブスカイト太陽電池関連の事業推進を掲げており、同電池向け高機能封止材の開発を進め早期の実用化を目指す。同社の封止材は、直接貼り合わせてもペロブスカイト素子にダメージを与えないという特徴を持ち、基材に貼り合わせるだけで優れた密着性を発揮(加熱やUV処理が不要)するという。コンソーシアムとの協働や入会など連携を強め、ペロブスカイト用封止材の早期開発の取り組みを加速させている。26年2月期連結営業利益は前期比25.8%増の17億5000万円を予想している。今月14日に発表した中間期の同利益は、前年同期比41.5%増の9億4900万円となった。株価は21日につけた直近安値1320円で反転し、4日続伸と上値指向をみせている。

●JIA、カネカにも注目

 航空機のオペレーティングリースを主力とするジャパンインベストメントアドバイザー <7172> [東証P]は、2月にグループが運営するファンドの新たな投資先として、ペロブスカイト太陽電池の開発に取り組む京都大学発スタートアップ企業のエネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)の株式を取得したと発表している。エネコートテクノロジーズが開発する同電池は、晴天時だけでなく、曇り空や室内光下のような暗い光でも高い発電能力を発揮し、フィルムを基材にした柔軟性の高い軽量太陽電池が実現可能だという。

 そのほかでは、「ペロブスカイト/結晶シリコン」のタンデム型太陽電池の開発を進め、変換効率32.5%を記録しているカネカ <4118> [東証P]にも注目したい。株価は25日移動平均線を突破し上値指向を強めており、8月7日につけた年初来高値4520円奪回からの一段高期待も高まる。また、高いフレキシブル性を持つガスバリアフィルムでペロブスカイトなど次世代太陽電池への採用を目指すリンテック <7966> [東証P]にも目を配っておきたい。

株探ニュース

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