高市トレードの支流に妙味あり、 国民皆歯科健診で要注目の歯科関連 <株探トップ特集>

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コラム

―虫歯・歯周病早期発見で糖尿病や心筋梗塞も予防へ、医療費抑制にも貢献へ―

 自由民主党の高市早苗総裁が10月21日に開かれた衆参両院の首相指名選挙で第104代首相に選出された。自民党総裁に選出されて以降、高市氏の政策期待を手掛かりとした「高市トレード」が加速し、一部では過熱感も指摘されているが、高市氏の掲げる政策のなかで、あまり日が当たっていないように見えるのが「国民皆歯科健診」に関連する銘柄だ。

 高市氏はかねてより「健康医療安全保障の構築」を掲げ、国民皆歯科健診の促進に力を入れている。また、10月20日の自民党と日本維新の会の連立政権合意書のなかでも、「国民皆保険制度の中核を守るための公的保険の在り方及び民間保険の活用に関する検討」など社会保障政策に関する項目が盛り込まれており、医療費の適正化のためにも、今後導入に向けた議論が活発化する可能性が高い。

 そこで今回は、国民皆歯科健診によりビジネスチャンス拡大が期待される企業を中心に、関連銘柄を考えてみたい。

●「国民皆歯科健診」とは

 国民皆歯科健診は、全ての日本国民が定期的に歯科健診を受けられるようにする制度のこと。日本では現在、1歳半から3歳までの乳幼児や小・中・高校生には歯科健診が義務づけられているが、大学生や社会人になると義務ではなくなるため、歯科健診の受診率が大幅に低下していた。

 そのため、日本は先進国のなかでも歯科健診の受診率が低く、80歳時点での平均残存歯数も15.6本(厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査」)と、予防歯科先進国といわれるスウェーデンの20本以上などと比較して少ない。国民皆歯科健診は、こうした状況を改善するために必要とされ、大学生や社会人を含む全ての国民を対象とすることを目指している。

●なぜ「国民皆歯科健診」が必要なのか

 こうした状況を受けて、6月に閣議決定された政府の骨太の方針にも生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた具体的な取り組みの推進が盛り込まれているが、そもそもなぜ、歯科健診が必要なのか。

 歯の健康は、単に食物を咀嚼するという点からだけでなく、食事や会話を楽しむなど、豊かな人生を送るための基礎になる。また、歯の健康は全身の健康と密接に関連しており、歯科健診によって虫歯や歯周病を防ぐことで、糖尿病や関節リウマチ、脳梗塞、心筋梗塞、呼吸器疾患、慢性腎臓病などの全身疾患の予防につながると考えられている。

 つまり、虫歯や歯周病の予防や早期発見・早期治療を行うことで、これらの疾患の予防や早期治療を図り、国の医療費負担を軽減することにもつながることになる。

●国民皆歯科健診で恩恵を受ける分野は

 これまで多くの日本人にとって、「歯医者は歯が痛くなってから行く」ものだったが、国民皆歯科健診によって「予防のために定期的に歯医者に行く」ことが根付くようになれば、さまざまな分野でビジネスチャンスの広がりが期待できる。

 もっとも直接的な恩恵を受けるのはもちろん歯科医院だが、受診者数が増えることで、歯科材料や歯科用機器、更に医療情報を扱うシステム需要の拡大につながる可能性がある。また定期的に健診を行うことで口腔ケア意識が高まり、歯ブラシや歯磨き粉などのオーラルケア用品の需要増加も期待されている。国民皆歯科健診に関する議論が深まれば、こうした銘柄への注目が高まりそうだ。

●歯科に関する主な関連銘柄

 ナカニシ <7716> [東証S]は、売上高の約6割(24年12月期)を 歯科事業が占めており、歯科用ハンドピース(歯科治療用回転機器)で世界トップクラス。超高速回転技術と超音波技術に強みを持ち、ハンドピースのほか、インプラント治療時に使われるインプラントモーター、歯石をとる時に使われる超音波スケーラーなどさまざまな製品を展開している。今年8月に発表した新たな中期経営計画では、ニーズが高まっている予防歯科や訪問歯科診療の分野で競争力のある製品を矢継ぎ早に上市することにより更なるシェア拡大を狙うとして、24年12月期には465億円だった歯科事業の売上高を30年12月期に600億~690億円に拡大させる計画で、会社全体でも1000億~1200億円を目指している。

 マニー <7730> [東証P]は、売上高の3割強(25年8月期)をデンタル(歯科用)製品が占める。手術用縫合針の製造で培った針金を素材とする微細加工技術に強みを持っており、根管治療機器や回転治療機器、修復材料、縫合機器及び周辺機器などを展開。特に根管治療機器では治療ニーズに対応した製品開発を進めた結果、2000種類以上のラインアップを備えているのが特徴となっている。同社では29年8月期に売上高450億円、営業利益率32%(145億円)を目指す中期経営計画を掲げているが、デンタル製品では根管治療のポートフォリオ拡大などで成長を目指している。

 松風 <7979> [東証P]は、売上高の約9割(25年3月期)をデンタル製品が占めており、入れ歯などの人工歯類や天然歯や歯科材料の研磨を行う際に使用する研削材類で国内シェアトップクラス。更に3Dプリンター造形用インクなどを手掛けている。また、1971年に、アメリカに海外販売拠点を設けたのを皮切りに海外展開にも積極的で、現在は北米・中南米、欧州、中国、アジア・オセアニアなど海外売上比率は6割近く(25年3月期)を占め、これを伸ばすことで28年3月期に売上高501億円(25年3月期386億9800万円)、営業利益75億円(同53億9200万円)を目指している。

 日本アイ・エス・ケイ <7986> [東証S]は、業務用・家庭用の耐火金庫で知られるが、売上高の約3分の1(24年12月期)をデンタル関連事業が占めている。診療ユニット(診療台)をはじめX線撮影装置、訪問診療関連製品、治療器具など歯科医療に関する設備・機器類を幅広く展開。また、歯科衛生士育成の専門学校を併設しているメーカーとしても知られ、実習机の開発など商品開発にも生かされているのが特徴だ。

 アソインターナショナル <9340> [東証S]は、1982年の創業時から矯正歯科技工物(矯正装置)の製造・販売に特化しており、アライナー(マウスピース型矯正装置)が主力商品。デジタル技術を活用した高精度の矯正装置が特徴で、マニラ、ハワイに営業・製造拠点を持ち、カリフォルニア・シリコンバレーにデータセンターを設立するなど海外展開にも注力している。28年6月期に売上高50億4800万円(25年6月期37億9600万円)、営業利益9億1800万円(同6億5800万円)を目指す中期経営計画では、「売上高海外比率50%超のシン・歯科矯正グローバル企業へ」をビジョンに掲げ、米国基盤の確立などに注力している。

 メディカルネット <3645> [東証G]は、歯科医療に特化したプラットフォームサービスを展開するヘルステック企業。生活者向けに歯科医院検索ネットや自由診療分野(インプラント、矯正歯科、審美歯科など)の専門サイトを運営するほか、事業者向けに歯科医院向けのWebマーケティング支援や経営支援を展開している。また、歯科器材や医薬品の販売を行う歯科商社事業なども展開。29年5月期に売上高120億円(25年5月期60億7700万円)、営業利益15億円(同9800万円)を目指している。

 東和ハイシステム <4172> [東証S]は、歯科医院向けシステム事業に特化し、レセプト機能やカルテ機能、インフォームドコンセント機能、運営管理を効率化する機能などを統合した「歯科電子カルテ統合システム」が主力製品。また、音声だけで 電子カルテの入力などができる「AI・音声Hiクラテス」シリーズなども提供している。27年9月期に売上高35億円(24年9月期21億1400万円)、経常利益10億円(同5億8700万円)を目指す中期経営計画を掲げている。

 ブランディングテクノロジー <7067> [東証G]は、ブランドを軸に中堅・中小企業のデジタルシフトを支援する企業。グループ会社シンフォニカルが歯科・医療業界に特化したブランディングやデジタルマーケティング支援を行っており、約2100件の支援実績を有している。また、メディア事業としてBtoC向けに歯医者・歯科医院の検索・予約サイト「歯科タウン」や、BtoB向けに歯科専門Webコンサルティング情報サイト「シカコン」などを運営している。

 このほか、歯の詰め物や被せ物に用いられるコンポジットレジンや歯科用接着材を手掛けるトクヤマデンタルを傘下に有するトクヤマ <4043> [東証P]や、歯ブラシなどオーラルケア製品で国内首位のライオン <4912> [東証P]、「KTCメディカル」ブランドでインプラント手術向けドライバやトルクレンチなどを手掛けるKTC <5966> [東証S]、歯科インプラント製品を手掛ける日本ピストンリングを傘下に有するリケンNPR <6209> [東証P]、人工歯用のファインセラミックス用ジルコニアを手掛ける第一稀元素化学工業 <4082> [東証P]なども注目。更に、21年にマルヤマ歯科商店を買収し、歯科材料や歯科医療機器の販売をはじめ、開業プランニングやアフターサービス(メンテナンス)などを展開するサイネックス <2376> [東証S]なども関連銘柄として挙げたい。

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