貴金属価格高騰で瞠目、輝き放つ「サーキュラーエコノミー」関連株 <株探トップ特集>
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―循環経済への移行は世界的な潮流、効率的に再利用し付加価値最大化へ― 足もとで金をはじめとする貴金属の価格が高騰していることから、資源を効率的に再利用し付加価値を最大化する社会経済システム「サーキュラーエコノミー(循環経済)」が再び関心を集めそうだ。これまでの大量生産・大量消費型の経済社会活動は、気候変動問題、天然資源の枯渇、大規模な資源採取による生物多様性の破壊などさまざまな環境問題につながっており、循環経済への移行は世界的な潮流。環境省が6月に公表した「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」では、政府一丸となって取り組むべき重要な政策課題として取り上げられている。 ●26年度概算要求200億円 サーキュラーエコノミーとは、市場のライフサイクル全体で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、ストックを有効活用しながらサービス化などを通じて付加価値の最大化を図る経済のこと。資源を大切に使う考え方としては「3R(リデュース、リユース、リサイクル)」があるが、3Rが廃棄物を減らすための取り組みであるのに対し、サーキュラーエコノミーは廃棄物を原則ゼロにすることを目標にしていることから3Rよりも更に進んだものといえる。 環境省と経済産業省は連携して「先進的な資源循環投資促進事業」を推進しており、2026年度予算の概算要求では200億円(25年度当初予算は150億円)を計上。この事業は、先進的な資源循環技術・設備に対する実証・設備導入支援を行い、リサイクルを実施することで、一足飛びに 脱炭素が困難な産業に再生素材を供給することや、GX(グリーン・トランスフォーメーション)移行に必要な革新的な製品(蓄電池など)の原材料を供給する資源循環の取り組みを支援するもので、国内産業のGX実現を支えることを目的としている。 政府は国内のサーキュラーエコノミー市場規模について、20年の50兆円から30年には80兆円、50年には120兆円まで拡大すると試算しており、経済波及効果が期待される。資源循環を巡る各企業の取り組みは一段と活発化するとみられ、関連銘柄をチェックしておきたい。 ●広がる金属リサイクルの動き 住友金属鉱山 <5713> [東証P]は今月15日、同日に愛媛県が設立した「えひめEVサーキュラーエコノミー推進協議会」に入会した。この協議会は電気自動車(EV)やバッテリーの再利用・再資源化を通じた地域経済の活性化や国内初の地域完結型EV資源循環モデルの構築に取り組むもの。同社は東予工場(愛媛県西条市)とニッケル工場(愛媛県新居浜市)内に、使用済みのリチウムイオン二次電池(LIB)などから銅、ニッケル、コバルト、リチウムを回収するリサイクルプラントを建設中で、26年6月に完成する予定だ。 JX金属 <5016> [東証P]は9月26日、金属・リサイクル事業におけるリサイクル原料の増処理に向けた前処理プロセスの設備投資を実施することを明らかにした。金属価格の上昇や資源循環への関心の高まりを背景に、低品位E-waste(電気電子機器廃棄物)など前処理を要するリサイクル原料の増集荷が必要となることが見込まれるためで、佐賀関製錬所(大分県大分市)でキルン炉(燃焼や電熱などを用いて熱処理を行うための窯のこと)など前処理設備の能力を増強するという。 大栄環境 <9336> [東証P]は9月25日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「高度循環型システム構築に向けた廃電気・電子機器処理プロセス基盤技術開発」で、産業技術総合研究所(AIST)などと共同で廃小型家電の無人選別システムの実証を開始すると発表した。このシステムは、スマートフォンやタブレットなど廃小型家電6品目を対象に人工知能(AI)が機種を判定し、最適な破砕・選別工程を施して貴金属、銅、レアメタルの回収を行うもの。対象製品と回収素材の拡張にも取り組み、廃小型家電のリサイクル技術の更なる高度化を目指すとしている。 マイクロ波化学 <9227> [東証G]は9月8日、ディーピーエス(京都市西京区)の低濃度貴金属回収事業を譲り受ける契約を締結し、取引が完了したことを明らかにした。同社は同事業の取得・拡大により、クリティカルミネラルの新たな供給源を確立し、サプライチェーンの強靱化を通じて経済安全保障に貢献するとともに、サーキュラーエコノミーの推進や環境負荷の低減につなげたい考えだ。 このほか、パソコン・小型家電の回収を行うリネットジャパングループ <3556> [東証G]、大手が手掛けていないような扱いにくい廃棄物や極微量の含有物から貴金属を回収する三和油化工業 <4125> [東証S]、 貴金属リサイクル事業などを行うDOWAホールディングス <5714> [東証P]、貴金属含有スクラップを回収しリサイクルするAREホールディングス <5857> [東証P]、都市鉱山から有価金属を回収し再生するアサカ理研 <5724> [東証S]、貴金属リサイクル事業を展開する松田産業 <7456> [東証P]のビジネス機会も広がりそうだ。 ●再生プラ関連株などにも注目 経産省が8月に再生プラスチックの利用を義務付ける品目に関して、7月に示した容器包装、自動車、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・乾燥機の6品目以外にも拡大していく方針を示したことで、これらに関連する銘柄にも注目したい。 三菱総合研究所 <3636> [東証P]は今月21日、経産省の「資源自律経済確立産官学連携加速化事業費(広域自治体における資源循環システムの構築に向けた実証事業)」の委託先として採択されたと発表。地域特性に応じた資源循環システムを構築するため、大都市圏・地方都市・中小地域それぞれで再生プラを中心とした再生材の大規模供給体制の確立に向けた課題を分析・検証するための実証事業を開始するという。 リファインバースグループ <7375> [東証G]は今月21日、東レ <3402> [東証P]と廃棄エアバッグや端材を再生したナイロン66樹脂素材の開発に向けて協業を更に深化させるため、基本合意書(MOU)を締結し開発を加速すると発表。この取り組みを推進することで、国内で廃車から回収するエアバッグを自動車用途に再利用するサプライチェーンの構築を目指す構えだ。 三井化学 <4183> [東証P]は9月30日、太陽石油(東京都千代田区)とサーキュラーエコノミーの実現に向けた協業について検討を開始したことを明らかにした。具体的には、三井化学のクラッカーでは処理困難な廃プラ分解油の一部(重質分)を太陽石油の四国事業所で処理し、三井化学にマスバランス方式によるケミカルリサイクル由来のナフサやプロピレンなどを提供。また、使用可能な廃プラ原料の拡大にも取り組み、バイオマス製品の供給拡大に関しても協業の可能性を検討するとしている。 これ以外では、廃棄物処理や再資源化、資源リサイクル、再生可能エネルギーなどの環境事業を展開しているTREホールディングス <9247> [東証P]も要マーク。同社は今月8日、みずほリース <8425> [東証P]と資本・業務提携に関する契約の締結を決議したと発表。両社は22年11月の「サーキュラーエコノミーに向けた事業スキーム構築に係る基本合意」以降、高度循環型社会及び脱炭素社会の実現に向けて、新たな事業モデルの構築に取り組んでおり、このほど戦略的パートナーシップを確立することで合意したという。なお、みずほリースはTREHDの普通株式321万3200株を追加取得することを決定している。 株探ニュース