明日の株式相場に向けて=「サナエ&トランプ」ノミクス相場開幕か
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きょう(22日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比8円安の4万9307円と3日ぶり小反落。引き続き上下にハイボラティリティな相場が続いている。日経平均は朝方に700円あまりの急落に見舞われたが、値上がり銘柄数が値下がり数を圧倒的に上回っている状況で、実態と大きくかけ離れた地合いであった。その後は急速に下げ幅を縮小し、後場に入るとプラス圏に切り返したが、結局引け際に軟化した。なお、TOPIXの方は1日を通して概ね前日終値を上回って推移した。 森より木を見る投資とは、端的に言えば日経平均などの全体指数に惑わされず、個別株に焦点を合わせたストラテジーを称したものだが、いまや日経平均は全体を表す「森」ではなくなっている。というのは日経平均構成比の上位4傑であるソフトバンクグループ<9984.T>、アドバンテスト<6857.T>、ファーストリテイリング<9983.T>、東京エレクトロン<8035.T>の値動きに左右されるケースがあまりに多く、ともすれば全体相場の流れとは遊離した指数と化しているからだ。特にソフトバンクGとアドテストの2銘柄が「日経平均ブラザーズ」と言っていいくらい影響力が大きい。きょうの相場は、ある意味ソフトバンクGの独壇場といってよく、同社株1銘柄で日経平均を500円以上押し下げる場面があった。その後は下げ渋り、つれて日経平均も立ち直る格好となったが、大引け段階でも246円あまりの押し下げ効果をもたらしている。そして、何といっても刮目すべきは同社株の売買代金で、何と1銘柄で1兆円を上回った。時価総額をモノサシとすれば米国とは比べ物にならないものの、ソフトバンクGやアドテストなどのAI・半導体関連は指数への影響度という点でGAFAM化してきている。米国発のAI相場が弾け飛ばない限り、今後も日経平均の上値が伸び続けることを暗示しているともいえる。 高市早苗内閣が発足し、東京市場は久し振りにテンションが上がった状態にある。目先は好材料出尽くしでいったん株価が下値を試しても、それは中休みに過ぎず、しばらくは波状的な投資資金の攻勢が見込める状況といえそうだ。組閣人事については要衝である財務大臣に大蔵省出身で主計官を務めた実績のある片山さつき氏を起用したほか、税調会長にはラスボスを外して小野寺五典氏を起用したことで、減税・財政拡張路線に本腰を入れる構えを明示、これはマーケットを取りまく海外マネーに対しても強烈なアピールとなる。 今月27日にはトランプ米大統領が来日し、翌28日に高市首相と日米首脳会談を行う予定にあるが、株式市場でも高市トレード、維新トレードに加えて、当面は「東京版トランプトレード」の思惑を織り込む流れとなることが想定される。防衛関連はその最たるもので、“防衛三羽烏”に位置付けられる三菱重工業<7011.T>、川崎重工業<7012.T>、IHI<7013.T>のほか、東京計器<7721.T>や新明和工業<7224.T>などが動兆しきりとなっている。 防衛関連の裾野は広いが、当欄で9月末にも取り上げた理経<8226.T>のほか、AIデータセンター関連として継続的に注目してきた日本電波工業<6779.T>も防衛向けで特殊水晶発振器の需要を囲い込んでおり、関連有力株として見直される可能性がある。ひと昔前は防衛関連といえば常に名前の挙がっていた石川製作所<6208.T>も業績好調であり、8月下旬につけた年初来高値1784円奪回から新局面入りが十分視野に入りそうだ。これ以外に、薄商いだが穴株として目を配っておきたい銘柄がエブレン<6599.T>だ。産業用コンピューターなどのバックブレーンの受託生産を行っているが、防衛関連の新規案件が収益に貢献している。電力向け送電デバイスでも実績が高く、AIデータセンター特需にもかかわる銘柄で買いの手掛かり材料は意外にも豊富だ。 AI半導体関連が相場の主軸を担ってきたが、このテーマ性自体は色褪せることはないものの、時間軸的には第1ステージと第2ステージの幕間に来ている感がある。きょうのソフトバンクGの動きに反映されるように、目先的には大口の資金ローテーションが生じている。きょうのトヨタ自動車<7203.T>を筆頭とする自動車株人気は、米ゼネラル・モーターズ<GM>の好業績見通しや足もとのドル・円相場の動きだけではなく、一部の投資マネーによるバリューシフトの動きを反映している可能性もありそうだ。こうなると、低PBR銘柄の宝庫でもある自動車部品メーカーにもスポットが当たる公算が大きいといえる。アーレスティ<5852.T>、エフテック<7212.T>、大豊工業<6470.T>、プレス工業<7246.T>、三光合成<7888.T>のほか、自動車部品向け樹脂加工を手掛ける児玉化学工業<4222.T>などをマークしたい。 あすのスケジュールでは、対外・対内証券売買契約が朝方取引開始前に発表され、午後取引時間中に9月の全国スーパー売上高や、日銀が10月の金融システムレポートを開示する。なお、この日は広島県知事選の告示日(投開票は11月9日)。また、IPOが1社予定されており、東証グロース市場にサイバーソリューションズ<436A.T>が新規上場する。海外では、韓国金融通貨委員会で政策金利が発表されるほか、トルコ金融政策決定会合の結果も注目される。これ以外では8月のカナダ小売売上高、9月の米中古住宅販売件数などに関心が高い。なお、タイ市場は休場となる。(銀) 出所:MINKABU PRESS