生成AI普及が法務を改革、「リーガルテック」で新ステージ突入の銘柄群 <株探トップ特集>

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コラム

―企業の業務プロセスを効率化、高い専門性と精度が求められ成長性は不変-

  生成AIが普及するなか、AIが契約書を数秒で精査し、膨大な判例や過去の類似契約を瞬時に整理する時代が始まっている。従来、法務はリスク管理、つまり守りの側面のイメージが強かったが、今や効率化にとどまらず、企業の新規ビジネスの実現スピードを左右する可能性がある「攻めのインフラ」へと進化させているのが「リーガルテック」だ。法務の在り方そのものを変えていく「リーガルテック」関連に焦点を当てた。

●AI活用し過去の判例や類似契約を瞬時に整理

 今年は坂口志文氏と北川進氏という2人の日本人のノーベル賞受賞者が新たに誕生し、日本中が祝福ムードに包まれた。彼らに限らず、日夜取り組まれている偉大な研究はそれ自体に価値がある半面、その研究結果を適切に守るには例えば特許のような法律の力が不可欠だ。また、企業活動でも最初にあるのは取引ルールの合意、つまり契約書の締結である。情報の透明化、コンプライアンス意識の高まりが進展していく中で、企業の法律順守は社会的にも一段と求められていくことになる。

 そんななか、生成AIが普及するとともに法務の世界は大きな変革期を迎えている。冒頭に触れたように、AIが契約書を数秒で精査し、膨大な判例や過去の類似契約を瞬時に整理する時代に突入しているのだ。AIを用いて法務業務プロセスを効率化することで、企業の成長スピードを高めることも可能となる。ただ、AI分野に関しては、9月末に公開された動画生成AI「Sora」がSNSなどでも話題になっている。もはや、本物との見分けが全くつかなくなりつつあるハイクオリティーの生成AI動画が大量にインターネットの海にあふれ出している。ほぼ原作通りの見た目、声を再現した有名キャラクターが登場する動画も無数に出ており、著作権侵害との批判も噴出している。権利侵害の声をしっかりと挙げていくことが、自社のみならず業界全体を守ることにもつながり、長期的な目線ではAIの適切な発展・活用に寄与していくことになるのだろう。

●「ハルシネーション」リスク残り人間のチェックは不可欠

 「リーガルテック」により企業の法律業務の効率化が進んでいる。しかし、生成AIと法務との親和性の高さはリーガルテック企業には逆風にもなり得る。サービスを利用する企業からは「一般的な生成AIを利用すれば十分ではないか」との声が出てくるリスクがあるのだ。とはいえ、AIが事実と異なる情報を伝える「ハルシネーション(幻覚)」を考慮すると、法務は高い専門性と精度が求められ、他分野に比べてもより人間のチェックが必要不可欠であるとも言える。それだけに、まさにデジタルと人間の協業が高いレベルで実現されるべき分野なのだ。その意味で、普及途上のリーガルテックには大きな成長余地が広がっていると言えそうだ。

●弁護士COMやアシロなど存在感

 例えば、「リーガルテック」の代表的な関連企業として弁護士ドットコム <6027> [東証G]が挙げられる。同社は日本最大級の法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」をはじめ、税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」、法務に役立つ企業法務ポータルサイト「BUSINESS LAWYERS」を手掛けている。また、三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]は8月、 Contract Lifecycle Management(CLM:契約ライフサイクルマネジメント)事業を展開する「SMBCリーガルX(クロス)」を設立し、契約プロセス全体をデジタル化する「LegalXross(リーガルクロス)」プラットフォームを通じた、契約書の作成・締結・管理・分析・法務コンプライアンスの5つの領域を一気通貫で支援することを目指している。アシロ <7378> [東証G]は弁護士業界とITを結びつけたリーガルメディアサイトの運営を手掛けている。25年10月期の連結営業利益は前期比4.2倍の13億7800万円と最高益更新の予想だ。以下では、リーガルテック関連の妙味企業を紹介する。

●GVAテックやフロンテオ、インフォMTなど注目

 GVA TECH <298A> [東証G]~主に法務部門や法律事務所向けに法務業務のDXを推進する「LegalTech SaaS事業」及び社内に法務機能がないようなスタートアップ企業や中小企業でも簡単に登記手続きが行える「登記事業」を主要なサービスとしており、「GVA商標登録」や「GVA法人登記」「GVA登記簿取得」などのリーガルテックサービスの開発・運営を行う。10月には株式会社や有限会社、合同会社、一般社団法人など各種法人の議事録テンプレートをダウンロードできる「GVA法人議事録」のサービスを開始している。

 FRONTEO <2158> [東証G]~リーガルテックAIは創業以来の事業であり、eディスカバリ(電子情報開示)支援とフォレンジック調査(デジタル鑑識)が2本柱となる。有事の際のデータの特定・保全・処理、ドキュメントレビュー、提出データ(報告書)の作成に至るまでワンストップサービスで対応。リーガルテックビジネスで培ったAI技術を生かし、人事、知財、法務、労務など、さまざまなビジネス分野の作業効率化に役立つソリューションを提供。

 ミロク情報サービス <9928> [東証P]~税理士や公認会計士向けのソフトウェア開発を手掛ける。20年にはリーガルテックベンチャーのリセ(東京都千代田区)と資本・業務提携している。少人数法務を支援する契約書レビューAIクラウドサービス「LeCHECK(リチェック)」を提供。AIによる契約書の自動レビュー、英文契約書の機械翻訳、自社ノウハウの蓄積などさまざまな機能を提供し、契約業務の効率化とコスト削減をサポートする。

 インフォマート <2492> [東証P]~企業間取引における請求・受発注などの業務効率化を実現するクラウドサービスを提供・運営している。電子契約サービス「BtoBプラットフォーム 契約書」は、発行側も受領側も、WEBだけで契約が完了する高度な電子契約システムであり、契約内容の改ざんリスクを最小化するほか、契約書類の紛失や情報漏洩のリスクを減らす。

 リコー <7752> [東証P]~オフィス向け複合機や企業のDXを支援するITソリューションを手掛ける。契約に関する相談から締結後の契約書管理までをワンストップで対応するクラウドサービス「RICOH Contract Workflow Service」を提供する。法務相談の自動回答で対応件数の90%削減、100%の法務チェックを実現するなど、契約に関するナレッジと履行を一元管理し、法務部門の業務を効率化する。

 GMOグローバルサイン・ホールディングス <3788> [東証P]~セキュリティー対策の電子証明書の発行、及び安全なクラウド基盤の提供などを行う。ID管理・認証サービス「GMOトラスト・ログイン」において、25年9月末にはLegalOn Technologies(東京都渋谷区)が提供する「LegalOn: World Leading Legal AI」と、SAML認証による連携を開始。ログインのみで「LegalOn」を利用できるようになり、機密性の高い法務情報を安心して扱える環境が整った。

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