地方創生の起爆剤に、国民的レジャー化の「サウナ」関連株を徹底追跡 <株探トップ特集>
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―愛好者によるリピート需要根強くブームは新展開、新商品も続々誕生― サウナブームが新たな展開をみせている。これまで屋内型施設が中心だったサウナ施設は進化を遂げ、着衣のまま楽しめるサウナや、デザイン性の高い屋外型サウナが続々と誕生している。規制緩和に並行して、地域の活性化に向けてサウナを活用する事例も相次いでおり、国民的なレジャーに進化したと言っても過言ではない。中期的な市場拡大が期待されるサウナビジネスに関連する銘柄を徹底追跡する。 ●コロナ禍経てスーパー銭湯の集客力は回復 公衆浴場を運営するうえで、順守しなければならない法律がある。まずは公衆浴場法だ。営業には都道府県知事の許可が必要で、伝染性の疾病に感染していると認められる顧客が入浴しようとした場合に、店主はこれを拒否しなければならない、などの規定がある。公衆浴場は地域住民の公衆衛生を保つ役割を担っており、「一般公衆浴場」(いわゆる銭湯)と、保養・休養や企業の福利厚生などを目的とする「その他の公衆浴場」に分かれる。スーパー銭湯は基本的に後者に該当する。消防法の順守も求められ、サウナを取り付ける際には、構造や設備の設置方法など細かなルールが定められている。 近年のサウナブームに足並みをそろえる形で、規制を緩和する動きが相次いだ。2022年の消防法改正によりサウナの設計の自由度が高まった。温浴施設そのものに関しても、敷地の外から内部がみられない構造とするといった従来の規定を、着衣型の施設において緩和する動きが、自治体レベルで行われるようになった。これらを背景に、テント式サウナやバレルサウナなど、野外サウナの設置も全国各地で広がっている。 最新のデータが23年度となるが、厚生労働省が取りまとめる「衛生行政報告例」によると、公衆浴場のうち一般公衆浴場は減少に歯止めがかからず、23年度は前年度比5.1%減の2847施設と3000施設を割り込んだ。一方、スーパー銭湯が該当する「その他」の区分は21年度を底にして増加基調となり、23年度は同0.6%増の2万826施設となっている。 休日の首都圏のスーパー銭湯では、サウナの扉の前に列ができることは決して珍しい光景ではない。混雑を回避し、真の整いを求める「サウナー」の目に、アウトドア型のサウナ施設は魅力的に映る。こうしたサウナ愛好家を呼び込むことで、地域の経済の活性化につなげようとする取り組みも数多く存在する。例えば大分県豊後大野市は「サウナのまち」を21年に宣言。アウトドア・サウナやサウナ飯が楽しめる街として積極的にPRを行っている。石川県加賀市も「加賀市サウナ特区宣言」を24年に行い、サウナをツールとして新産業の育成や関係人口の増加を図っている。 ●サウナ関連企業への出資も活発化 サウナビジネスに関連する銘柄として目が離せないのは、やはり温浴施設を運営する企業となる。極楽湯ホールディングス <2340> [東証S]は温浴チェーンとしてトップとなる国内41店舗を展開。25年3月期は過去最高益を更新した。今期はエネルギーコストなど不確定な要素があるとして業績予想を未定としているが、アニメやVTuberとのコラボイベントが足もとで集客効果をもたらしているようだ。 テルマー湯ホールディングス <3521> [東証S]は10月1日にエコナックホールディングスから商号を変更。日本レースとして創業して来年で100年の節目を迎える。繊維事業から不動産業へと業態を変えた後、温浴施設「テルマー湯」が収益の柱となった。開業から3年目となる西麻布店の25年4~6月期の入館者数は前年同期比10.9%増と好調。温浴事業ではサウナ特化型施設をはじめ魅力的なサービス展開を続ける方針だ。 「タイムズパーキング」やカーシェア事業のパーク24 <4666> [東証P]の子会社が東京・池袋で運営するスパ施設「タイムズ スパ・レスタ」ではサウナイベントを精力的に実施。都市在住者が地方へ「サ活」をするための移動手段を提供する企業でもあり、新たなサービス展開に期待が膨らむ。 たこ焼チェーン「築地銀だこ」のホットランドホールディングス <3196> [東証P]は、群馬県において滞在型アウトドアレジャー施設「駅の天然温泉&サウナの森 水沼ヴィレッジ」を運営。東京・北千住から鉄道だけでアクセスが可能。同施設での成功事例の創出と、地域活性化に寄与するリゾート事業の育成につなげる構えだ。コシダカホールディングス <2157> [東証P]は群馬県と福島県にある温浴施設「まねきの湯」を営業している。 レンタルスペースのマッチングプラットフォーム「インスタベース」を主力とするRebase <5138> [東証G]は昨年5月、Libertyshipに出資し持ち分法適用関連会社化した。Libertyshipはバレルサウナの販売などを手掛けている。日本の空き家対策への貢献に意欲的なリベースが、サウナという軸でビジネス機会をどのように拡大していくか注目される。 和心 <9271> [東証G]は今年9月、連結子会社でサウナ施設を運営するマイグレを完全子会社化した。空き家をリノベーションし高付加価値型宿泊施設とするビジネスで、サウナ付き貸別荘という独自のコンセプトをもとに差別化を図る。25年12月期は2ケタの増収で連続最高益更新を計画。8月に発表した業績予想の上方修正を経て、株価は900円台に居所を変えた。 ●フィットネスや美容関連も照準 フィットネスクラブでもサウナを併設する動きが広がっている。ルネサンス <2378> [東証P]のドライサウナ併設型スポーツクラブは駅近施設が多く、スーパー銭湯とはライバル関係にあると言える。昨年にスポーツオアシス(旧東急スポーツオアシス)の全株式を取得。フィットネス業界で売上高は最大規模だ。 フィットイージー <212A> [東証P]はアミューズメント型フィットネスクラブを展開。愛知・岐阜・三重の東海3県を地盤に全国へ店舗網を拡大する。インドアゴルフやボルダリング、フットサルといった多様なスポーツを楽しめる店舗とともに、サウナ併設型店舗も用意。11月にオープンする東京・自由が丘店では個室サウナを構え、都内在住者の支持を集められるか注目される。9月に発表した公募増資で約16億7200万円を調達し、事業拡大への資金とする方針。東証プライム市場への区分変更を果たし、時価総額はルネサンスを上回っている。 美容サロン向け商品のECサイトを運営するビューティガレージ <3180> [東証P]は今年4月、温浴施設やスパ、サウナ施設向けの機器販売や経営支援を行うサウナガレージの第三者割当増資を引き受け、連結子会社化すると発表した。サウナガレージには、日本サウナ学会代表理事で「サウナドクター」こと加藤容崇氏が取締役として参画。Bガレージは業績面では一時的な販管費の増加要因により25年5~7月期は経常減益で着地した。株価に下押し圧力が掛かった結果、全体相場に対して出遅れ感が顕著となっている。新領域への参入による中期的な業績貢献を期待したい。 サウナ関連の商品販売に動く企業も数多く存在する。カシオ計算機 <6952> [東証P]のサウナで使える腕時計「サ時計」は、昨年12月のクラウドファンディング実施時に、開始からわずか9分で約2200台が完売。愛好家からの評価も高く、10月17日に一般販売に踏み切ることとなった。ジンズホールディングス <3046> [東証P]や愛眼 <9854> [東証S]はサウナでも使える眼鏡を販売。岩谷産業 <8088> [東証P]はカセットボンベを利用したテントサウナの開発を進めていると報じられている。 このほか、不動産情報サービスのニフティライフスタイル <4262> [東証G]は、温浴施設の情報やクーポンを探せるウェブサイト「ニフティ温泉」を運営。クラウド型POSやリノベーションなどを手掛けるgooddaysホールディングス <4437> [東証G]は、サウナやワークラウンジを設置したシェアレジデンス「goodroom residence」を相次いで開業。旧社員寮など遊休不動産の再生に取り組んでいる。 株探ニュース