夢洲劇場・第2ステージ開幕、万博の次は「大阪IR」関連に刮目の時 <株探トップ特集>

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コラム

―ビッグビジネス接近、カジノ関連など成長スロット再開で上昇スタートへ―

 4月13日にスタートし半年に及んだ大阪・関西万博が終了した。「夢洲(ゆめしま)」を舞台とする1970年以来55年ぶりとなる大阪・関西地域での万博だったが、当初の不安をよそに終わってみれば大盛況。万博というビッグイベント通過で夢洲の第1ステージは幕を閉じたが、次は2030年秋の開業を目指す「大阪IR( カジノを含む統合型リゾート施設)」にスポットライトが当たることになる。第2ステージ開幕へ向けて投資家の熱い視線が集まるなか、ドリームアイランド・夢洲関連株のいまを改めて点検した。

●30年開業へ向け順風満帆、新たな動きも

 フランス・パリで開催された18年のBIE(博覧会国際事務局)総会で、25年万博の開催地が大阪・関西に決定。これにより、会場予定地だった大阪湾の人工島・夢洲の知名度が急速に高まることになった。更に、大阪府・市がIRの候補地として立候補したことで、舞台となる夢洲の知名度は更にアップすることになった。21年には、大阪府・市が米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックス <8591> [東証P]連合を整備事業者として正式に選定したことで、大阪IRは始動する。

 昨年9月には、カジノ施設などの整備・運営を行う大阪IR(現MGM大阪・大阪市北区)が、違約金なしで撤退できる解除権を放棄したことで、一時不透明感が漂っていたカジノを含むIR事業は、30年開業を目指し大きく前進することになった。この統合型リゾート事業は、前述のMGMとオリックスが出資し、当初から投資規模1兆円超の巨大事業として注目を集めていたが、今年9月には大阪府・市が初期投資額が約1兆2700億円から約1兆5130億円へ増額されると発表。物価高による建設資材などの高騰が、投資規模を更に拡大させた格好だ。

 ここにきては、IRを巡る新しい動きも出ている。今月に入り、政府はIRの整備地域の追加選定(最大2カ所)に向け、選定希望の自治体があれば申請を再び受け付けると伝わった。かつて認定されなかったことのある長崎に加え、北海道などの対応にも注目が集まっている。また、高市早苗氏が自民党総裁に選出されたが、混とんとする政治状況のなか、今後連立の行方次第では日本維新の会との連携も考えられる。その場合、同党が掲げる「大阪副首都構想」関連株の一角として、夢洲を舞台にするカジノなどのIR関連株にスポットライトが当たる可能性もありそうだ。

●中核オリックスに注目集まる

 夢洲を巡る関連株については、これまで幾度となく取り上げてきたが、大阪IR関連の中核はMGMとの共同投資で事業会社のMGM大阪を設立したオリックスにほかならない。大阪は同社の発祥の地でもあり、同地域での不動産ネットワーク、そして地域に根付くさまざまな企業との連携がIR事業を実現へと結びつけたといえそうだ。同社の26年3月期連結業績は純利益段階で前期比8.1%増の3800億円を計画。第1四半期(4~6月)の同利益は前年同期比23.7%増の1072億8800万円と順調な滑り出しとなっている。株価は高値圏で推移も上昇一服だが、9月24日につけた年初来高値4011円奪回から4000円台での活躍期待が高まっている。

 大阪IRについてはカジノに視線が向きがちだが、IRとは統合型リゾート(Integrated Resort)の略称で、国際会議場や宿泊施設だけでなくエンターテインメント施設なども設置され、国内外から年間来訪者2000万人、年間売上高5200億円(ノンゲーミング:約1000億円、ゲーミング:約4200億円)を見込むビッグビジネスの発信基地となる。経済波及効果は開業後年間で約1兆1400億円を見込んでおり、幅広い銘柄に恩恵が波及しそうだ。

●土地持ち企業に再び思惑、ニシオHDは咲洲関連

 こうしたなか、株式市場では夢洲の“土地持ち”企業に注目が集まる傾向がある。思惑含みの感は拭えないものの、なんらかのキッカケによって急動意する銘柄も少なくない。夢洲関連の常連銘柄としては、実際に物流用地を取得しコンテナターミナルなどを展開する山九 <9065> [東証P]と上組 <9364> [東証P]にまず注目。加えて夢洲がある此花区に本社を構える櫻島埠頭 <9353> [東証S]、此花区の隣の港区が本社の杉村倉庫 <9307> [東証S]などに時折物色の矛先が向かう。そのほか夢洲に絡んでは、冷蔵倉庫大手のヨコレイ <2874> [東証P]や阪神港地盤で港湾運送業大手の大運 <9363> [東証S]などにも投資家の視線は熱い。

 上組の株価は上場来高値圏で推移。8月12日に26年3月期第1四半期(4~6月)の連結決算を発表しており、営業利益は前年同期比12.0%増の96億2100万円で着地し、上期計画の163億円に対する進捗率は60%近くとなった。一方、山九は7月30日に8940円まで買われ上場来高値を更新したあとは軟化しているものの、8000円近辺では頑強展開。

 また、桜島埠は、7月25日に発表した26年3月期第1四半期(4~6月)連結決算で、営業利益が前年同期比3.7倍の9200万円と大幅増益となり、上期計画(9000万円)を超過した。株価は9月25日に年初来高値を更新した後は調整を入れているものの、夢洲関連として感応度が高い銘柄だけに目を配っておきたい。

 また、ニシオホールディングス <9699> [東証P]傘下の西尾レントオールは、関西地盤の総合レンタルの草分けで、万博に続き大阪IRでの活躍期待が募る。23年には、大阪・関西万博の会場に近い咲洲(さきしま・住之江区)で、敷地面積3万3000平方メートルに及ぶレンタルビジネス構築のための研究開発施設「R&D国際交流センター」をスタートさせた。同施設では、「MICE関連事業」にも取り組んでおりこれも思惑が働きそう。西尾レントは、19年に伊藤忠商事 <8001> [東証P]から同用地を取得している点も見逃せない。

●やっぱり目が離せないカジノ関連

 大阪IR事業では、やはりカジノ関連から目が離せない。グローリー <6457> [東証P]は貨幣処理機大手で金融機関をメイン市場とするが、遊技市場に加え海外ではカジノ業界にもビジネス展開しており注目度が高い。業績は、新紙幣対応に伴う製品の更新や改造作業が増加した前年同期の反動が出ている。26年3月期の連結営業利益は前期比41.6%減の215億円を予想する。株価は、8月7日に4025円まで買われ年初来高値を更新した後は上昇一服も、3500円水準では底堅く推移している。同社は、夢洲とも近距離といえる兵庫県姫路市に本社を置き、地の利を生かした戦略に期待も。

 また、貨幣処理、硬貨計数機大手で紙幣鑑別機を手がける日本金銭機械 <6418> [東証P]は、ゲーミング市場を主力としておりカジノ関連のなかでも特に投資家の関心が高い銘柄だ。業績については、26年3月期の連結営業利益段階で前期比71.5%減の14億円を計画。ゲーミング市場では、米国におけるいわゆるトランプ関税による影響を見越した駆け込み需要があったものの、国内コマーシャル及び遊技場向け機器市場では、やはり新紙幣発行に伴う更新需要が一巡したことなどが重荷になりそうだ。株価は底値圏で方向感のない展開が続く。1000円近辺では売り圧力が働き幾度となく跳ね返される状況だ。とはいえ、ゲーミング市場を主戦場とするうえに、夢洲の地元である大阪に本社を構えている点は大きなポイントとなる。中長期視点で、底値買い妙味もありそうだ。

 カジノを巡る銘柄では、韓国初の本格的IR施設「パラダイスシティ」の開発・運営に参画した実績を持つセガサミーホールディングス <6460> [東証P]にも注目。加えて、カジノ施設向け電子決済ソリューションやコンサルティングを提供するテックファームホールディングス <3625> [東証G]などにも活躍の舞台が広がる可能性がある。

●恩恵受ける京阪HDなど

 大阪IR事業はホテルも展開予定だが、多くの観光客を誘致することで周辺の宿泊施設にも好影響を与えそうだ。京阪ホールディングス <9045> [東証P]は、関西2府1県での鉄道事業を中核にして、数多くのホテルをはじめとするレジャー・サービス業も展開。関西地域での更なる集客力アップが、同社の業績にも寄与しそうだ。また、グループのホテル京阪は、夢洲に近いJRゆめ咲線のユニバーサルシティ駅前で、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のオフィシャルホテル「ホテル京阪 ユニバーサル・タワー」も運営している。同ホテルは、USJまで徒歩で数分のところに位置しているのも大きな魅力だ。26年3月期の連結営業利益は、前期比6.0%増の446億円と3期連続の最高益更新を目指す。

 そのほかでは、万博効果で今期上方修正した南海電気鉄道 <9044> [東証P]、大手ゼネコンで大阪発祥の大林組 <1802> [東証P]、警備保障会社で関西を地盤とする東洋テック <9686> [東証S]などの動向からも目が離せない。

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