桂畑誠治氏【政局混迷と米中対立激化、目先波乱の日本株を読む】 <相場観特集>
投稿:
―高市政権は嵐の船出だが、米株主導の相場展開に変化なし― 14日の東京株式市場は主力株をはじめ広い範囲の銘柄に売り圧力が意識され、日経平均株価は前週末に続き下値を探る展開となった。朝方に4万7000円台前半に突っ込んだ後下げ渋る動きを見せたが、後場に入って売り直されるなど不安定な値動きに終始した。国内政局が波乱含みとなっているほか、米中対立の問題が再び浮上しており、安易に買いを入れにくくなっている。9月以降に日経平均は一貫して上値を追い、10月に入って上げ足を加速させてきたが、当面は軟調な展開を余儀なくされるのかどうか。投資家はどう対処すべきか、ここからの相場展望について第一生命経済研究所の桂畑氏に意見を聞いた。 ●「4万5000円を下限に押し目買い方針で」 桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト) 公明党の連立離脱を受けた政局不透明感や、再び米中間の摩擦が嫌気されるなか、東京市場は足もと向かい風の強い地合いを余儀なくされている。26年間続いた自公連立が破局を迎えたことはネガティブな材料であることに相違ない。しかしこれは全体相場へのインパクトは小さくないものの、相場のトレンド崩壊に直結するものではないと考えている。もっともそれだけではなく、足もとで米中間の関係が再び悪化していることを考慮すると、現状はリスクオフに身構えざるを得ない状況ともいえるのだが、それでも早晩過度な懸念は修正される方向が読める。 首相指名選挙は今月下旬にずれ込む見通しとなっているが、国民民主党と立憲民主党の政策理念・方向性の違いはあまりに明白で、首相指名選挙で野党候補の一本化は困難とみられている。政権奪取のために、基本政策の異なる政党が連立を組んだ場合、仮にそれが実現しても有権者からの支持を得ることはできない恐れがある。このため少数与党の状況で、高市早苗自民党総裁が新首相の座につく可能性が高いとみられる。万が一高市氏が首相に就任できなかった場合でも、財政拡張路線は目先的に政策として打ち出される公算が大きく、マーケットはいったんショック安に見舞われたとしても、下落トレンドに転換するということはなさそうだ。 米中摩擦が再燃していることが警戒される米国株市場の方は注意を要するが、これも今月のFOMCでの利下げがほぼ確実視されるほか、12月の会合も含めた連続利下げのシナリオ、あるいは予想外の米経済の堅調さを背景として、NYダウなど主要株価指数は底堅さを発揮しそうだ。東京市場は米国株市場がしっかりした動きをみせている限り、下値に対する抵抗力が示される公算が大きい。 当面の日経平均のレンジは、マドを開けて買われた10月6日の下限である4万6600円が最初のポイントだったが、一時的に下回ったため、下値メドとしては10月3日の安値水準である4万5000円大台近辺とみておきたい。他方、上値については高市氏が首相に就任できた場合、10月9日の上場来高値4万8580円を上回り、4万9000円台を目指す動きが想定される。 物色対象としては時価総額上位の AI・半導体関連株の押し目買いが有効と思われる。また、訪日外国人観光客の増勢が続くなか、小売りや外食などのインバウンド関連株にも引き続き目を配っておきたい。 (聞き手・中村潤一) <プロフィール>(かつらはた・せいじ) 第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。 株探ニュース