目先波乱は仕込みの好機、グロース市場銘柄で迎え撃つ究極の8連弾 <株探トップ特集>

投稿:

コラム

―グロース市場も東証の「鶴の一声」で覚醒へ、年末にかけ変身期待の銘柄群が目白押し―

 週末10日の東京株式市場は日経平均株価が491円安の4万8088円と反落した。公明党の連立離脱に伴う政局不安などが取り沙汰されているが、10月に入って日経平均は急速に水準を切り上げ、スピード警戒感も常に意識されていたことから、ここでの深押しはチャンスともなる。高市トレードでやや期待先行で買われ過ぎた反動も拭えないが、それは大勢トレンドの下降転換を意味するものではない。あくまで上昇トレンドの中での買い場を探る場面と前向きに捉えたい。

●見落とされていたグロース市場銘柄に光

 プライム市場の主力銘柄に投資資金が集まるなか、中小型株にはここまでむしろ向かい風の強い相場環境が意識され、特にグロース株という範疇では代表的な「東証グロース市場指数」と「東証グロース市場250指数」がいずれも8月下旬を境に下値を探る展開を強めた。9月下旬から10月上旬にかけて下げが加速する形となり、粘っていた投資家の見切り売りがかさんだことを物語っている。しかし、これによってシコリ玉が解消し、早晩売り一巡感から仕切り直しの動きが期待できそうだ。個人投資家の土俵でもある東証グロース市場の有望株は今が仕込みの季節となる。

 今年の8月下旬以降はグロース市場にとって厳しい地合いとなったが、これは主力株に海外マネーなどの大口資金が一極集中的に向かったことが背景にある。時価総額上位銘柄でなければ株にあらずといった趣きで、いうなればゲリラ豪雨に見舞われ水浸しとなったような状態であった。だが、グロース市場はプライム市場に常に劣後するかといえば決してそういうことはない。何事も順番なのである。

●投資マネーのローテーションが始まる

 グロース250指数は日経平均やTOPIX同様、今年4月7日に年初来安値534.55をつけた後急速な上昇波動を描き、8月19日には800.62と800台に乗せる形で年初来高値を更新した。この時、日経平均も4万3546円29銭の最高値を更新しているが、年初来安値からの上昇率を比べると日経平均の39.8%に対し、グロース250指数は49.8%と10ポイントも日経平均を上回っていた。ところが、ここからのトレンドは大きく明暗を分けた。周知の通りこの後に日経平均はいったん下押したものの9月以降は怒涛の上げ潮相場に突入、更に今週に入って一気に上げ足を加速し、10月9日に4万8580円の史上最高値を形成した。他方、グロース250指数は下値模索を続け、9月末を境に急速に下放れる状況となった。2日時点で715.09まで下落するなど日経平均とベクトルの向きは真逆となっている。

 しかし、投資マネーの流れは基本的にローテーションであることは過去の事例が証明している。足もとでグロース市場が低迷しているが、プライム市場に買い疲れ感が出てくると、今度はグロース市場に資金シフトされる順番となるのは既定路線といってもよい。同じような景色は昨年も見られた。昨年は8月に令和のブラックマンデーと言われた大暴落に見舞われたが、それ以前の春先から年央にかけてグロース250指数は既に大きく水準を切り下げていた。同じ時間軸で日経平均の方は上昇トレンドが鮮明だった。この時は、グロース市場でのIPOが当該企業の企業価値(=株価)の頂点という「上場ゴール」問題などが取り沙汰され、「オワコン」と揶揄されるような状況にあった。だが実際はそうではなかった。その後、8月の暴落を経てからの戻り局面で日経平均を凌駕したのである。悲観論が蔓延した時は買い場というのが、株式市場の歴史に刻まれた鉄板セオリーといってよい。

●上場基準見直しを起爆剤に動きだす銘柄群

 今年秋口から年末にかけて、グロース市場は大リベンジ相場に突入する可能性がある。その起爆剤となるのが、東証による改革(=グロース市場上場基準の見直し)である。同改革では、新たな上場維持基準を現在の「上場から10年経過後に時価総額40億円以上」というものから「上場5年後に時価総額100億円以上」とハードルを引き上げる。この新基準は2030年3月1日以降に適用するが、当然ながら既にそこを目指した「働きかけ」は始動しており、これはIPO銘柄の上場時に想定される時価総額の設定などに反映されている。また、上場5年で時価総額100億円のハードルを越えるために、企業側は明確な成長戦略とIRを充実させるなど、投資家に向けた継続的なアピールも求められることになる。

 今回のトップ特集ではグロース市場に上場する企業を対象に、足もとの業績好調が見込まれ、なおかつビジネスモデルに成長性が認められる8銘柄をエントリーした。このうち時価総額100億円未満は4銘柄で、これらは当面この100億円ラインのクリアに向けた企業価値向上に取り組むことになる。一方、残りの時価総額100億円以上の銘柄については、グロース市場で安全地帯に位置する好実態株ということになるが、もちろん100億円はゴールではなく、単なるメルクマールに過ぎない。明確な成長戦略を持って更に上のステージを目指す経営努力こそが、東証が目指す市場活性化のテーマに沿う企業側に求められた課題であることはいうまでもなく、強固なビジネス基盤を武器に一段の飛躍が期待できる銘柄をピックアップした。

●ここから本領発揮のグロース市場8銘柄

◎勤次郎 <4013> [東証G]

 勤次郎は法人向けに就業・人事・給与管理などの勤怠管理パッケージを提供するサービスを展開している。事業形態としてはクラウドサービスと、顧客側が情報システムをインストールして使うオンプレミスの2つのパターンがあるが、クラウド型はサブスク方式で採算性が高いのが特長。顧客企業側にすれば初期コストや社内の人的コストがかからないことでクラウドを選択するケースが高まっており、つれて同社の利益率向上につながっている。25年12月期営業利益は前期比78%増の13億円予想と絶好調だ。

 株価は9月24日に年初来高値1530円を形成後、利食い圧力に押されたが1300円近辺で売り一巡感。抜群の好業績を考慮すると新値街道への再突入は時間の問題か。

◎Aiロボティクス <247A> [東証G]

 Aiロボは自社開発のAIシステムを活用し、「Yunth (ユンス)」ブランドで展開するスキンケア商品や美容家電の企画・開発及び販売(EC)を行っている。主力の美白美容液が好調なほか、昨年2月に新規参入した美容家電も「Brighte(ブライト)」のブランド名で展開し、ドライヤーなどが牽引役となっている。26年3月期は売上高が前期比ほぼ倍増近い伸びを見込むなか、営業利益も同94%増の48億円を予想している。

 株価は9月末の株主を対象に株式5分割を実施、分割後はいったん利益確定の動きが表面化したものの、10月2日の安値1502円をターニングポイントにリバウンドに転じている。上場来高値奪回から中勢2000円台活躍を目指す展開が期待できる。

◎FRONTEO <2158> [東証G]

 フロンテオは自然言語解析AIなどを活用したリーガルテック(法律向け)事業のほか、独自のAI技術を横軸展開し、ライフサイエンス分野に力を入れている。M&A戦略も駆使して業容拡大に磨きをかけており、26年3月期はトップラインが2ケタ伸長を確保し、営業利益は増収効果を反映する形で前期比33%増の7億円を見込む。更に27年3月期も20%前後の利益成長が視野に入る。IRに熱心なところもポイントで、会社側が頻繁にビジネスに関するニュースリリースを開示していることから株価刺激材料に事欠かない。

 株価は8月下旬を境に下値を切り上げたが、ここにきて調整モード。だが、急騰習性がありフシ目の900円台前半は買い場と判断される。年初来高値1233円の払拭が目標。

◎ソフトマックス <3671> [東証G]

 ソフトMAXはWeb型電子カルテを主力に医療情報システムの開発・販売を行っている。サイバー対策強化の国策的な追い風も背景に、医療機関DX分野での同社の活躍余地が広がっている。ソフトバンク <9434> [東証P]及び医療システム開発などを手掛けるHEMILLIONS(東京都港区)と医療分野での生成AI技術の社会実装に向け共同研究を開始しており、今後の展開が注目されている。25年12月期営業利益は前期比強含み横ばいの6億7000万円を会社側では予想するが、上振れする可能性が高いとみられる。

 株価は7月初旬に連日ストップ高を交え400円台半ばまで急浮上。その後は調整を強いられたが、ここ再び上値を慕う動きにある。300円台後半は仕込み好機といえそうだ。

◎rakumo <4060> [東証G]

 rakumoは企業向けにクラウド型のグループウェア拡張製品「rakumo」の提供を行い、生産性向上や業務効率化に貢献している。顧客企業の増加に加え値上げ効果も寄与して業績は好調に推移している。2020年9月に上場した後、業績はトップライン・利益ともに高成長を継続中。24年12月期の営業26%増益に続き、25年12月期も前期比4.4%増の4億円を見込むが保守的であり、増額修正の公算が大きい。

 株価は9月下旬に戻り高値1380円を形成後は利食い局面に移行したが、直近1100円台で目先の底値を確認、再浮上の機をうかがう。9月2日の年初来高値1399円奪回を通過点に、早晩1400円台での活躍が視野に入る。

◎ヤプリ <4168> [東証G]

 ヤプリはスマートフォンアプリの開発・運用・分析がノーコード(プログラミングなし)で可能なクラウドサービスを提供しており、月額サブスクリプションで法人需要を取り込んでいる。トップラインの2ケタ成長が続くなか、近年は利益面でも飛躍期に入っており、25年12月期営業利益は前期比36%増の7億5000万円を見込む。1~6月期の同利益は前年同期比67%増の4億4900万円で、通期予想は上振れる可能性がある。

 株価は7月下旬から動意づき8月に人気が加速、同月18日には1282円の年初来高値をつけた。その後は水準を漸次切り下げたが75日移動平均線へのサヤ寄せでリバウンドの機が近い。貸株市場を通じた空売りの買い戻しをバネに新高値圏への再突入を目指す。

◎STG <5858> [東証G]

 STGは自動車部品や、カメラなどの精密機器向け部品の製造を手掛けており、軽量なマグネシウム合金の鋳造を強みとし、金型から一貫製造を行っていることが特長。海外売上高比率が8割を超えるグローバル企業でもある。また、日本を含めた世界4カ国に生産拠点を有し小ロット、大ロットいずれのニーズにも随時対応できる。業績は25年3月期の営業63%増益に続き、26年3月期も前期比18%増の5億7000万円予想と好調だ。

 株価は8月中旬にマドを開けて上放れた後、1700~1900円のゾーンでもみ合っていたが9月中旬を境に大勢二段上げの様相となった。10月2日に上場来高値2491円を形成後ひと押し入れているが、PERなど割安で早晩仕切り直しへ。

◎WOLVES HAND <194A> [東証G]

 ウルフハンドは動物病院を関東や関西を中心に展開するが、かかりつけ対応のサテライト病院のほか、より専門的な診療が必要な場合に対応した2次診療も行う。主要病院にはCTやMRIを完備し、AIを活用した治療支援の開発を推進するなど高度医療への取り組みでニーズを捉え、収益成長につなげていく。このほか、関連事業としてペットサロンや医療用機器の製造・販売も展開する。業績は売上高と営業利益いずれも過去最高更新基調を続けており、26年6月期の営業利益は前期比10%増の9億9500万円を見込む。

 株価は9月19日に4ケタ大台を回復後、調整を交えながらも下値を切り上げる動き。PERに割高感はなく、昨年6月の上場直後につけた最高値1641円を中勢目指す展開に。

株探ニュース

オンラインで簡単。
まずは無料で口座開設

松井証券ならオンラインで申し込みが完結します。
署名・捺印・書類の郵送は不要です。