「スマートシティ」が描く未来図、都市機能高度化を担う関連有望株 <株探トップ特集>
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―持続可能な社会を実現する都市政策、ウーブン・シティ始動で注目度アップ― 人口減少・高齢化社会の到来や自然災害の激甚化など、さまざまな社会課題が深刻化するなか、持続可能な地域社会の実現につながるとして期待されているのが「スマートシティ」だ。政府が掲げる「Society5.0」「デジタル田園都市国家構想」「地方創生2.0」といった概念のもと、国土交通省はスマートシティの社会実装に向けた取り組みを推進しており、都市の高度化を支える通信、エネルギー、交通、人工知能(AI)、住宅設備など多様な分野が恩恵を受ける可能性がある。トヨタ自動車 <7203> [東証P]の実証都市「ウーブン・シティ」(静岡県裾野市)が9月25日に始動したこともあり、関連銘柄に目を向けてみたい。 ●先端技術で社会課題を解決 スマートシティとは、内閣府の定義によると「グローバルな諸課題や都市・地域の抱えるローカルな諸課題の解決、また新たな価値の創出を目指して、情報通信技術(ICT)などの新技術や官民各種のデータを有効に活用した各種分野におけるマネジメント(計画、整備、管理・運営など)が行われ、社会、経済、環境の側面から、現在及び将来にわたって、人々(住民、企業、訪問者)により良いサービスや生活の質を提供する都市または地域」のこと。データ利活用の円滑化、分野間連携サービスの拡大、都市経営の深度化、持続可能性の向上、国内外への横展開などがイメージされている。 国交省では全国の牽引役となる先駆的なスマートシティプロジェクトに対し、都市・地域における将来像、将来像の実現に向けた課題や取り組み、社会実装に向けたロードマップ、社会実装後の持続可能な体制などを示した「スマートシティ実行計画」の策定及び実装に向けた実証事業について、資金、ノウハウの両面から支援を行っている。新たな産業の創出と育成、エネルギーの効率的な利用と供給、AIやカメラ技術を使った防犯体制と治安の維持、ドローンやネットによる遠隔での高齢者ケア、交通渋滞の解消、災害対策などが見込め、多くの社会問題や課題の解決につながりそうだ。 ●社会実装に向けた動き続々 ゼンリン <9474> [東証P]は9月30日、AIを活用した3次元空間認識技術「空間知能」を開発・提供しているマップフォー(名古屋市中区)と業務提携したと発表。両社の強みを最大限に生かした研究開発・用途開発を加速させ、インフラの老朽化対策、人口減少社会における次世代モビリティの推進やスマートシティの実現など、日本社会が直面する喫緊の課題への対応を強力に推進するという。 ELEMENTS <5246> [東証G]は9月26日、AIインフラの地域分散と災害に強いデジタル基盤の整備を目的に総務省が推進する「デジタルインフラ整備基金助成事業」にグループ会社が実施事業者として採択されたと発表。この取り組みでは、香川県高松市においてGPUを中核としたAI計算基盤施設を整備し、AIインフラの都市集中がもたらす地域格差や災害リスクといった課題を解決することを目的としている。 ダイナミックマッププラットフォーム <336A> [東証G]は9月16日、国交省の「2025年度 Smart JAMP(スマートシティ実現に向けた調査検討業務)」事業に、オリエンタルコンサルタンツホールディングス <2498> [東証S]傘下のオリエンタルコンサルタンツグローバルと共同で提案し、採択されたと発表。この事業では、ベトナムの空港を対象にダイナマップの「高精度3次元地図データ」及び「空港内情報集約基盤」など複数の技術を連携させることによる空港運営の課題解決と、スマート化の実現可能性を調査するとしている。 Will Smart <175A> [東証G]は9月16日、成長戦略と社会ビジョンをまとめた「中期ビジョン2030」を公表した。今後5年間を通じて、地域の「生活の足」「観光の足」「物流の足」を支える移動インフラのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進と新たなサービス創出により、地方創生と持続可能なまちづくりにつなげる構えだ。 unerry <5034> [東証G]は9月2日、東京都が実施する「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業」で、今年度の開発プロモーターに採択されたことを明らかにした。この事業で同社は、街の課題・ニーズ分析から情報発信、人流をはじめとするリアルタイムデータを活用した体験創出、更に効果検証による社会実装までを一貫して支援できる独自の事業検証基盤を構築・提供。支援対象となるスタートアップの想定分野は、「メディア」「モビリティ」「飲食」「防災」「環境」など、都民生活に直結する多様な領域を見込んでいるという。 このほか、宇宙技術のスマートシティ活用に向けてインターステラテクノロジズ(北海道大樹町)と資本・業務提携した野村不動産ホールディングス <3231> [東証P]、共創型まちづくりの基盤「Community MaaS(コミュニティーマース)」を展開するユニリタ <3800> [東証S]、次世代都市づくりに向けたソリューションを提供するグリッド <5582> [東証G]、スマートシティをはじめ幅広い分野で活用されるセンサーを手掛ける中国企業と代理店契約を締結している伯東 <7433> [東証P]なども関連銘柄として挙げられる。 ●ウーブン・シティ関連も注目 新たな製品やサービスを生み出すための実験場である「ウーブン・シティ」の今後の動向にも注目しておきたい。今回オープンした「フェーズ1」ではジェイテクト <6473> [東証P]やアイシン <7259> [東証P]などトヨタグループ12社と、グループ外の7社が参画。「インベンター」と呼ばれる参画企業が開発した製品やサービスを住民である「ウィーバーズ」が実際に使用し、使い勝手や感想を伝えることで改善点を明確化するという。 具体的な実証テーマは、トヨタが「さまざまなモビリティサービスに活用できるe-Palette(イーパレット、バッテリーEV)のプラットフォーム機能」「自由に安心して楽しめる電動小型三輪モビリティによるシェアサービス」「自律走行ロボットによるシェアカーの自動搬送サービス」など。 また、ダイドーグループホールディングス <2590> [東証P]が「自動販売機を通じた新たな価値創造」、日清食品ホールディングス <2897> [東証P]が「新たな食文化の創造に向けた食環境の構築とその環境が及ぼす影響」、ダイキン工業 <6367> [東証P]が「花粉レス空間やパーソナライズされた機能的空間に関するもの」を行う予定だ。 株探ニュース