秋のIPO本格発進、グロース市場改革で「小粒上場」減少し人気格差も <株探トップ特集>

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コラム

―10月は10社が登場、半導体関連「テクセンド」など中心に関心高まる―

  10月IPOが本格発進した。今月は10社が新規上場を果たす。自民党総裁選で高市早苗氏が新総裁に選出され、日経平均株価が一時4万8500円台まで急上昇するなど全体相場は活気づいており、中小型株市場への人気波及も期待されている。そんななか、東証は「グロース市場改革」を進めており、IPO市場では「小粒上場」が減少する傾向が見え始めてきた。果たして、中小型株市場は改革進展とともに、新たな投資家の資金を招き入れることはできるのか。秋のIPOシーズンの動向を探った。

●9月IPOの「オリオンビール」は人気化

 直近のIPO市場では9月は4社が上場を果たした。このうち1社はプライム市場にダイレクトリスティング(直接上場)したソニーフィナンシャルグループ <8729> [東証P]だったが、4社ともに初値は公開価格(ソニーFGは流通参考値段)を上回った。特に、25日にプライム市場に上場したオリオンビール <409A> [東証P]は初値が公開価格の2.2倍となるなど人気を集めた。8月の新規上場はREITを含め2社にとどまっただけに、久々のIPOに買い人気も膨らんだようだ。

 そして、10月は10社が新規上場する。昨年に比べ1社の減少となる。具体的な内訳はプライム市場に1社、スタンダード市場に2社、グロース市場に6社、名証ネクスト市場に1社というものだ。すでに3日にオーバーラップホールディングス <414A> [東証G]、6日にムービン・ストラテジック・キャリア <421A> [東証G]、きょうはウリドキ <418A> [名証N]の3社が新規上場を果たした。ライトノベルやアニメにおける作品の企画・編集・プロデュースを手掛けるオーバーラップの初値は公開価格を約7%割り込んだが、有料職業紹介事業を行うムービンの初値は公開価格を20%上回った。リユース品の買い取りマッチングサイトを運営するウリドキの初値は同価格に対して7%強上昇した。

●グロース上場維持基準「100億円」へ早期成長が求められる

 秋のIPOシーズンが本格スタートするなか、市場関係者の関心を集めているのが、東証グロース市場の改革が相場に与える影響だ。同改革では、新たな上場維持基準を現在の「上場から10年経過後に時価総額40億円以上」から「上場5年経過後に100億円以上」へ引き上げ、2030年3月1日以降に新基準を適用する計画だ。グロース上場企業は、機関投資家の投資対象となり得る規模(100億円以上)へ早期に成長することが求められる。

 東証は9月下旬から10月下旬まで同案のパブリックコメントを実施しているが、かねてから報道されていたこともあり、このグロース市場改革の影響は、すでに出始めているようだ。10月にグロース市場に上場する6社の想定公開価格などから弾いた上場時時価総額は、足もとでは全て100億円を超える見通しだ。今年3月のIPOではグロース市場に9社が上場したが、上場時の時価総額が100億円超だったのは2社だった。

 グロース市場の上場維持基準に時価総額「100億円」という新たな基準が設けられ、「小粒上場」は少なくなり、グロース市場を中心に今年の上場企業数も昨年に比べ減少傾向にある。IPOの性格は変わりつつあり、新規上場のハードルも高まるなか新たな資金は市場に入ってくるのか。成長性に対する評価で銘柄間の格差も広がりそうだ。

●プライム上場の「テクセンドフォトマスク」に関心

 10月IPOで注目を集めているのが、16日にプライム市場に上場するテクセンドフォトマスク <429A> [東証P]だ。同社は、21年に凸版印刷(現TOPPANホールディングス <7911> [東証P])から半導体向けフォトマスク事業を分離する形で設立された。外販フォトマスクではシェアトップの実績を誇る。仮条件ベースでの資金吸収額は約1370億円、上場時の時価総額は約2980億円の規模にある。足もとで半導体関連株に対する物色意欲は高まっており、近年プライム市場に新規上場した半導体関連企業は人気化している。ただ、同社の今期営業利益は減益見通しである点などが警戒されているようだ。

 8日にはサイプレス・ホールディングス <428A> [東証S]が登場する。同社は海鮮系和食店「築地食堂源ちゃん」などの飲食事業を展開。スタンダード市場に上場し、資金吸収額は28億円台、時価総額は90億円程度だ。15日にはライオン事務器 <423A> [東証S]が上場する。同社は文具・事務用品、オフィス家具、事務機器の製造販売などを手掛けている。スタンダード市場に上場し、資金吸収額は約10億円、時価総額は66億円台だ。

●ユーソナーやサイバーソリューションズ、インフキュリオンなど登場

 17日にはユーソナー <431A> [東証G]が登場する。同社はデータベースマーケティングによる企業の営業活動の支援を展開。法人データベース「LBC」などを核とした事業活動を行っている。資金吸収額は53億円台、時価総額は173億円程度だ。23日にはサイバーソリューションズ <436A> [東証G]が新規上場する。デジタルコミュニケーションやサイバーセキュリティ事業を展開。メールの無害化・情報漏洩対策などを手掛け、総合メール・セキュリティメーカーを目指している。仮条件から弾いた資金吸収額は40億円台、時価総額は210億円台の見通し。

 24日にはインフキュリオン <438A> [東証G]が登場する。同社は組み込み型の金融・決済基盤の開発・提供などを行っている。資金吸収額は100億円台、時価総額は310億円程度の見通し。28日にはBJC <440A> [東証G]が新規上場する。同社はファンデーションなどの化粧品や健康関連商品の企画・販売などを手掛けている。資金吸収額は170億円台、時価総額は350億円前後の見込みだ。

■10月IPO一覧
上場日  コード・上場市場 銘柄名           主幹事
10月3日 414A・東G オーバーラップホールディングス   みずほ、三菱UFJ
  6日 421A・東G ムービン・ストラテジック・キャリア 大和
  7日 418A・名N ウリドキ              Jトラストグローバル
  8日 428A・東S サイプレス・ホールディングス    大和
  15日 423A・東S ライオン事務器           みずほ
  16日 429A・東P テクセンドフォトマスク       SMBC日興、野村、三菱UFJ
  17日 431A・東G ユーソナー             野村
  23日 436A・東G サイバーソリューションズ      大和
  24日 438A・東G インフキュリオン          SBI
  28日 440A・東G BJC               SMBC日興、SBI
(注)東Pは東証プライム、東Sは東証スタンダード、東Gは東証グロース、名Nは名証ネクスト

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