超越の人気化ステージ前夜、「量子コンピューター関連」総ざらい <株探トップ特集>

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コラム

―国は「産業化元年」と位置づけ研究開発を強力後押し、自民党総裁選に絡み注目も―

 生成AIを筆頭に、将来の世の中を一変させ得る新技術には常に人々の興味・関心が向かう。その一つ、 量子コンピューターは“AIの次に来る技術”との呼び声も高く、折に触れ注目を浴びる。米半導体大手エヌビディアのジェンスン・ファンCEOはこの夏開催された欧州テックイベントで、同技術が転換点に近づいているとの見方を示した。「実用化は20年先」と発言した年初から変化がみられたとして話題を呼んだ。他の米テック大手はもちろん、各国の企業が同技術の実現へ食指を動かし、政府も巻き込んで世界中で研究開発が活発化している。日本も動きを加速させている。

●ソフトバンクも研究スタート

 富士通 <6702> [東証P]は8月、高性能な量子コンピューターを2030年度までに構築する計画を明らかにした。計算能力を示す指標である「物理量子ビット」で1万を超える性能を実現するという。スーパーコンピューター「富岳」を共同開発した理化学研究所をはじめ、さまざまな研究機関や企業との共同研究を通して取り組みを進めていく構えだ。直近29日、産業技術総合研究所と量子技術で連携すると発表した。

 量子コンピューターとは量子力学という物理学の理論を用いた次世代計算機のこと。スパコンで何年もかかる複雑な計算を瞬時に解くことができるとあって、世界各国で開発が行われている。米国ではアルファベット傘下のグーグルがスパコンで1万年かかる計算をわずか3分程度で解く「量子超越」を19年に達成。昨年末には量子向け新型チップ「ウィロー」を発表した。マイクロソフトも今年2月に量子チップ「マヨラナ1」を発表している。IBMは6月、大規模な量子コンピューターを29年までに構築する計画を打ち出した。中国では独自の量子コンピューター「本源悟空」が昨年から稼働を始めている。

 日本では23年に理研が量子コンピューターの国産初号機を公開した。最近では官民を挙げての動きが本格化しつつあり、政府は今年を「量子産業化元年」と位置づけ、民間の研究開発を後押しする方針を明確化。今夏に経済産業省が所管する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業を通じ、複数の企業の取り組みを支援することを決めた。このほか、ソフトバンク <9434> [東証P]は今年初めに量子コンピューター開発の米新興クオンティニュアムと共同研究をスタート。三井物産 <8031> [東証P]は今月、このクオンティニュアムに追加出資したことを発表した。

●NEDO公募事業の選定企業は

 株式市場では量子コンピューター関連のテーマには継続的に関心が向かっていたが、足もと特に投資家の視線が熱を帯びている。目下の自民党総裁選に絡み、有力候補者の一人である高市早苗前経済安保相が訴える政策に期待した「高市トレード」の動きが背景にあるとみられる。関連銘柄をみていこう。

 前述のNEDO公募事業は「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」における「量子コンピュータの産業化に向けた開発の加速および量子コンピュータの産業化にかかる人材育成事業」というもの。実施予定先として選定された企業にはシステム開発で富士通、部素材の開発でフジクラ <5803> [東証P]や浜松ホトニクス <6965> [東証P]、三菱電機 <6503> [東証P]、日本ガイシ <5333> [東証P]、IHI <7013> [東証P]、ミドルウェアの開発でKDDI <9433> [東証P]などが名を連ねる。

 このほか関連銘柄としてテラスカイ <3915> [東証P]に注目。同社はクラウドシステムの導入支援を手掛けるが、傘下に量子コンピューターの研究開発を担う子会社Quemix(キューミックス)を持つ。この子会社は先ほどのNEDO公募事業の実施予定先の1社に選ばれている。また、今年5月にはホンダ <7267> [東証P]と「量子状態を読み出す新技術」を共同開発し、量子コンピューターの実機を用いた計算に世界初成功したことを明らかにしている。

 フィックスターズ <3687> [東証P]はシステム高速化に強みを持つソフト開発会社。半導体メーカー向けをはじめ量子、AI、自動運転と幅広い分野に展開し、切り口は多彩だ。企業の旺盛な需要を取り込み、25年9月期は営業13%増益の26億円と連続最高益を予想。第3四半期までの進捗率は8割程度と順調に推移している。配当予想は前期比1円減の18円だが、これは前期に記念配当(5円)を実施したためで、業績に応じて利益配当を行う方針に変わりはない。

 オキサイド <6521> [東証G]も見逃せない。同社は単結晶や光部品、レーザー光源などの光学関連製品を手掛ける。半導体、ヘルスケア向けが主力だが、新たな分野への展開にも力を入れ、特に量子分野での収益創出を目指している。同分野の強化に向け、23年にイスラエルの光学結晶メーカー、ライコル・クリスタルズを買収している。26年2月期は増収トレンドの継続と、3期ぶり最終黒字転換を見込む。

 量子分野に絡み、低雑音信号処理技術を有するエヌエフホールディングス <6864> [東証S]、非磁性対応SMPS同軸コネクターを試作開発した日本航空電子工業 <6807> [東証P]に加え、研究開発に取り組むBIPROGY <8056> [東証P]やユビキタスAI <3858> [東証S]、グリッド <5582> [東証G]、多摩川ホールディングス <6838> [東証S]、BlueMeme <4069> [東証G]、傘下の輸入商社サンインスツルメントで関連製品を取り扱うYKT <2693> [東証S]などが要マークとなる。

 また、前述のNEDO公募事業においてKDDIと共同でミドルウェア開発に取り組むセック <3741> [東証P]をはじめ、量子化学計算プログラムを手掛けるHPCシステムズ <6597> [東証G]、量子シミュレーターを手掛けるインテリジェント ウェイブ <4847> [東証P]もチェックしたい。

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