材料満載で大車輪の人気へ、勇躍する「蓄電池」関連株をロックオン <株探トップ特集>
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―ペロブスカイト量産化、データセンター増設ラッシュで高まる存在感― 「蓄電池」関連株に強い追い風が吹いている。背景には、2050年カーボンニュートラル達成を目指しエネルギー政策が転換するなか、再生可能エネルギー発電施設の設置が加速しており、これに連動する形で“なくてはならぬ存在”として市場が急拡大している。今月15日には、日本とEUの電池関連業界団体が覚書に署名し、これを契機に蓄電池業界間でサプライチェーン強靱化に向けての連携を強める構えだ。日本と大きな市場を有するEUが協力することで、グローバル展開への期待も高まる。勇躍する蓄電池関連株のいまを、さまざまな角度から探った。 ●まさに再生可能エネの相棒 風力、 太陽光発電をはじめ成長著しい再生可能エネ市場だが、これに伴い活躍の舞台を大きく広げているのが蓄電池だ。再生可能エネは気候などに左右されやすいというウイークポイントを持っており、電力余剰時に電気をため、ひっ迫時に放電することで電力需給をコントロールできる蓄電池は欠かせない。蓄電池が再生可能エネの「相棒」として強く意識されるなか、改めて成長期待が高まっている。 ここにきては、日本発祥で再生可能エネの切り札と言われる国産ペロブスカイト太陽電池の量産化が迫っており、新たなマーケットの創出が期待されるだけに蓄電池の活躍の場はいっそう広がることになる。また、生成AIサービスの拡大に伴う データセンターの増設ラッシュが強烈な追い風となっている。膨大なデータ量を処理するためには大量の電力が必要となり、送配電網などの電力系統に直接接続する、規模の大きい系統用蓄電池が重要性を増している。株式市場においても同蓄電池への関心は高く、これを刺激材料に株価を動意させる銘柄も少なくない。 ●国産+リサイクルで成長ロード快走 現在、太陽光パネルや風力発電は中国製が大きくリードしており、地産地消を標榜する我が国のエネルギーが外国製に委ねられている状況への懸念が高まっている。これを打開すべく、国もエネルギー安保の観点から「国産」への代替を強力に進めている。前述の日・EUによる電池関連業界団体の覚書の際も、蓄電池のリサイクルに加え中国依存からの脱却を目指すことが伝わった。 蓄電池のリサイクル・リユースに関しても、蓄電池資源の確保という観点からサプライチェーンの強靱化に欠かせない。国も蓄電池リサイクルを足早に推し進めており、これに呼応する形で業界団体をはじめ関連企業も動き出している。蓄電池の活躍領域は広く、EV車載電池や再生可能エネ分野では産業用から家庭用まで幅広く活用されているが、加えて災害時の非常用電源としても期待されており防災分野の一角としても関心が高い。材料満載で成長ロードを快走する蓄電池関連株の動向から目が離せない。 ●テスHDは大口受注を発表 テスホールディングス <5074> [東証P]は24日の取引時間中に、子会社が系統用蓄電所のEPC(設計・調達・施工)での大口受注を発表したことで株価が急動意した。受注金額は約130億円で、納期は28年4月を予定している。26年6月期から28年6月期にかけて収益を計上する方針だ。同社の26年6月期連結営業利益は、前期比41.3%増の36億円を計画しており、大きく落ち込みをみせた24年6月期の同利益23億7000万円から、順調に回復の道程を歩んでいる。株価は8月7日に490円まで買われ年初来高値を更新した直後に急落したが、ここにきて同高値を足早に射程に入れている。 また、7月にはアパレルのブランドショップを全国展開しているスターシーズ <3083> [東証S]が、系統用蓄電池事業に参入すると発表し話題となった。同事業では同社が系統用蓄電所を保有し、業務提携先のRE100電力(東京都中央区)が充放電の指示をするといった運用に取り組み、11月上旬に開始を予定する。3年間で75億円の売り上げを見込むという。そのほかの銘柄では、国内外の企業と系統用蓄電池開発事業で連携を強めるマーチャント・バンカーズ <3121> [東証S]、系統用蓄電池施設の工事受注が相次ぐグリーンエナジー&カンパニー <1436> [東証G]などにも目を配っておきたい。 ●ニチコン、一段高に期待 熱を帯びる蓄電池業界だが、関連株の中核ともいえるニチコン <6996> [東証P]には引き続き投資家の熱い視線が向かう。同社は世界有数のコンデンサーメーカーとして知られるが、家庭用蓄電システムでも注目度が高く、太陽光発電による電気を家庭やEVにも活用できる「トライブリッド蓄電システム」を展開。9月には新たなフラッグシップモデルのトライブリッド蓄電システム「ESS-T5/T6シリーズ」の販売を開始しており、これに合わせた販路開拓にも余念がない。業績はここ数年苦汁をなめてきたが、26年3月期連結営業利益は前期比15.3%増の60億円を計画しており、成長ロード復帰に関心が向かう。株価は、5日移動平均線をサポートラインに新値街道をまい進しており、ここからの一段高に期待が高まる。 ●ニーズ捉えるエヌエフHD 量子コンピューター関連の先駆的存在といえるエヌエフホールディングス <6864> [東証S]だが、実は蓄電分野でも技術力を発揮している。グループに蓄電システムの開発、生産、販売、メンテナンスを一貫して行う子会社のNFブロッサムテクノロジーズを擁し、ニーズを捉えたタイムリーな事業を展開している。また、系統用蓄電池の需要が高まるなか、同じくグループのエヌエフ回路設計ブロックが再生可能エネや蓄電池の評価に使われる「系統連系試験システム」を手掛けている点も見逃せない。26年3月期第1四半期(4~6月)の連結営業利益は前年同期比2.8倍の1億4500万円で着地、中間期予想に対する進捗率は69%に達している。 ●ブレインP、芙蓉リースは最高益更新 ブレインパッド <3655> [東証P]は、さまざまな業種を対象にデータ分析・AI活用で幅広く支援を行っている。ここにきては蓄電池事業者やメーカーに対し、蓄電池運用データの可視化や劣化予測などでも活躍素地を拡大。7月30日には、蓄電池管理や発電所保全・保安をデータ活用やAIエージェントで課題を解決し、最適運用で利益最大化を目指す電力業界向けソリューションを発表した。こうした支援を行うことで、再生可能エネ事業者、大手電力会社などのニーズも捉えている。業績も好調だ。8月に26年6月期の連結業績予想を発表し、営業利益段階では前期比11.1%増の17億5000万円を計画。3期連続で過去最高益を更新する見通しだ。 リース大手の芙蓉総合リース <8424> [東証P]は、「エネルギー環境」を成長ドライバーのひとつに位置付け、多様なエネルギー関連事業を国内外で展開している。今年4月、子会社の芙蓉オートリースがイーストン(埼玉県春日部市)から電動フォークリフト用鉛蓄電池の再生事業「MOTTA(モッタ)」を譲受し営業を開始。蓄電池のリサイクル・リユースが求められるなか関心が高まる。また、7月には福岡県筑紫野市で系統用蓄電池事業の商業運転を開始した。同社は26年3月期の連結営業利益は、前期比1.4%増の700億円を計画、9期連続の過去最高益を見込んでいる。 ●リサイクルで松田産業、エンビプロ 松田産業 <7456> [東証P]は貴金属を中心にリサイクル事業を展開しており、株価が最高値圏を快走するなか投資家の注目度も高い。環境事業では車載用や定置用(家庭用・産業用)の大型リチウムイオン電池を中心に、ニーズに合わせたリサイクルを提案している。20年からは、太平洋セメント <5233> [東証P]と共同で、セメント製造プロセスを活用した大型リチウムイオン電池のリサイクル事業を開始するなど、リサイクルチェーン構築の強化を目指している。松田産業が8月8日に発表した26年3月期第1四半期(4~6月)の連結営業利益は前年同期比19.7%増の37億4300万円で着地。上期計画の61億円(前年同期比2.8%減)に対する進捗率は61%に達した。 また、資源リサイクル大手のエンビプロ・ホールディングス <5698> [東証S]は、長年培ってきた高度な再資源化技術を強みとし、この分野でも攻勢をかけている。子会社のVOLTAは6月、東京都の「リチウムイオン電池等広域的資源化モデル事業 協働事業者」に採択され、都内自治体の回収・処理を支援するとともに、リサイクル(資源化)の促進を目指す。エンビプロの25年6月期連結業績は、営業利益段階で前の期比31.0%減の9億7200万円に落ち込んだが、26年6月期は前期比33.7%増の13億円と大きく回復する見通しだ。 株探ニュース