明日の株式相場に向けて=カオスの間隙をAI関連の中小型株が走る

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 週明け29日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比311円安の4万5043円と続落。きょうから実質10月相場入りで、配当権利落ちに伴う下げ圧力が300円程度と試算されており、それを考慮するとほぼフラットで弱含み程度の着地にみえるのだが、中身をみると少々異様な景色となっている。

 まず、プライム市場の値下がり銘柄数が1400を超えた。配当権利取り後の手仕舞い売りが反映されたといっても、全体の9割近い銘柄が値を下げる説明としては不十分である。上昇・下落いずれにおいても銘柄数が9割を占める場合は、全面高あるいは全面安という表現がなされるが、きょうは日経平均が実質横ばい圏着地でも全面安商状に近い状態だった。加えて売買代金上位をみると、売買代金トップのレーザーテック<6920.T>から同7位のIHI<7013.T>まで全部上昇している。極端に言えば全面安の中で、主力どころの大型株だけがピンポイントで買われた格好だ。なお、TOPIXの下落幅は55ポイントで、このうち配当権利落ち分が約30ポイント。差し引き25ポイントの下げで、NT倍率14.2倍で計算すると、日経平均に当てはめて355円安相当の下げということになる。配当権利落ち込みで655円安というのが体感温度となる。

 もっとも足もとの押し目は基本的には買い場提供と前向きに考えなければ、機関投資家は持たざるリスクを背負うことになる。世界的なインフレ警戒感が強い。ここにきてウクライナ情勢がトランプ米大統領の変心で妙に歪んだ状況となり、地政学リスクも再燃していることで、金市況の上昇が顕著だ。株式市場も基本的に今のようなインフレ環境が続くこと自体は株価の先高期待を膨らませることになる。しかし、スタグフレーションのトリガーが引かれた場合はどうか。株式市場がクラッシュする可能性も否定できない。米国で労働市場が軟化している。消費需要が減退すれば需要と供給のバランスでインフレも収まるのが自然だが、予想された軌道とは異なるケースも考えられる。そして、もはや日本が一番スタグフレーションの影に怯えている。国内の食品関連の値上がりなどはかなり深刻なものがあるが、どうみても所得と釣り合っていない。植田日銀総裁も頭を抱えるところである。

 総裁選の行方も一時は必勝路線に乗ったと思われた小泉新総裁爆誕のシナリオが、“ステマ問題”でにわかに怪しくなった。このSNS全盛時代に、政治の世界も程度の差こそあれステルスマーケティングはゼロであるはずがないように思えるのだが、今回こういう形で噴出しているのは何か国民の与り知らぬところで、これまでと別の力が働いている可能性もある。総裁選で第3の男、林官房長官にメディアが光りを当て始めた。これはひょっとすると宏池会VSトランプの構図となっているのでは、という穿った見方もある。

 個別株に目を向けると、AI関連の出遅れ株に流れが向きそうである。株価低位の小型材料株ではエヌビディア関連の穴株としてAKIBAホールディングス<6840.T>に着目。8月13日に年初来高値390円を形成し、この時は長い上ヒゲ陰線となりその後は調整含みで推移したものの、5日・25日移動平均線を絡めて出直ってきた。300円台前半のボックスゾーンで売り物をこなし切り、動意前夜の気配が漂う。同社はエヌビディア<NVDA>のスーパーチップを搭載した小型のAIスパコンを取り扱っている。近年はトップラインの伸びが顕著で、ファンダメンタルズ面でも見るべき変化がある。また、同じくエヌビディア関連ではAIを活用したソリューションで企業の業務分析や開発、保守・運用など一気通貫で対応するヘッドウォータース<4011.T>にも目を配っておきたい。25年12月期は前期比38%の大幅増収を見込み、営業利益は急変貌を果たした前期の反動もあって小幅増益予想にとどまるが、来期は一気に利益面でも開花期を迎える可能性が高い。

 このほか生成AI普及に欠かせないインフラの中核を担うデータセンター周辺では、オキサイド<6521.T>に再注目。光学分野における酸化物単結晶やレーザー光源、光デバイス開発で抜群の技術力を有するグローバルニッチトップであり、量子コンピューターの解読能力を弾き飛ばす量子暗号通信分野でも活躍が期待されている。同じく光関連の雄である精工技研<6834.T>は高値警戒感もあるとはいえ、データセンター向け光コネクターで爆発的な需要を獲得しているだけに注目場面が続く。週足で見ると陽線の数が極めて多いことに気付く。4月上旬の底入れから直近まで糸の切れた凧のようになっているが、時価総額1000億円台未満はまだ評価不足といえそうだ。

 あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の「主な意見」(9月18~19日開催分)、8月の商業動態統計、8月の鉱工業生産速報値がいずれも朝方取引開始前に発表されるほか、前場取引時間中に2年物国債の入札が行われる。後場取引時間中には8月の住宅着工統計が発表される。海外では9月の中国購買担当者景気指数(PMI)、9月のレーティングドッグ中国PMI、豪州準備銀行理事会の結果発表(政策金利決定)、9月の独消費者物価指数(CPI)速報値のほか、米国では7月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数や9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月の米消費者信頼感指数、8月の米雇用動態調査(JOLTS)などに耳目が集まる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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