【杉村富生の短期相場観測】 ─日本企業は外資のターゲットに!
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「日本企業は外資のターゲットに!」 ●マーケットの指標は“小泉首相”を示唆! 自民党総裁選が佳境を迎えている。今回は5人が立候補しているが、論戦は低調だし、内向き姿勢が鮮明である。生活を守るという視点での物価対策、与党が衆参ともに過半数割れの状況下、野党との連携が不可欠なのは理解できる。しかし、安全保障、国際情勢に関する主張は乏しい。これで日本の将来は大丈夫なのだろうか。 改めて述べるまでもない。政府の責務は国民の生命、財産、生活を守ることにある。もちろん、国が滅んでは生活どころではない。アメリカのトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平主席ら大国の指導者は国際秩序、ルールを平気で破る。まさに、「やったもん勝ち」だ。国連は無力である。この3カ国は拒否権を有する。 北朝鮮は核開発を着々と進め、イスラエルの暴力(ガザ侵攻)を誰も止められない。EU(欧州連合)は防衛力の強化を急いでいる。サウジアラビアなど中東諸国もそうだ。アメリカとの関係を強化している。結局、頼みの綱はアメリカだろう。それと同時に、国家主義の台頭は避けられない。なにしろ、新東西冷戦構造(経済分断)である。 こんな厳しい局面での新総裁選びだ。各候補は従来の主義・主張を封印している。党内融和を優先しているのだろうが、持ち味を捨てては存在感がない。世論調査、党員・党友調査などによると、小泉進次郎農林水産相が一歩リード、高市早苗前経済安全保障相、林芳正官房長官が後を追う展開らしい。小林鷹之元経済安全保障相、茂木敏充前幹事長は苦戦、という。 大手証券では「高市氏は決選投票に残れない」と。すでに、長期国債(10年物国債利回り)は財政リスクの後退(減税・財政出動を唱える候補者の伸び悩み)を反映し、低下気味だ。高市トレードの代表的な銘柄だった核融合(新型原子炉)関連の助川電気工業 <7711> [東証S]は急落している。株価は正直だ、ということか。 ●ワンフロア2億ドルの物件が“即完”! 一方、総裁選後の株式市場の展望はどうか。筆者は再三指摘しているように、「10~11月相場は荒れる」とみている。国際マネー、ヘッジファンドなどの決算期末を控えているし、自民党新総裁(次期首相)の政策を見極めよう、とのムードが強まるだろう。岸田、石破両政権は発足早々、解散・総選挙に打って出た。これは大きな賭けになる。 もちろん、中・長期的には何らの不安もない。すっかり小さくなってしまった日本企業(アメリカ市場の時価総額上位7社の「マグニフィセント・セブン」の総計が2800兆円を超えるのに対し、東証市場の上位7社の「7人のサムライ」は182兆円にとどまる)は投機筋(アクティビスト)にみんな狙われる。 いや、“小物”はすでにターゲットになっている。東京コスモス電機 <6772> [東証S]は1947年設立の老舗だが、複数の投資ファンドの連合軍によって社長が解任され、投資ファンドの出身者が社長になった。これはスウォーミング(群がり型)と呼ばれる形態のアクションである。事前にアクティビストが連携するウルフパック(群狼型)とは違う。 株主総会での協調だけに、会社側は対応が遅れる。ちなみに、昨年は外資による買収提案を受けた日本企業が193件あった。今年は8月までで157件だ。これらがすべて買収までいくとは限らないが、昨年の上場廃止企業の多くがかつてのように倒産によるものではなく、MBO(経営陣、大株主による買収)、TOB(株式公開買い付け)だと思われる。 なにしろ「失われた30年」の間に、日本はすっかり貧乏になってしまった。個人金融資産のうち、現・預金が5割強(アメリカは12%)の国だ。個人金融資産は日本の2239兆円に対し、アメリカは2京円に迫る。時代は変わりつつある。明治以来の貯蓄奨励政策はマル優(少額貯蓄非課税制度)の廃止とともに終わっている。 すなわち、投資の時代だ。政府の支援もある。NISA(少額投資非課税制度)、新NISAが好例だろう。外資はこのチャンスを見逃さない。すでに、AIストーム <3719> [東証S]、データセクション <3905> [東証G]は外資の傘下だ。FA機器中堅の北川精機 <6327> [東証S]はアクティビストの保有比率が17%に達している。 ニコン <7731> [東証P]、JX金属 <5016> [東証P]、ローム <6963> [東証P]だって値動きがあやしい。割安な銘柄はみんな狙われる。なにしろ、麻布(東京)のマンション(森JPタワー→64階建て)の最上階(1500平方メートル)のワンフロアが売り出され(2億ドル→300億円)、“即完”になる時代である。 2025年9月26日 記 株探ニュース