中長期の成長期待に刮目、次代の有望市場「インド」関連株に再脚光 <株探トップ特集>

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コラム

―4~6月期のGDP7.8%増、事業拡大や新たに進出する動き相次ぐ―

 中国経済がかつての勢いを失うなか、中長期的に人口増加が見込まれるなど潜在力が高い インドへの関心が一段と高まっている。国連人口基金の世界人口白書2025によるとインドの人口は約14億6390万人と世界一で、同国政府が8月29日に発表した4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比7.8%増と1~3月期の7.4%増から加速した。豊富な若年労働力や消費の拡大、ITサービスやデジタル化の進展など同国は日系企業にとって有望な市場・拠点であり、事業の拡大や新たに進出する動きが相次いでいる。

●民間投資目標10兆円

 在インド日本大使館は6月、24年10月時点で同国に進出している日系企業は1434社(前の年に比べて35社の増加)になったと発表。20年の1455社をピークに3年続けて減少していたが、再び増加に転じた。拠点数は5205カ所で、日系企業数の半分以上、拠点数の3分の1以上は製造業となっている。

 インド進出の動きが活発化するなか、8月29日には石破茂首相とモディ首相の首脳会談が行われ、安全保障や投資、人的交流など8分野にまたがる「日印共同ビジョン」が採択された。インドへの民間投資の目標として10兆円を掲げたほか、今後5年で50万人以上の人材交流を目指すとしており、石破首相は記者会見で「インドの広大な市場は潜在力にあふれ、その活力を取り込むことは日本経済の成長にもつながるものだ」と述べた。

●国内企業の取り組み活発

 インド関連銘柄としては、同国の乗用車市場で圧倒的なシェアを誇るスズキ <7269> [東証P]を筆頭に、売上高の2割以上がインド向けの関西ペイント <4613> [東証P]、家庭向けエアコンで首位のダイキン工業 <6367> [東証P]、紙おむつ市場で高いシェアを持つユニ・チャーム <8113> [東証P]などが挙げられるが、直近でも各企業の取り組みが相次いでいる。

 伯東 <7433> [東証P]は16日、グループ会社を介して現地法人を設立し、工業排水処理システムの販売体制を本格稼働させたと発表。ZLD(Zero Liquid Discharge:工場から外部に出される排水をゼロにまで低減すること)規制対応に向けたソリューションを提供するという。

 MonotaRO <3064> [東証P]は12日、4月に設立したテックセンターの稼働を開始した。自社システムの開発体制の強化と優秀なエンジニアの確保、更には技術知見の蓄積を目的としている。

 ZACROS <7917> [東証P]は10日、業務用液体容器「CUBITAINER(キュービテーナー)」などの事業拡大を目的に、輸入販売・営業・マーケティング活動を行う子会社を設立すると発表。設立時期は25年12月、営業開始は26年1月を予定している。

 高千穂交易 <2676> [東証P]は8日、グループ会社を介して現地活動拠点を開設したことを明らかにした。グローバル市場への展開強化の一環で、まずは現地の情報収集・パートナー探索・商機の模索を進めるという。

 東京エレクトロン <8035> [東証P]は5日、同国における事業展開の推進に加え、装置設計及びシミュレーションなどソフトウエアを中心とした開発を行うことを目的に、新たな開発拠点を設置したと発表。高度な技術力を持つ同国の大学や学術機関と次世代半導体の要素技術に関する共同研究を推進するとともに、高い専門性を持つ優秀な人材の獲得や技術開発に必要となるネットワーク構築に取り組むとしている。

 NITTOKU <6145> [東証S]のグループ会社であるNITTOKUシンガポールと第一実業 <8059> [東証P]は1日、同国に合弁会社(出資比率はNITTOKUシンガポール70%、第一実が30%)を設立すると発表。第一実の幅広いネットワークと販売力を活用し、自動巻線機を中心とするNITTOKU製品の販売強化につなげたい考えだ。

 このほかにも、ペイクラウドホールディングス <4015> [東証G]傘下のバリューデザイン子会社は同国でゲーム・エンタメ作品の流通事業を手掛ける企業と連携、ライオン <4912> [東証P]はヘアケア・スキンケア製品や医薬品などを製造販売する子会社の設立を計画、技研製作所 <6289> [東証P]は同国のプレキャストコンクリート製造大手と連携体制を構築、アネスト岩田 <6381> [東証P]はコンプレッサーの組み立て工場を新設、武蔵精密工業 <7220> [東証P]はテクノロジー・エクセレンスセンターを開設、三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]は同国のイエス銀行に出資、三菱地所 <8802> [東証P]は支店設立といった動きがみられている。

●物流需要を見込んだ動きも

 加えて、インドでの旺盛な物流需要を見込み、国際複合一貫輸送や近隣諸国の現地法人との連携によるビジネスチャンス創出を目指す取り組みもみられている。

 上組 <9364> [東証P]は12日、同国のムンドラ港でコンテナ貨物の取り扱い・保管事業などを行っているサウラーシュトラ・フレイト社の株式を取得し、子会社化することを決めた。同社は成長事業のひとつとして「収益基盤としてのグローバル事業の確立」を掲げており、海外事業の競争力強化を図っている。

 セイノーホールディングス <9076> [東証P]は9日、傘下のMDロジスが現地法人を設立し、倉庫オペレーションを中心とした現地物流サービスの提供を開始したと発表。主要荷主が同国で新たに建設する製造拠点で、完成品や部材の在庫管理、保管、ピッキング、出荷までの物流業務全般を一貫して担うという。

 三菱倉庫 <9301> [東証P]は現地法人の「インド三菱倉庫」が4日から営業を開始した。ワンストップでのサービス提供体制を強化するとともに、インドから欧米に向けた貨物の取り扱いについても、既存の海外拠点ネットワークに同拠点が加わることで、更なるシナジーの創出と付加価値の高いサービス提供を実現する構えだ。

 山九 <9065> [東証P]は1日付で「インド事業戦略班」を新たに設置した。これは同社の長期ビジョン及び中期経営計画の戦略的重要拠点と位置づける同国において、新たな事業機会の創出と既存事業の深化を図るもの。現地関係者との協業を深めながら、同国市場におけるプレゼンス向上と社会的価値の創出に努めるとしている。

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