三井郁男氏【最高値更新続く日本株、AI相場の持続性は?】 <相場観特集>
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―上半期も残りわずか、日米中銀イベント通過し自民党総裁選を注視すべき局面に─ 週明け22日の東京株式市場で、日経平均株価は2営業日ぶりに終値で最高値を更新した。米国市場でも前週末に主要3指数が連日で過去最高値をつけ、9月に入りAIや半導体関連などハイテク株への資金流入がグローバルで顕著となっている。米連邦公開市場委員会(FOMC)や日銀の金融政策決定会合といった中銀イベントを通過し、自民党の総裁選を巡る動向を注視すべき局面に差し掛かるなか、強調展開は今後も続くのか。アイザワ証券・投資顧問部ファンドマネージャーの三井郁男氏に話を聞いた。 ●「物色対象はAI関連以外にも拡大へ」 三井郁男氏(アイザワ証券 投資顧問部 ファンドマネージャー) 上半期末に差し掛かり、目先は金融機関による益出し売りにより主力株の上値が圧迫される状況が続くと見込まれるものの、10月に入れば需給環境に変化が出てくる。これまではAIに関連する銘柄群が相場のけん引役となってきたが、やがて他のセクターも循環的に物色の対象が広がることとなるだろう。トランプ関税の影響の織り込みが進んだ結果、来期の業績回復の確度の高い銘柄などに物色の矛先が向かうこととなりそうだ。ただしAI関連株のラリーがすぐに終息するとは考えていない。 国内では実質賃金がプラス基調となる可能性があり、マクロ環境自体はそれほど悪いものではない。10月4日の自民党総裁選に関心が向かうなか、候補者のうち高市早苗前経済安保相が優位となれば、景気刺激策への期待が高まり、昨年と同様に「高市トレード」の様相が強まることとなる。一方、小泉進次郎農相が優位となった場合も、経済面では成長志向を強めていくと考えられる以上、相場の大崩れは見込みにくい。少数与党のため、野党側との連携を通じて政策の停滞を回避することになるだろう。 日銀に関してはETFの売却決定後の次の一手として、すぐに利上げ、という流れにはならないはずだ。企業業績や、ボーナスを含めた賃金の動向を日銀は見極めていくに違いない。異次元緩和が終了し、インフレ経済に転換して企業は利益を伸ばしやすい環境となったとはいえ、次の利上げ時期は来年1月とみている。米国においては利下げがハイテク関連株の割高感を薄めており、更に住宅を含めて消費活動のサポート要因になると期待できる。米国株が大幅な調整に至らず、日本のマクロ環境が底堅い限りは、グローバルでみて日本株への見直しが進む可能性が高い。 この先1ヵ月間で日経平均は4万7000円に近い水準への上昇が見込まれる。調整があっても一時的なものにとどまりそうだ。アドバンテスト <6857> [東証P]やソフトバンクグループ <9984> [東証P]といったAIに関連する銘柄群に加え、インフレ経済への展開という観点で不動産関連も投資対象から外せないものとなるだろう。業績の上振れ期待が高い村田製作所 <6981> [東証P]やTDK <6762> [東証P]といった電子部品や、鹿島 <1812> [東証P]など建設セクター、関電工 <1942> [東証P]などデータセンター関連、NEC <6701> [東証P]や富士通 <6702> [東証P]、三菱電機 <6503> [東証P]といった防衛分野での収益貢献が期待できる銘柄群は、引き続き高い注目を集めることとなりそうだ。 (聞き手・長田善行) <プロフィール>(みつい・いくお) 1984年からファンドマネージャーとして日本株運用を40年以上にわたり続ける。国内銀行投資顧問、英国の投資顧問会社、国内大手信託銀行を経て、投資顧問会社を設立。2013年からアイザワ証券の投資顧問部で日本株ファンドマネージャー。自ら企業調査するボトムアップ運用を続けている。 株探ニュース