明日の株式相場に向けて=覚醒する「半導体関連株」大逆襲の序章
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きょう(18日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比513円高の4万5303円と急反発。一時は700円以上も水準を切り上げる場面があるなど、唖然とさせられる強さであった。既に戻り売り圧力から解放され青空圏を快走しているのだが、それでも4万5000円大台ラインは、利益確定売りを誘導するひとつのメルクマールとして意識されていた。だが、きょうはそうした思惑も完全に払拭された。朝方取引開始後ほどなくして大台替えを果たすや、そこから漸次水準を切り上げ、4万5000円台半ばに来てようやく買いの手が緩むという状況だった。メジャーSQ通過後に個人投資家のショートポジションが積み上がるなか、有り体に言えばそれを根こそぎ踏ませに行くような力が働いている。 世界の耳目を集めたFOMCだったが、FRBは0.25%の利下げを決定し、ドットチャートの中央値は年内残り2回のFOMCで、いずれも0.25%の追加利下げを示唆した。これらは市場が事前に織り込んでいたシナリオと完全に合致している。問題は、ここからのシナリオが現実とは大方の思惑と遊離していた。つまり、想定通りなら“材料出尽くし”となり米国株市場は下値を試すという見方が市場関係者の間でも多かったのだが、そうはならなかった。パウエルFRB議長は会合後の記者会見で「リスク管理のための利下げ」と説明し、タカ派的なニュアンスを言外に匂わせたのだが、米株市場はどこ吹く風で、AIアルゴリズムの影響で目先的な乱高下はあったものの、動揺した気配は微塵も感じられない。 もっとも米株市場が荒れなくても、東京市場では今週末に日銀金融政策決定会合を控えており、自民党総裁選の行方も大いに気になるところ。スピード警戒感も漂うなかで、きょうは様子見ムードに終始するのではという見方が強かったのだが、ここでも日経平均は大方の思惑から大きく外れた強気一辺倒の波動を描くことになる。その原動力はディスコ<6146.T>、東京エレクトロン<8035.T>、アドバンテスト<6857.T>。そしてこれにソフトバンクグループ<9984.T>やフジクラ<5803.T>が絡む形で半導体関連が大相場の様相を呈し始めた。 今回は半導体関連の中小型株にも物色の火が燃え広がってきた。これまでは半導体セクターの企業業績にも跛行色があり、業績面で足もと厳しい銘柄には買いが続かないケースが目立っていたが、今は株価が出遅れているという理由だけで投資マネーが流れ込む状況となっている。十把一絡げというと語弊はあるが、来期以降に収益回復トレンドが見えるのであれば、今期業績については不問というような雰囲気も漂う。たとえバブルの匂いを発散させていても、ダンスホールに音楽が流れ続けているという現実は否定しようがない。 とはいえ足の軽い中小型株に視点を向ける際に、ファンダメンタルズの切り口で評価できる項目があるかどうかは重要なポイントである。仮に足もとは業績面で苦戦していても回復傾向が確認される状況にあれば、来期業績に期待することへの妥当性を高め、当該株を買う根拠となる。当欄で直近取り上げたTOWA<6315.T>も目先急動意したが、今期以降に営業利益は成長路線復帰が見込まれている。株価は8カ月ぶりの年初来高値更新が目前だ。これ以外に株価妙味を内包する半導体関連銘柄をいくつか挙げていくと、例えばダイトーケミックス<4366.T>は要注目だ。同社は感光性材料のトップメーカーだが、半導体向けで好調な需要を獲得しており、フォトレジストの最先端品など高付加価値商品で実力を発揮する。また、フォトレジストと言えば東京応化工業<4186.T>は世界屈指の存在であり、AI半導体分野で新境地を開拓している。更に、ICソケットを手掛ける山一電機<6941.T>も目が離せない。圧倒的な「超微細加工技術」を武器に世界シェア4割というニッチトップの競争力は特筆される。既に年初来高値圏を走るが、当面は昨年5月の高値3865円を奪回すれば実質的な青空圏に突入することになる。 このほか、半導体商社のイノテック<9880.T>は投資指標面からみて割安で、26年3月期最終利益は前期比4割強の増益を見込むなどV字回復を見込んでいる。株主還元も評価され4%を超える配当利回りは魅力だ。半導体製造装置用部品を主力とするマルマエ<6264.T>も前期、前々期の逆境を乗り越え25年8月期は急回復が見込まれており、営業利益は前期から11倍化する見込み。そして26年8月期は一段の飛躍期に向かう可能性が高い。株価3ケタ台の中低位株では巴川コーポレーション<3878.T>やミナトホールディングス<6862.T>などをチェックしておきたい。巴川コーポは半導体実装用テープなどの半導体材料を手掛けており、PBRが解散価値の半値水準である0.5倍前後に放置され株価修正余地は大きそうだ。ミナトHDは産業用メモリーの設計・製造を手掛けるが、株価は中段もみ合い上放れの兆しをみせ、今年3月末以来の1000円台も視野に入る。 あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に開示される8月の全国消費者物価指数(CPI)にマーケットの関心が高い。また、週間の対外・対内証券売買契約も取引開始前に開示される。昼ごろに判明するとみられる日銀金融政策決定会合の結果に耳目が集まるほか、後場取引終了後に行われる植田和男日銀総裁の記者会見に注目度が高い。海外では英国で8月の小売売上高が発表される。(銀) 出所:MINKABU PRESS