馬渕治好氏【日経平均4万5000円台乗せ、リスクオン相場の先行き】(1) <相場観特集>
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―米ハイテク株高が東京市場に追い風も高値警戒感― 16日の東京株式市場では朝方は前日の米株高に追随し、日経平均株価は一時フシ目の4万5000円台に乗せるなど最高値圏での強調展開を示したが、その後は目先利益確定の売り圧力も顕在化し、一時マイナス圏に沈むなど上値の重さが意識された。日米でリスクオンの地合いが継続する一方で高値警戒感も拭えない状況となっている。ここからの株式市場の展望についてブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏と、インベスコ・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト木下智夫氏に話を聞いた。 ●「下値リスク高まり深押しも視野に」 馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表) 日経平均は朝方に4万5000円トビ台に乗せる場面があったが、やや行き過ぎに買われていることは否めない。4万5000円近辺は目先の天井となる可能性もあるとみている。日本株上昇の背景には海外投資家の買いが観測されていたが、ここ最近は年金など足の長い資金ではなく短期筋、具体的にはCTA(商品投資顧問)の先物買いによる効果が大きいといえそうだ。この先物への買い仕掛けの根拠となっているのが、石破首相の退陣表明と同時に浮上した次期自民党総裁選への思惑である。現状は誰が次期総裁の座を射止めるかは分からないが、いずれにしても財政出動を伴う経済政策が期待されるとして、先んじてCTAが動き指数押し上げ圧力が働いたと考えられる。 他方、米国株市場ではFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ期待を背景にハイテク株を中心に物色の矛先が向き、ナスダック総合株価指数が連日で最高値を更新するなど非常に強い動きをみせている。だが、今週17日のFOMC(米連邦公開市場委員会)での政策金利引き下げはもちろん、年内3回分(0.75%)の利下げまで既に織り込んだ状態にあり、FOMC通過後は目先材料出尽くしで上昇トレンドに歯止めがかかりそうだ。今後は米株安とともに為替市場でドル売りの動きが加速することも予想され、東京市場は米株高の背景を失うとともに、ドル安・円高に対する警戒感が重荷となりやすい。FOMCの直後、18~19日に開催される日銀の金融政策決定会合では現状維持が濃厚ながら、年内利上げに動く公算が大きい。物価高だけでなく、黒田総裁時代に過剰に金融緩和を進めた分の調整による利上げ圧力が今後顕在化することになりそうだ。 日経平均の向こう1ヵ月のレンジは前述のように4万5000円近辺は伸び切った状態に近く、下値リスクに注意する局面と考えている。下値メドは4万2000円近辺とみているが、その後も更なる深押しリスクがあり、年内に場合によっては4万円大台攻防となる場面もあり得る。現在バリュエーション面では、1年先の業績見通しをベースとしたTOPIXでPER15倍台にあり割高感が強い。これは、昨年の株価急落直前の7月央の水準と合致する。当面のリスクとしてトランプ関税の企業c業績に対する影響が実際に見えてくると、株式市場にもネガティブに作用することは否めない。 個別ではAIや半導体、データセンター関連株などは反動安に警戒するタイミングにある。相対的には内需系のディフェンシブ株が強みを発揮しそうで、円高も追い風となる小売りや外食産業など消費関連の一角に資金シフトしておくのも一法だ。 (聞き手・中村潤一) <プロフィール>(まぶち・はるよし) 1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。個人投資家などに向けてセミナー講演を活発に行っている。セミナーのスケジュールは「ブーケ・ド・フルーレット」のホームページ参照。 株探ニュース