インフレ基調のなか「逆襲高」、割安感顕著のJ-REITを再評価せよ <株探トップ特集>

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コラム

―不動産市況堅調で賃料上昇に期待強まる、NAV1倍割れ多く割安感強い―

 日本の上場不動産投資信託(J-REIT)市場が本格復活機運を強めている。昨年末まで低迷を続けていた東証REIT指数は、今年に入り一気に反騰基調に入った。REITの高い分配金(株式の配当に相当)利回りを評価する動きに加え、地価上昇など堅調な不動産市況を背景にオフィス賃料の引き上げが期待できることなどが指摘されている。上昇機運にあるJ-REITだがバリュエーション(投資尺度)面からは、依然として割安感は強く、ここから更なる「逆襲高」が期待されている。

●東証REIT指数は一時2年8カ月ぶり高値圏に浮上

 東証REIT指数が上昇基調にある。8月27日には一時1943.27まで上昇し2022年12月以来、2年8カ月ぶりの水準に上昇した。2日終値時点で年初からの上昇率は16.5%に達した。日経平均株価の6.1%やTOPIXの10.7%を大きくアウトパフォームしている。21年7月に2200.02の高値をつけた後、3年強にわたり調整局面を続けた東証REIT指数は昨年12月を底に反転し上昇基調を強めている。

 オフィスビルや商業施設、住宅、物流施設、ホテルなどに投資するREITは「ミドルリスク・ミドルリターン」の金融商品といわれる。東証には58銘柄が上場しているが、その平均分配金利回りは約4.6%と日経平均採用銘柄の平均配当利回り約2.1%を大きく上回っており、高利回り狙いの長期投資家などからの高い人気を誇っている。

●賃料上昇が金利上昇のマイナス面を相殺も

 REITの不安材料として警戒されているのが、足もとの金利上昇だ。金利上昇は高利回り商品としてのREITの魅力を相対的に減じさせる面がある。また、REITが銀行借り入れや投資法人債などで資金調達しビルなどの不動産に投資する場合、金利上昇は投資の利ざやを縮小させる要因にもなる。

 ただ、金利上昇に対するREIT市場の警戒感は強いものの、足もとの不動産市場は堅調に推移しており、不動産賃料の引き上げによる収入増がマイナス面を相殺することを予想する見方が増えている。また、地価の上昇はREITが保有する不動産価値の上昇にもつながるプラス面を持つ。東京都心部のオフィス空室率は低下基調にあり、今後も賃料上昇が見込める状況だ。また、東京23区の新築マンションの平均価格は上昇基調にあるほか、賃貸住宅の家賃も上昇している。インバウンド需要の盛り上がりは続き、ホテル宿泊料金も高騰している。経済の基調はインフレへと転換し不動産業界に追い風が吹くなか、「オフィス型」や「住居主体型」「ホテル主体型」などのREITが見直されている。

●「NAV倍率」1倍割れ多く割安感強い

 その一方、REITの割安さはなお顕著だ。株式のPBR(株価純資産倍率)に相当する「NAV倍率」が1倍を超えているのは、REIT大手の日本ビルファンド投資法人 <8951> [東証R]やジャパンリアルエステイト投資法人 <8952> [東証R]など一部の銘柄にとどまっているとみられている。

 そんななか、REIT復活を象徴する動きが出ている。前出のビルファンドは6月に22年1月以来となる増資を発表した。増資による資金調達で有望なビルなどに積極投資する「外部成長」に向けた動きに期待は高まっている。また、8月には霞ヶ関ホテルリート投資法人 <401A> [東証R]が新規上場(IPO)した。東証へのREITの上場は21年6月以来、約4年ぶりのことだ。足もとで日銀の利上げ観測が強まっているが、堅調な不動産市況が続くのなら利上げがあってもREITの調整は一時的とみられている。東証REIT指数は先行き2000奪回からの一段高が見込めそうだ。以下ではJ-REITの有望銘柄を紹介する。

●都市ファンド、ユナイテッド、ホテルリートなど注目

◎日本都市ファンド投資法人 <8953> [東証R]~商業施設やオフィスビル、住宅などに投資する総合型REITで時価総額は東証で3位。都市部に立地する不動産を中心に投資。分配金利回りは約5.0%。

◎三井不動産アコモデーションファンド投資法人 <3226> [東証R]~東京23区を中心とする賃貸住宅をメインに投資。9月に商号変更。分配金利回りは約3.6%。

◎ユナイテッド・アーバン投資法人 <8960> [東証R]~主要都市圏の商業施設やオフィス、ホテルなどに分散投資する総合型REIT。スポンサーは丸紅 <8002> [東証P]と第一生命ホールディングス <8750> [東証P]。分配金利回りは約4.6%。

◎平和不動産リート投資法人 <8966> [東証R]~平和不動産 <8803> [東証P]系。東京都区内の中規模オフィスビルや住宅などに投資する複合型REIT。分配金利回りは約5.3%。

◎ジャパン・ホテル・リート投資法人 <8985> [東証R]~日本全国のホテルに特化して投資。インバウンド需要に沸くホテル業界だが、建築コスト上昇や人手不足で新規供給は抑制されており、ホテル業界の活況は続くと見込まれている。分配金利回りは約5.5%。

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