窪田朋一郎氏【日経平均波乱展開に、リスクオフ局面での戦略は】(1) <相場観特集>
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―米半導体株安受け投資家心理悪化、為替動向なども注目― 1日の東京株式市場は日経平均株価が大幅に下値を探る動きとなり、一時4万2000円台を割り込む波乱展開となった。前週末の米国株市場ではハイテク株中心に売りがかさみ、エヌビディアをはじめAI関連や半導体関連株に利益確定の動きが顕在化した。これを受けて東京市場でも同関連株に向かい風の強い地合いとなっている。ここまで相場を牽引してきた銘柄群にバリュエーション調整の動きが観測されることで、投資家のセンチメントが冷やされている。外国為替市場の動向も含めて、当面は注意を要する局面といえそうだ。今回は松井証券の窪田朋一郎氏に株式市場の見通しについて、また外為オンラインの佐藤正和氏にはドル・円相場についての見解を聞いた。 ●「下値リスク高まり4万円割れも視野に」 窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト) 週明けの東京市場で日経平均株価は先物主導で大きく売り込まれる展開を強いられた。前週末の米国株市場ではハイテクセクターを中心に軟調な地合いとなり、特に AI関連の象徴株であったエヌビディアが大きく値を下げたことで市場センチメントが悪化し、東京市場でも半導体製造装置の主力どころを中心に売り込まれる展開となった。内需株を中心に買いが優勢となるものも多く見られたとはいえ、9月相場の出足は要警戒の流れとなっている。 米株市場では高値警戒感が意識されるなか、米インフレ圧力の高まりやリセッション警戒ムードの再燃が利益確定の動きを助長している。トランプ米政権と各国との関税交渉がおおむね一段落したところで、関税に伴う企業業績への影響も読みやすくなっているが、そのなか企業側の価格転嫁が回避できない環境が徐々に明らかとなり、投資する側にとっては警戒材料として買いを躊躇させる背景となっている。また、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演を経て、サームルールが再び俎上に載っている。昨年はサームルールがダマシに終わった要因として移民の増加が挙げられていたが、今年はその論理も当てはまらず、仮に失業率が高まった場合には、リセッション懸念が強まる可能性がある。一方、米株市場でエヌビディアが売られた背景には中国のアリババ が新たなAI半導体を開発したと伝わったことがある。同半導体はエヌビディアのエコシステムとの互換性があり、エヌビディアのシェアを奪う可能性が意識され株価に強い逆風材料となった。 東京市場では、今月は米株市場の動向を横にらみに調整圧力が払拭できない月となりそうだ。12日のメジャーSQ算出日前後に荒れる可能性があり、日経平均は200日移動平均線の位置する3万8500円近辺をメドに下値リスクが警戒される。他方、上値は重く4万3000円どころが上限ラインとなりそうだ。当面のスケジュールとしては今週予定の8月のADP全米雇用報告や米雇用統計よりも、来週10日と11日に発表される8月の米PPI及びCPIの方が注目されやすい。来週末のメジャーSQ算出を目前に、米インフレ指標を絡めボラティリティが高まるケースには注意が必要となる。 個別銘柄ではAI関連は当面厳しく、相対的に清水建設 <1803> [東証P]や鹿島 <1812> [東証P]などの建設株や、味の素 <2802> [東証P]、山崎製パン <2212> [東証P]など食品株に優位性がありそうだ。また、この投資スタンスの延長線でよりアクティブに“AI売りの建設買い”といったようなロング・ショート戦略も一考の余地がある。 (聞き手・中村潤一) <プロフィール>(くぼた・ともいちろう) 松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「グロース市場信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」など、これまでにない独自の投資指標を開発。また、投資メディア部長としてYouTubeチャンネルやオウンドメディア「マネーサテライト」を運営。 株探ニュース