インバウンドでも激アツ、空前のブーム「とんかつ」関連に妙味膨らむ <株探トップ特集>
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―物語コーポ、串カツ田中も新規参入、既存企業による出店加速もあり市場活性化― コロナ禍から順調に回復に向かっているかに見えた外食産業だが、ここにきて食材費や人件費など運営コストの増加で倒産する飲食店が増えている。帝国データバンク(東京都港区)によると、2025年上半期(1~6月)の飲食店の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は458件発生し、前年同期(435件)を上回り3年連続で増加した。年上半期として過去最多を更新し、通年で初の900件台に達する可能性もあるという。 こうしたなかにあって、「とんかつ」が近年ブームとなっている。新規参入や既存企業の出店も活発で、市場が活性化するなか、関連企業に注目したい。 ●訪日外国人客がブームを牽引 とんかつブームを牽引するのは、 訪日外国人客だ。衣のサクサクとした食感と肉のジューシーさの両方を味わえるとんかつは日本の食文化の豊かさを象徴する料理の一つでもあり、寿司や天ぷらなどと並ぶ人気料理となっている。 農林中央金庫が23年4月に発表した、日本に滞在したことのある5カ国の訪日外国人1200人に聞いた「訪日外国人からみた日本の“食”に関する調査」によると、滞在時に食べた日本の料理で「とんかつ」は42.3%(複数回答可)だった。寿司(68.3%)や天ぷら(47.2%)、ステーキ・焼肉(46.9%)、ラーメン(46.3%)などと並ぶ人気料理となっている。 近年では、海外進出するとんかつチェーンも増えており、「とんかつ新宿さぼてん」を展開するグリーンハウスフーズ(東京都新宿区)では、01年に韓国に進出したのを皮切りにアジア地域を中心に海外に店舗を展開。7月末現在で10の地域に114店舗を展開している。 ●「松のや」店舗数トップで勢力図に変化 とんかつ専門店といえば、個人店から大手チェーンまで数多くあり、老舗や有名店もひしめく競争の激しい業界だが、そうしたなかで今年に入り店舗数のトップが入れ替わるなど、見過ごせない変化も起こっている。 松屋フーズホールディングス <9887> [東証P]は01年4月にとんかつ業態1号店を出店したのを皮切りに出店を重ね、近年ではとんかつ業態の「松のや」の新規出店を年100店ペースに加速。今年4月には500店舗(松屋併設店、「マイカリー食堂」併設店を含む)を超え、それまで店舗数で首位を独走してきた「かつや」を抜き店舗数で業界トップとなった。 とんかつにごはんとキャベツ、味噌汁がついた「ロースかつ定食」が690円と、競合他社よりも安い定食が人気を呼んでいる。また、「松屋」「マイカリー食堂」などとの併設店が多いのも特徴で、これまで牛丼チェーンでは少なかった女性客や家族連れなどの客層を呼び込んでいるのも特徴だ。同社では今後も併設店を中心に出店を続け、業界トップを維持するとみられている。 ●物語コーポがとんかつ業態に新規参入 とんかつは揚げ物であることから、牛丼店などのファストフード店に比べて調理に手間がかかり、人材面を含めてオペレーションが複雑であることがネックとなる。ただ、大手外食チェーンは調理や店舗設計・運営などに独自のノウハウを確立することで、積極的な店舗展開を可能としており、今後も出店が活発化しそうだ。 また、今年2月に物語コーポレーション <3097> [東証P]が「熟成肉とんかつ ロース堂」1号店を愛知県豊橋市にオープンするなど、新規に参入するケースも増えている。同社では、とんかつ専門店が主に定食を提供する平均客単価1500円前後のレストラン業態と、かつ丼を中心とした平均客単価900円前後のファストフード業態で構成され、主な展開先としてレストラン業態はショッピングセンター、ファストフード業態は郊外とすみ分けられているところに着目。「熟成肉とんかつ ロース堂」では、こだわりのとんかつをリーズナブルに郊外ロードサイドで楽しめるようにしたのが特徴で、ターゲットはファミリー層となっている。 ●「とんかつ」に注力する関連銘柄 とんかつ専門店に関する市場規模のデータはないものの、2000億円程度と言われている。前述のように、既存企業による積極的な出店と新たな客層の開拓に、こうした新規参入企業が加わることで市場は今後も成長が見込まれており、関連企業にはビジネスチャンス拡大が期待できよう。 アークランズ <9842> [東証P]は、「松のや」と並ぶとんかつ専門店チェーンの大手として、「かつや」を全国に501店舗(7月末時点)展開。また、海外にも約70店舗を展開している。25年12月末には国内518店舗、海外82店舗まで拡大させる方針で、同社の外食事業を牽引する。また、「かつや」国内既存店売上高は7月まで5カ月連続で前年を上回って推移しており、足もとも堅調に推移している。 ブロンコビリー <3091> [東証P]は、21年9月にステーキ業態に続く第2の業態として「とんかつ かつひろ」をオープンさせ、現在では3店舗を展開している。更に24年4月には同事業の強化を図るため、愛知県で「とんかつ かつ雅」などのとんかつ専門店を展開するレ・ヴァンを買収。現在、とんかつ業態の店舗数は14店舗(6月末現在)を数え、年内に1店舗の出店を予定する。更に収益性を重視した新規出店の継続により、26年には20~30店舗への拡大を計画している。 串カツ田中ホールディングス <3547> [東証S]は、物語コーポ同様に新規参入組だ。今年3月に、「揚げることを追求し続けた会社が作る“極上とんかつ”」として、「厚切りとんかつ 厚とん」1号店を東京都品川区にオープンさせた。こだわりの銘柄豚を使用しているほか、オリジナルブレンドの油を使用しているのが特徴。また、ご飯にとんかつ、パクチー、温玉をのせて「パクチーかつ丼」にして食べるスタイルも提案するなど他社との差別化も狙う。 このほか、「豚屋とん一」をショッピングセンターなどに23店舗出店するトリドールホールディングス <3397> [東証P]、「かつ庵」を56店舗展開するゼンショーホールディングス <7550> [東証P]、全国に「とんかつ 濱かつ」85店舗を展開するリンガーハット <8200> [東証P]にも注目。更に、とんかつ業態「かつ里」「すみ田」を各1店舗展開するグルメ杵屋 <9850> [東証P]も関連銘柄に挙げられよう。 株探ニュース