上方修正で存在感際立つ、上げ潮に乗る「業績絶好調6銘柄」厳選リスト <株探トップ特集>
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―減益決算が相次ぐなかで光る、投資妙味膨らむ希少な上方修正銘柄をピックアップ― 3月期決算企業の26年3月期第1四半期(4-6月)決算発表が一巡した。4-6月期はトランプ米政権による高関税政策や為替の円高基調が製造業の収益を直撃し、全体の半数超が経常利益ベースで減益または赤字に沈んだ。建設や不動産など内需関連には好調な決算が散見されたものの、グローバル企業の収益悪化を補うには至らず、業績予想を上方修正した企業も100社程度にとどまった。一方で、マーケットでは個別株物色が活発化しており、決算通過を機に好業績銘柄を見直す動きも広がっている。そこで今回は、希少な存在といえる上方修正銘柄に注目し、再評価余地を秘めた中小型株を探った。 ●4-6月期は外需関連に逆風強まる 22日までに4-6月期決算を発表した3月期決算企業2244社を集計したところ、経常利益(米国会計基準および国際会計基準は税引き前利益)の合計額は前年同期比8%減と、同期間としては3年ぶりに減益となった。業種別では、米国の関税負担が重くのしかかった自動車関連の落ち込みが大きく、鉄鋼は米関税の影響や中国の過剰生産による需給環境の悪化で赤字に転落した。また、化学は市況低迷や円高が響き、海運も米関税による需要減退懸念で運賃下落に直面するなど、外需関連の収益悪化が鮮明となっている。 一方、内需系セクターは相対的に堅調さを維持した。建設は大型工事の進捗や好採算工事の増加によって利益を大きく伸ばし、不動産も底堅い需要や販売価格の上昇を背景に2ケタ増益を遂げた。情報・通信は企業の旺盛なIT投資意欲を追い風に好調を維持する銘柄が多く、そのほか銀行、保険、証券といった金融業も拡大をみせた。市場では成長分野や国内需要を取り込む企業に関心が向かいつつある。 総じてみると、トランプ関税の影響などを警戒し、先行きに慎重な姿勢をみせる企業が大半を占める。そうしたなかで業績予想の上方修正に踏み切った銘柄群は一段と目を引く存在だ。以下では、決算発表と同時に上期または通期の業績見通しを引き上げた企業のうち、株価指標や成長性の観点から上値追いが期待できる6銘柄を厳選した。 ●九州FGは業績拡大トレンドまい進で通期も上振れ濃厚 九州フィナンシャルグループ <7180> [東証P]は肥後銀行と鹿児島銀行を傘下に持つ地域金融グループ。九州では台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出を契機に半導体関連投資が拡大しており、これに伴う企業の設備投資や資金需要の増加が同社の追い風になっている。4-6月期は日銀の利上げに伴う金利上昇で貸出金利息収入が増加し、経常利益191億2300万円(前年同期比42.5%増)と好スタートを切った。これを受け、上期の同利益予想を3期ぶりの最高益となる270億円(従来は230億円)に上方修正。通期計画(480億円)は据え置いたが、第1四半期実績の進捗率は約40%と高水準で業績上振れが有力視される。株価は800円近辺のもみ合いを上放れてきたが、PBRは0.5倍台にとどまり、見直し余地はなお大きい。 ●加賀電子は株主還元も評価で上場来高値更新が視野 加賀電子 <8154> [東証P]は独立系のエレクトロニクス総合商社。EMS(電子機器受託生産)をはじめ高付加価値ビジネスを展開するのが特徴だ。また、株主還元に積極的で中期経営計画では配当性向を30~40%に引き上げ、DOE(株主資本配当率)4%を新たに導入。特別配当や自己株式取得も機動的に行う方針を掲げる。4-6月期決算では、7月に子会社化した協栄産業 <6973> [東証S]の業績寄与や負ののれん益72億円を織り込み、通期の最終利益予想を3期ぶりの最高益見通しに上方修正した。配当も年120円に増額したほか、発行済み株式数の9.4%を上限とする自社株買いと全株消却の実施を発表。特別利益の押し上げ効果を考慮しても、予想PER6倍台、配当利回り3.6%前後と割安感は強い。株価は決算発表後の急騰で、昨年1月につけた上場来高値3560円を射程に捉えている。 ●サンコールはデータセンター需要追い風に12期ぶり最高益へ サンコール <5985> [東証S]は自動車エンジン用弁ばねを主力とする精密部品メーカー。電子情報通信分野では光通信用のコネクターやアダプターを手掛け、足もとで生成AI(人工知能)の普及に伴うデータセンター 向けの旺盛な需要を取り込んでいる。4-6月期はアジアを中心に光通信製品の販売が急拡大したほか、前年同期にHDD用サスペンションの訴訟和解金20億円を計上した反動もあって、経常利益は23億3900万円(前年同期は7700万円の赤字)と四半期ベースの過去最高益を達成した。これを踏まえ、通期の同利益予想を従来の23億円から46億円へと大幅上方修正し、12期ぶりに過去最高益を更新する見通しだ。外部環境の先行き不透明感から下期計画は据え置いており、一段の上振れ余地を残している。好決算を受けて、株価は連日ストップ高の急騰劇を演じ、約19年3ヵ月ぶりの高値圏に躍り出たが、予想PER7倍台と依然として割安さが際立つ。 ●ビーエンジは四半期最高益更新で今年も上方修正の公算大 ビジネスエンジニアリング <4828> [東証P]は独SAP をはじめとするERP(統合基幹システム)の導入支援と、自社開発の製造業向けERPパッケージ「mcframe」のライセンス販売を二本柱とする。4-6月期は製造業の高水準なDXニーズが続くなか、ソリューション事業で既存顧客から追加案件を複数獲得し、経常利益は17億5000万円(前年同期比48.0%増)と四半期ベースの過去最高を大幅に更新して着地。あわせて、上期の同利益予想を従来の26億円から30億円に引き上げたが、通期計画は据え置いた。同社は業績と配当予想を保守的に見積もる傾向が強く、期中の上方修正が恒例化している。特に11月は前期まで3年連続で増額修正しており、今年も注目が集まる。また、今期から配当性向を50%以上に引き上げ、配当156円(前期は100円)と11期連続の増配を予定している点も注目ポイントだ。 ●ヤマトは利益重視路線で29年ぶりに上場来高値を更新 ヤマト <1967> [東証S]は空調・衛生分野を主力とする総合エンジニアリング企業。配管加工など建設現場での作業を工場にシフトさせる「工業化」を推進し、生産性や利益率の向上を図っている。同社は7月31日、上期(4-9月)の経常利益が23億5000万円になりそうだと発表。減益予想だった従来の18億円から一転し、6期ぶりに上期の過去最高益を更新する見通しとなった。下期に計上予定だった案件の前倒しに加え、受注体制の見直しや工業化推進による利益率改善が上振れの背景だ。その後発表した第1四半期の同利益が14億3000万円(前年同期比60.5%増)と大幅に伸びたことも評価され、株価は8月5日に1996年4月に記録した上場来高値1940円を約29年4ヵ月ぶりに更新し、2100円台まで上値を伸ばした。予想PER12倍台と割高感は乏しく、一段高も視野に入る。 ●ワシントンHは万博効果で早くも通期計画を上方修正 ワシントンホテル <4691> [東証S] は中価格帯を中心に全国でビジネス 、観光向けホテルを展開。8月14日に発表した4-6月期業績は経常利益が8億9200万円(前年同期比3.8倍)と大きな伸びを示した。関西の系列ホテルが大阪・関西万博開催による集客効果で客室稼働率と宿泊単価を押し上げたほか、春の観光シーズンにおける全国的な宿泊需要の高まりやインバウンド需要の拡大も追い風となった。第1四半期業績の好調に伴い、通期の同利益予想を従来の20億4000万円から24億6000万円(前期比40.2%増)に上方修正し、期末一括配当も26円(前期は20円)と前回予想から4円積み増した。株価は18日に新規上場した19年10月につけた上場来高値を更新したが、その後は利益確定売りに押されている。ただ、予想PER8倍前後と割安感が強く、再評価余地は大きいとみられる。 株探ニュース