鎌田重俊氏【NYダウ最高値でエヌビディア決算接近、今後の展望は?】 <相場観特集>

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コラム

―米利下げ期待強まるなかで重要イベントが到来、日本株は再び新値追いの展開なるか─

 米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測を支えに米国市場でNYダウは前週末22日、過去最高値を更新した。一方の日経平均株価は19日のザラ場高値4万3876円を形成後、騰勢に一服感が出ている。今週は米国時間27日にエヌビディアの決算発表が控えているが、重要イベントを経て日本株は新値追いの展開となるのだろうか。この先の相場展望について立花証券・企業調査部参与の鎌田重俊氏に話を聞いた。

●「予想PER20倍台への上昇も想定可能」

鎌田重俊氏(立花証券 企業調査部 参与)

 ジャクソンホール会議での講演で、FRBのパウエル議長は雇用情勢などに触れたうえで、利下げの可能性について言及した。タカ派的な姿勢をみせなかったことが株式市場ではポジティブに受け止められている。米国は年内2回の利下げが落としどころとなるとみているが、7月PCE(個人消費支出)価格指数や8月雇用統計など、経済指標の結果次第で市場の観測は変化することになるだろう。エヌビディアの決算も大きなかく乱要因となるに違いない。中国向けのAI半導体「H20」の輸出に会社側が楽観的な見通しを示した場合はリスク選好姿勢が強まるはずだ。

 国内に関しては、日銀の植田和男総裁がジャクソンホール会議で、「賃金には上昇圧力が掛かり続ける」と発言している。年末までのどこかで日銀が利上げに動くとの観測が強まり、国内の債券利回りが一段と水準を切り上げることとなれば、株式市場への影響は無視することはできない。借り入れ金利が一段と上昇し、中小企業の設備投資意欲が後退した場合、GDPに悪影響を及ぼすこととなる。日本の金融政策を起点とした株価調整リスクには留意が必要だ。

 株式需給の観点では、海外投資家のうちロングオンリーの年金基金による現物買いがしっかりと続いてきたなかで、ヘッジファンドによる先物買いが直近の日本株の上昇に拍車を掛けた。また、国内の事業法人は14兆円規模の自社株取得枠のうち、約7兆円が未消化分となっている。個人投資家は5月以降、8月第2週までの売り越し額が約5兆円に上り、キャッシュを積み上げた状態だ。海外ヘッジファンドによる売りで日本株の急落があったとしても、7月高値(ザラ場ベースで日経平均では4万2065円)などで下げ止まった際には、国内勢の買いが見込まれる状況にある。

 米国のS&P500種株価指数の予想PER(株価収益率)が24倍台であることを踏まえれば、現状で17倍台にあるTOPIXや日経平均の予想PERが20倍台に切り上がってもおかしくはない。9月末の配当権利取りの動きも日本株の押し上げに寄与するはずだ。高配当の商社株や銀行株のうち出遅れ感のある銘柄などに、投資家の関心が向かう局面がしばらくは続くだろう。一方で、高PERのハイテク株に対しては、投資家の資金が向かいにくい状況が継続するとみている。

(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(かまだ・しげとし)
1988年早大商卒。同年に第百生命(現マニュライフ生命保険)に入社。ファンドマネジャーなどを務め、2000年より立花証券に移籍し、アナリストとして電子部品業界や電機業界を担当。情報企画部長、企業調査部長を歴任し、24年より企業調査部参与。

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