爆騰ロード突入へ、「AI半導体関連」覇道を行く5銘柄セレクション <株探トップ特集>

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コラム

―生成AI進化とソブリンAIの概念が共鳴し、データセンター特需はこれから本番へ―

 週末22日の東京株式市場は方向感の見えにくい展開ながら、日経平均株価は前日終値近辺で売り物をこなし、様子見ムードの中も底堅さを発揮した。現地時間22日午前10時(日本時間午後11時)から行われるパウエルFRB議長のジャクソンホール会議における講演に世界の耳目が集まっている。本稿執筆時点(22日午後)ではその内容を知ることはできないが、週末の東京市場は売り買いともに見切り発車の難しいタイミングであったことは確かである。

●向かい風の強い9月相場の戦略を考える時

 トランプ米政権からの圧力に屈し、パウエル氏がハト派に傾斜するのかどうかだが、市場ではその可能性は比較的低いとの見方が強いようだ。仮にパウエル氏が、FRBの独立性を守るというスタンスで男気を示し、タカ派的な内容となった時、あるいは市場がタカ派寄りと判断した時は、長期金利上昇とともに米国株が波乱含みの値動きになる可能性は否定できない。しかし、ここでのジャクソンホール会議におけるパウエル氏の発言内容は、イベントドリブンとしてはAIトレードの格好のネタとなり得るが、株価が上下どちらに振れても相場の中期トレンドを左右しないということだけはいえる。また、東京市場は日経平均が大きく揺れても、それとは次元の異なる領域で個別株の物色意欲は活発である。この日は値上がり銘柄数が1000を超え値下がり数を大きく上回っており、投資家のマインド自体は極めて前向きであることが分かる。

 これから9月相場に向けて投資家は株式市場とどう向き合っていくべきか。9月相場は月別の騰落率パフォーマンスでは年間で最弱といってよく、また海外投資家が日本株を売り越す傾向が極めて強い月ということで知られる。総論的には向かい風の強い環境を強いられそうだが、個別株戦略に影を落とすものではない。特に今の東京市場では森のざわめきに耳を貸さず、一本一本の木を見ていく投資で十分に立ち回ることができる。では、ここで投資テーマとして改めて有力視されるのは何かといえば、その最右翼候補に浮上するのはエヌビディアを変貌させた「AI半導体」である。

●「ソブリンAI」がデータセンター爆需に点火

  生成AI市場の成長スピードに陰りが見られないなか、世界的にAIデータセンター の建設ラッシュが続いている。生成AIを活用するためにはデータセンター内部に設置されたAIサーバーを経由することが必須となるが、データの特徴や形式をディープラーニングによって獲得・分析し、導き出したパターンをもとに新たなデータを生成するというのが一連のプロセスとなる。このAIサーバーに大量に搭載されているのが、エヌビディアの「ブラックウェル」に代表されるGPU(画像処理半導体)と、GPUとパッケージで導入されているHBM(高帯域幅メモリー)などのAI半導体ということになる。

 AIデータセンターは一時マイクロソフトなどが投資抑制の動きを見せるなどで過剰投資に対する警鐘を鳴らされる時期もあったが、これは大局的に流れを覆すものとはならなかった。サウジアラビアなどオイルマネーが掲げる「ソブリンAI」のコンセプトに共鳴する形で、国家プロジェクトの観点でコンピューティング能力の確保が世界的に重視されている。最近はAIスタートアップのキャッシュバーン(資本浪費)などをネガティブシナリオに加える動きもあるようだが、これも時代の潮流を変えるには至らないだろう。生成AIは日進月歩で、成長に抑制がかかるとすれば倫理的な問題だが、テクノロジーの進歩は不可逆的であり、倫理で押し返すことはできない。「AI半導体とそれに付随するデバイスや素材、設備などハード面の需要を呑み込む土壌が形成されるのはこれからが本番」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。

●非鉄株の強烈株高が示唆するAI半導体需要

 ひとつの典型的なメルクマールとして非鉄株の動向が挙げられる。三井金属 <5706> [東証P]が強烈な上昇トレンドを構築している。7月中旬以降の日足チャートを見ればその強さは一目瞭然、陽線の連続で時価総額5000億円以上の大型株とは思えない上げ足をみせつけている。とりわけ前週12日以降のパフォーマンスには目を見張るものがあり、その背景にあるのがAI半導体関連としての同社株の位置付けであった。

 三井金は今週20日になって、AIデータセンター内に設置されるAIサーバー向けに電解銅箔として機能の高い「VSP」の生産能力を大幅増強することを発表した。2026年9月までに25年4月比で45%増となる月産840トン体制とすることが伝わり、マーケットは色めき立った。同社株は翌21日にザラ場9650円の高値をつけ、2000年以来25年ぶりの高値圏に浮上した。これは同社株にとどまらず、JX金属 <5016> [東証P]などの株価にも強力な浮揚力をもたらしたが、それだけではない。AI半導体の驚異的な需要が、今後佳境に突入することを雄弁に語るものとなった。

●エヌビディアの決算だけで潮流は変わらない

 米国では来週27日夕方(日本時間28日早朝)に、AI半導体の象徴株ともなっているエヌビディアが発表する5~7月期決算に世界の耳目が集まっている。同社の直近株価はポジション調整の売りに押され、サポートラインとなっていた25日移動平均線を下回って推移している。

 これは同社のGPUに対する過剰なマーケットの期待が、今回の決算内容やガイダンスをポジティブに評価しない可能性があるとの見方が浮上しているため。カギを握るのはトランプ政権下での対中規制が同社の経営に影を落とすことへの懸念だ。しかし、そうしたなかも米国では、足もとでアナリストによる同社の目標株価を引き上げる動きが相次いでいる。AI関連株に対する割高論がかまびすしくなっている米国だが、直近のアナリストの同社株に対する強気傾斜は空売りしている向きにすれば穏やかではない。

 仮にエヌビディアの株価が決算発表後に売られたとしても、それは個別の事情によるもので、近い将来にAI半導体市場の伸びが失速するという論拠に基づくものではないであろう。東京市場で三井金やJX金属の株価がいみじくも証明しているようにAIデータセンターの建設ラッシュはまだ緒についた段階である。

 東京市場ではAI半導体関連銘柄の選別がこれからも鋭意進むことが予想されるが、投資家サイドにとって半導体セクターで新たなダイヤモンドを探すブライトスポットとして目が離せない。今回のトップ特集では、中期的に株価変貌余地を有すると思われる有望株を5銘柄エントリーした。

●株価変貌の可能性を内包する覇道株5銘柄

【トリケミカルは高誘電材料にHBM拡大の恩恵】

 トリケミカル研究所 <4369> [東証P]は先端半導体の製造に不可欠の高純度化学薬品の多品種少量生産でグローバルニッチトップの座を不動のものとしている。特に絶縁膜材料では抜群の競争力を誇っている。同社が生産するHigh―K(高誘電率)ゲート絶縁膜はシリコン酸化物よりも高い誘電率を有し、最先端半導体の量産プロセスにおいて重要な役割を担っている。AI半導体でGPUとパッケージで搭載されるHBM(高帯域幅メモリー)向けなどで同社の高誘電材料の需要は今後も増勢基調が続くことが予想される。26年1月期は前期比4割近い増収を見込み、営業利益は同15%増の60億5000万円と2ケタ成長を予想するが、第1四半期に当たる25年2~4月期の営業利益は前年同期比2.6倍の17億1200万円と急拡大しており、通期も一段の上振れ余地が意識される。

 8月に入って株価は調整色をみせていたが、75日移動平均線を絡め下げ止まる動きとなれば再浮上も近い。6月下旬から7月末にかけてのボックス圏もみ合いの上限である3500円どころへのリバウンドが第一目標となる。

【住友ベは封止材世界首位で収益も株価も最高峰】

 住友ベークライト <4203> [東証P]は熱硬化性樹脂で優位性を発揮し、自動車や航空機、住宅、医療、バイオ、農業など多岐にわたる分野でニーズを開拓しているが、とりわけ半導体封止材(エポキシ樹脂成形材料)で世界トップシェアを誇っている点は注目される。AI半導体関連では顆粒封止材やMUF(モールドアンダーフィル)で実績が高い。今後はAIサーバー向け高密度パッケージ用途などで需要獲得を進めていく構えにある。業績も申し分なく好調といってよい。26年3月期売上高は前期比2%増の3100億円と小幅ではあるが連続で過去最高を達成する見通しにある。また不採算製品からの撤退などリストラに伴う利益率改善効果も発現しており、営業利益は同25%増の310億円を予想。これは06年3月期以来実に20年ぶりのピーク利益更新となる。

 株価は4月中旬以降一貫した下値切り上げ波動を続けており、8月19日に4940円の上場来高値をつけたばかり。信用買い残は枯れ切った状態で需給関係も良好だ。未踏の5000円台突入から戻り売り圧力のない青空圏を進む展開が期待される。

【電子材料はAI用先端半導体向け受注が高水準】

 日本電子材料 <6855> [東証S]は半導体検査用プローブカード大手で、プローブカードが総売上高の99%を占める文字通りの専業メーカー。また、売り上げの半分を海外で占めており、米国、台湾、欧州、中国などに拠点を有するグローバル企業として名を馳せる。AI先端半導体向けにMEMS技術を活用したMタイプのアドバンストプローブカードの引き合いが旺盛で、高水準の受注残を確保し中期成長力にも陰りはない。26年3月期は生産設備増強や研究開発コスト、減価償却などの影響を考慮して営業利益段階で前期比18%減の37億5000万円を会社側では計画するが、第1四半期(25年4~6月)は前年同期比25%増の14億7500万円と好調で、進捗率は約4割に達し通期増額修正の可能性も内包している。会社側でも生成AI回りの需要の伸びに中期的に期待を寄せている。

 PER面でも割高感はない。8月8日にマドを開けて買われた後、2600~2700円台で踊り場を形成しているが、年初来高値圏とはいえ、昨年7月高値への戻り相場として見た場合はまだ5合目に過ぎない。3000円大台回復を通過点とする上昇相場が続こう。

【タツモは先進パッケージ分野で需要を捉える】

 タツモ <6266> [東証P]は半導体製造装置を主力展開するが、オーダーメイドによる受注生産を特長としている。複数の半導体チップを先進的技術によってコンパクトに統合し、高性能化や省電力化を実現するアドバンスドパッケージ分野で実績が高く、生成AI市場拡大を背景としたAIサーバー向けに高水準の需要を獲得している。25年12月期の業績はトップラインが410億円と前期比14%増の伸びを確保する見通しながら、研究開発費の後ズレ計上や電気自動車(EV)販売低迷に伴うパワー半導体向けの不振で営業16%減益見通しにある。しかし、26年12月期は利益面でも切り返し、高成長路線に復帰する公算大。特にAIデータセンターの建設が加速することによって同社の商機は大きく高まる。

 株価は4月上旬を境に下値を漸次切り上げているが、2000円を下限とするもみ合いを経て大勢2段上げに向かう可能性が高い。増益トレンド回帰が見えてくれば、もとよりPER8倍台の割安感が水準訂正期待を一気に高めるケースも考えられる。2月27日の年初来高値2525円をにらむとともに、中勢2000円台後半のゾーンを指向する展開へ。

【シンデンハイはAMD商品のニーズ獲得に期待】

 シンデン・ハイテックス <3131> [東証S]は半導体や液晶モジュールを取り扱うエレクトロニクス商社で、半導体関連では韓国SKハイニックスのほか、中国、台湾、米国メーカー製品を手掛ける。米国ではアドバンスト・マイクロ・デバイシズのAIデータセンター関連のCPUやGPUをラインアップし顧客ニーズに応えている。AIサーバーに搭載される半導体は採算性が高く、足もとの利益の伸びに貢献している。25年3月期の営業18%増益に続き、26年3月期の同利益は前期比14%増の16億円と2ケタ成長を継続する見通しだ。商社という業態ながらPER6倍台、PBR0.7倍台は割安感が際立つ。株主配当を重視し、前期は前の期比倍増となる125円配当を実施したが、今期は更に5円増配の130円を計画。配当利回りは時価換算で4.6%前後と高いことも魅力。

 4月初旬から6月中旬までの戻り相場では週足陽線の多さが際立った。6月19日に3105円の年初来高値形成後、弱含みもみ合いで推移しているが、13週移動平均線との上方カイ離解消で時価近辺は拾い場。3000円台を地相場とする活躍が期待される。

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