【植木靖男の相場展望】 ─大相場を前にした胎動期入り
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「大相場を前にした胎動期入り」 ●短期過熱による下げは25日線が下値メドか 日経平均株価は一部の市場関係者、投資家の懐疑をものともせずに急騰を続けてきた。だが、ここへきて過熱が警戒されて先行き不安が高まっている。 ここまでの急騰の背景だが、やはり米国で利下げ期待が強まり、NYダウとナスダック総合指数が交互に水準を切り上げてきたことがある。さらにわが国で円安が進んだこと、海外短期筋による株価指数先物の買いが続いたこと、また企業業績の先行き警戒感が後退したことなどが挙げられる。 日経平均株価も TOPIX(東証株価指数)も高値更新を続けてきたことで、さすがに過熱感が強まってきていた。しかも、頼りにしていた米国株にも先行き不安が台頭し、これまでの楽観的なムードは変わりつつある。 日経平均株価は4万3876円の史上最高値をつけた8月19日をピークに3日続落し、売り転換を示唆し始めている。もちろん、まだ下げ相場への転換が明確に定まったわけではなく、増大しつつある売り玉の買い戻しもあり、先高感はなお強い。前回の本コラムで触れたように、いまは先行きの大きな上昇を前にした胎動期にあり、ここでの上下動は必然的な展開といえよう。 では、短期的にせよ過熱感からの下げはどのあたりまでか。チャートでは、これまでの上昇過程で常に下値を支えてきたのが25日移動平均線だ。いま同線は4万1600円処に位置する。このあたりまでの下げはあり得るとみてよいだろう。 理屈の上では、ポイントはやはり米国株の動向だ。NYダウ、ナスダック総合指数は交互に打ち上げ花火のように上昇、高値を取ってきたが、ここへきていずれも頭が重くなってきている。 こうした際には、何か大きな懸念材料が顕在化しなくても、きっかけだけで崩れることが経験的に知られている。今回はやはり週末にかけてのジャクソンホール会議、また9月5日の米国雇用統計、11日の米国消費者物価指数などが内容はともあれ、きっかけとなる可能性は大きいだろう。 わが国で気になるのは長期金利だ。いま10年債利回りは1.61%と高い。日銀は利上げを口にするが、動くに動けない状況だ。今後の日銀の政策を注視したい。 ●内需株の循環買いによる大相場は来年前半まで続く ともあれ、先高感が強い現状では下値も限定的とみられ、実際、上昇銘柄が結構多いことからも、それがうかがい知れる。 では、当面の物色対象はどうみればよいのか。答えは内需株だ。輸出環境が厳しくなるなかで、供給が需要を上回るわが国は輸出に頼ってきたが、今後はその上回る分を内需で対応せざるを得ないからだ。 実際、ここへきての物色動向をみると、金融、非鉄、小売り、不動産、建設など内需株が循環的に買われている。大正時代の米騒動をきっかけに物価高騰に連動して株価が上昇したが、それを参考にすると2026年前半までは大相場が続くとみてよい。 当面候補となる銘柄を挙げると、 非鉄から住友金属鉱山 <5713> [東証P]、三井金属鉱業 <5706> [東証P]、JX金属 <5016> [東証P]など。銀行からみずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]、 保険からかんぽ生命保険 <7181> [東証P]、東京海上ホールディングス <8766> [東証P]など。このほか、やや特異な銘柄として木徳神糧 <2700> [東証S]にも注意を払いたい。 また、日本製鉄 <5401> [東証P]を株価全体の指標として注目していきたい。さらに、毎回取り上げるがFOOD & LIFE COMPANIES <3563> [東証P]だ。ユニクロを追いかけるとみたい。 なお、内需株物色で気をつけなければならないのは出来高だ。あまりに出来高の小さい銘柄は、今後の大相場についていけない。 2025年8月22日 記 株探ニュース