明日の株式相場に向けて=「ステーブルコイン」関連株に熱視線
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きょう(19日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比168円安の4万3546円と3日ぶり反落。朝方は高くスタートし、きょうも破竹の最高値街道まい進かと思われたが、買い一巡後は売りに押されて値を消す展開に。売買代金上位にランクインしている主力どころではディスコ<6146.T>が小高く引けたほかは軒並み値を下げる状況となった。さすがに一呼吸入ったという場面だが、下値では押し目買いなのか買い戻しなのか、物色ニーズの強さが改めて浮き彫りとなっている。また、常々“森を見ずに木を見る投資”を主張してきたが、きょうはまさに全体指数と離れて中小型株物色が活況の様相を呈した。プライム市場の値上がり銘柄数は1000を上回り、全体の65%を占めている。個人投資家の体感温度としては、むしろいつもよりホットな地合いだったと言えるかもしれない。 騰落レシオやボリンジャーバンドなどテクニカル面に加え、PERなどファンダメンタルズ的にも今の全体指数は買われ過ぎのゾーンにあることは疑いがない。しかし、すべてに優先すると言われる株式需給が無双の上昇相場を演出している。マーケット関係者によると直近で個人の信用売り残が急増しているという。きょうの売買代金上位3傑のソフトバンクグループ<9984.T>、サンリオ<8136.T>、フジクラ<5803.T>などはその典型で、売りから入りたくなる気持ちはよく分かるのだが、少なくとも前日までは「全体重を乗せて売り建てたネイキッド・ショートセラーが多く、株価に想定外の浮揚力が働く格好となっていた」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。これに機関投資家の専売特許である貸株市場経由の空売りが加わることで、強力な踏み上げの土台が築かれ、ソフトバンクGやサンリオなどがピンポン玉のように跳ね上がる相場が作り出された。オプションに目を向けても4万6000円のコールと4万4500円のコールが大盛り上がりであるという。上値4万6000円の可能性に1カ月前に言及したら一笑に付されるレベルだったが、現状ではヤケに現実味を帯びている。9月12日のメジャーSQに向けて狙っている向きは多そうである。 しかし、今の相場は総論部分であれこれ考えても埒(らち)が明かない。あくまで個別戦略に意識を集中したい。投資テーマの観点では、足もと仮想通貨関連に再び流れが向いている。これまではビットコイン関連が代名詞のように物色の対象となっていたが、ここにきて一気にテーマ性を帯びているのがステーブルコインである。法定通貨や金(ゴールド)などに連動させることで価格の安定性を確保できるという点で優位性を持つ。 米国では7月にジーニアス法が成立しており、これによって金融機関や企業が活用する際、ルールが整備されたことに伴うメリットが生じている。「トランプ米政権の思惑としてはFRBが積極的な金融緩和路線に舵を切った際にドル信認の低下、いわゆるキャピタル・フライトを誘発しないようにしている面もある。ドル建てのステーブルコインをグローバルに普及させることで、ドル需要の確保を念頭に置いている」(国内投資顧問系ストラテジスト)という。そうした流れのなか、香港でも今月1日にステーブルコイン条例が施行された。そして日本も時流に乗って追随する方向を打ち出している。金融庁は今秋にも円建てステーブルコインの発行を認める方向だ。その地ならしとして、前日にはフィンテック企業のJPYC(東京都千代田区)を資金移動業に登録したことを発表した。 株式市場では関連株が一斉高に買われている。まずJPYCに出資するアステリア<3853.T>が足もとで株価を急騰させている。同社株はステーブルコインに関するデータ連携システムのパッケージソフトで先駆的存在であり、当欄でも先月下旬に取り上げていた銘柄だが、その人気素地を今週一気に開花させ連日のストップ高と気を吐いた。このほか、ユナイテッド<2497.T>が急動意、インタートレード<3747.T>はストップ高カイ気配に張り付き、電算システムホールディングス<4072.T>も一時急騰する場面があった。 このほかステーブルコイン関連としてマークしておきたい銘柄ではアイエックス・ナレッジ<9753.T>、シンプレクス・ホールディングス<4373.T>、Speee<4499.T>、シグマクシス・ホールディングス<6088.T>、インターネットイニシアティブ<3774.T>などが挙げられる。また、地銀株の一角にも思惑買いが向かう可能性がある。前日にも取り上げたじもとホールディングス<7161.T>のほか、株価に値ごろ感のある島根銀行<7150.T>、福島銀行<8562.T>などをマークしておきたい。3社いずれもSBI地銀ホールディングスが筆頭株主という点が共通項である。 あすのスケジュールでは、第9回アフリカ開発会議が22日までの日程で開催される。朝方取引開始前に6月の機械受注と7月の貿易統計が開示され、後場取引時間中に7月の主要コンビニエンスストア売上高、7月の首都圏マンション販売が発表される。また、後場取引終了後に7月の訪日外国人客数が発表される。海外では8月の中国最優遇貸出金利、7月の英消費者物価指数(CPI)のほか、ニュージーランド中銀、インドネシア中銀、スウェーデン中銀などが政策金利を発表する。米国では米20年物国債の入札が行われるほか、FOMC議事要旨(7月29~30日開催分)にマーケットの関心が高い。なお、ウォラーFRB理事の講演も予定されており、その内容に耳目が集まる。(銀) 出所:MINKABU PRESS