【植木靖男の相場展望】 ─ひと足早く買い転換したTOPIXに注目
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「ひと足早く買い転換したTOPIXに注目」 ●本格上昇に向けて胎動期間を挟むか 東京株式市場は一転して上昇基調を取り戻した感がある。日米関税交渉の合意や石破首相の退陣観測で、日経平均株価は7月24日に4万2065円の高値を示現したものの、一方で過熱感が生じ自律反落となった。しかし、その落ち込みは小さく、8月4日の3万9850円を安値に急反発に転じた。格別これといった好材料が顕在化したわけではないところがミソといえる。 この辺りを精査すると、まずこれまで常に目標としてきた米国株にやや高値警戒感が芽生え、特にNYダウに天井感すら感じられるようになった。これに伴い、投資資金が米国から逆流し始めたのではないかといった見方が浮上してきたことが背景にある。これまで長期にわたって日本から流れ出し、米国株を支えてきた資金がトランプ政策に疑いを持ち、日本株に回帰しているとの見立てである。 では、現状の株価はどう展開するのか。前回の当コラムでは夏休み(一服)を入れる可能性について触れたが、齟齬も伝わる日米関税合意がどのような形で実施されるにせよ、今後の景気に及ぼす影響は大きいはず。したがって、このまま本格上昇に転じることはなく、胎動期間としての上下動を挟むことが考えられよう。 なお、本格上昇の条件だが、やはり減税を求める野党の要求を飲んで、政府が結局ばらまき政策を取らざるを得なくなることが想定される。これはインフレの加速を意味する。 ●物色の大変化が始まる ここへきての株高は内容的には日経平均株価より一足早く TOPIX(東証株価指数)が先行している。NT倍率をみても、本年6月下旬から低下している。つまり、ハイテク株より内需株が主役となっているのだ。物色対象の大変化が生じ始めているということだ。 株価が本格的に上昇段階に入ると、不動産や金融、食品、建設、証券、設備投資関連などが主役となると考えられる。株価は当面はもみ合いが続きそうだが、そうしたなかで次の物色対象が芽を出すことになる。ここへきて久しぶりに日々の値上がり上位に不動産株が顔を出した。今までになかったことであり、注目したい。 まだ本格的な上昇期に入っていないため目立った動きはみられないが、8日時点で4連騰、なかには8連騰といった銘柄も散見される。たとえば4連騰の東京電力ホールディングス <9501> [東証P]、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]、8連騰の三井不動産 <8801> [東証P]などはいずれも内需株だ。 そして、決算発表で個別に物色されるものもあるが、感覚的には中小型株よりやや大きい銘柄に移行するのではといった、いわゆるバブル的感覚の銘柄が今後注目されていきそうだ。 今回は東京海上ホールディングス <8766> [東証P]、MonotaRO <3064> [東証P]、サンリオ <8136> [東証P]、さらに大手金融株のなかでみずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]、三菱UFJフィナンシャル・グループなどに注目したい。 それと日本製鉄 <5401> [東証P]。ようやく下値を固めつつあるようで、その動きを見極めたい銘柄だ。このほか、NTT <9432> [東証P]もいずれ人気化しそうだ。当面、値動きを注視したい。 2025年8月8日 記 株探ニュース