トランプ関税発動で出番到来、「スマートファクトリー」関連が急浮上 <株探トップ特集>

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コラム

―テクノロジー活用でコスト増に対応、さまざまな業種・業態で取り組み進む―

 米国は7日に新たな相互関税を発動し、日本からの輸入には15%の関税を課す。事前に通告されていた25%から引き下げられたとはいえ、関税率が大幅に上昇することに変わりはなく、トランプ米大統領が問題視する対日貿易赤字が縮小しなければ摩擦が再燃しかねない。慢性的な人手不足などの課題を抱える国内の製造業は、関税引き上げに伴うコスト増への対応にも迫られ、効率化ニーズが高まることは必至だ。製造業が成長を続けるためにはIoT(モノのインターネット)dの活用やデジタルトランスフォーメーション(DX)化を一段と進めることがカギとなりそうで、「スマートファクトリー(スマート工場)」関連株に目を向けてみたい。

●グローバル競争を勝ち抜くカギ

 スマートファクトリーとは、省力化や情報管理の効率化、生産性改善などを目的とし、生産設備や工作機械など、あらゆる機器や設備をネットワークに接続させた工場のこと。IoT機器によって集めたビッグデータを人工知能(AI)などで分析し、生産ラインで発生する課題の見える化とその解決を図ることができる。例えば、製造ラインの監視を自動化できれば監視業務のスタッフを他の業務にあてることができるほか、ライン全体だけでなく各工程を可視化することによって特に改善が必要な工程にピンポイントでアプローチすることが可能。また、トラブルが発生した場合でも計画を柔軟に変更できるといったメリットもある。

 国内のさまざまな業種・業態で取り組みが進んでおり、神鋼鋼線工業 <5660> [東証S]はIoT基盤の構築やMES(製造実行システム)データと連携したデータ分析環境を整備。日清製粉グループ本社 <2002> [東証P]傘下の日清製粉は岡山県倉敷市でIoT・AI・ロボットなどを駆使した工場を稼働させ、フジオーゼックス <7299> [東証S]はSmart Craft(東京都渋谷区)の製造現場DXプラットフォームを導入している。

 製造業では人の手によるアナログな作業が少なくなく、非効率な業務による長時間労働の常態化や従業員の負担増加、人手不足などが課題となっている現場が依然として数多く存在する。グローバル市場で日本企業が競争を勝ち抜くためには、スマートファクトリー化を進めて生産性・在庫回転率・歩留まり率などを改善することが不可欠で、国内製造業の成長を後押しする企業のビジネス機会は一段と広がりそうだ。

●製造業の成長を後押しする銘柄群

 直近ではマクニカホールディングス <3132> [東証P]傘下のマクニカが7月29日、独シーメンスの日本法人とソフトウェアに加えて、OT(Operational Technology:産業プラントや社会インフラなどの設備・システムを正常に稼働させるための制御・運用技術)領域のハードウェアと連携した製品・サービスの提供に関するソリューションパートナー契約を締結したと発表。これにより、両社はハードウェアとソフトウェアを連動したサイバーフィジカルシステム全体をデータ連携することで、国内製造業の変革のスピードアップを目指すという。

 ブレインズテクノロジー <4075> [東証G]は7月18日、自社が手掛けるAI異常検知ソリューション「Impulse」のAIエージェント「Impulse AI Agent Professional Services」が、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のAWS Marketplaceに新設された「AIエージェントとツール」で提供を開始したと発表。これにより、製造業をはじめとする各産業分野において、より手軽かつ迅速にAIエージェントを導入することが可能になったとしている。

 アドソル日進 <3837> [東証P]は7月17日、フューチャー <4722> [東証P]グループのフューチャーアーティザンと戦略的パートナーシップを締結したことを明らかにした。アドソル日進の強みであるOT・ITをつなぐIoT×AI技術、GIS(地理情報システム)空間情報技術、スマートファクトリー構築実績と、フューチャーアーティザンの工場現場理解力及びESG経営コンサルティング能力を融合し、製造現場のデータに基づく具体的なサステナビリティ活動を推進することで、日本社会の持続可能な発展につなげる狙いだ。

 サトー <6287> [東証P]は7月10日、自社の入出荷・在庫管理システム「IritoDe(イリトデ)設備予備品管理」が、SUBARU <7270> [東証P]の群馬製作所に導入されたと発表した。このシステムは、設備修理に必要な交換パーツの欠品をなくし、無駄なパーツの在庫数も最適化することで、棚卸などの部品確認作業に多大な工数を費やされている業務を効率化・改善するためのパッケージ商品。RFID(電波を用いて無線でデータを読み取り、モノの識別や管理を行うシステム)タグを活用することで、非接触かつ一括読み取りが可能になっている。

 JDSC <4418> [東証G]は6月25日、LIXIL <5938> [東証P]のインテリア製造拠点である福島県の須賀川工場で、工場設備の効率的なメンテナンス計画の実現に向けた設備保全支援AIアルゴリズムを構築したことを明らかにした。同社はAIとデータサイエンスの知見を活用し、データ活用型スマートファクトリー変革を支援。同工場をモデルとして、LIXILは将来的に全工場への導入を検討しているという。

 システムインテグレータ <3826> [東証S]は6月25日、米GMDHと日本国内で初の販売パートナー契約を締結し、S&OP(Sales&Operations Planning:販売事業計画)ソリューション「Streamline」の本格的な提供を開始したと発表。国内製造業に同ソリューションを提供することで、営業・製造・調達・財務部門間のシームレスな情報連携を促進し、需要と供給の最適化を実現するための戦略的意思決定を可能にする仕組みによって競争力強化を支援する考えだ。

●YEデジタル、ヴレインSなどにも注目

 このほかの関連銘柄としては、機器やセンサーのデータ収集・蓄積・分析を行うIoTプラットフォーム「MMCloud」を展開するYE DIGITAL <2354> [東証S]、さまざまな分野で改善や業務の効率化を進めるサービスやソリューションを提供するブロードリーフ <3673> [東証P]、産業オートメーション分野のIoT化を支援するイーソル <4420> [東証S]、栃木県が主催するスマートファクトリー伴走支援事業の連携パートナーに採択されているビザスク <4490> [東証G]、製造業向けIoTソリューションを手掛ける日本ラッド <4736> [東証S]など。

 また、製造現場における課題を汎用的に解決できる製品をAIプロダクトとして開発・リリースするVRAIN Solution <135A> [東証G]にも注目。7月14日に発表した26年2月期第1四半期の単独営業損益は2億2800万円の赤字(前年同期は6300万円の黒字)となったが、これは25年2月期第4四半期の売上計上を優先したことから今第1四半期の売上見込案件の進行が遅れたため。ただ、累計取引社数は前期末に比べて18社増加の251社に拡大し、受注残は同47.3%増の5億7400万円となっていることに加え、会社側では複数プロダクト・複数工場への拡大期はこれから到来するとみており、今後の巻き返しに期待したい。

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