国土強靱化の追い風続く、「建設株」は国策に乗り長期上昇波に突入 <株探トップ特集>

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コラム

―インフラ老朽化は今後加速度的に進行、「防災庁」設置方針も追い風に―

 建設関連株が市場の注目を集めている。背景にあるのは、公共インフラの老朽化による 「国土強靱化」に向けた動きだが、秋には政府による景気対策が打ち出される可能性が出ていることも追い風だ。 建設株には、バブル崩壊後の経営再建期を経て財務面で健全化した銘柄も少なくなく、バリュエーション面で依然割安な銘柄は多い。足もとで上昇基調を強める建設株だが、再評価余地は大きくその人気は長期的に続きそうだ。

●大成建は89年のバブル時最高値更新が目前に迫る

 建設株は上昇基調を強めており、東証33業種の「建設業」の年初からの上昇率は約16%を記録し過去最高値圏にある。これは日経平均株価の約2%の上昇を大きく上回る好パフォーマンスだ。市場関係者からは「建設株は老朽インフラの修復などで中長期的な追い風が見込めるセクターであり、買い安心感がある」と評価する声は強い。なかでも、足もとで高い関心を集めているのが大手ゼネコンである大成建設 <1801> [東証P]の動向だ。同社の株価はバブル期の1989年3月につけた株式併合などを考慮した実質での最高値(9950円)の更新が目前に迫っている。同社株が約36年ぶりに最高値を更新することは、バブル崩壊後に苦境に陥った建設株が完全復活を遂げた象徴として受け止められる可能性が高い。

●建設から50年以上経過する老朽インフラは加速度的に増加

 建設業界にとっての強い追い風となっているのが、いうまでもなく「国土強靱化」に向けた動きだ。政府は6月に国土強靱化の次期5カ年計画(第1次国土強靱化実施中期計画)を閣議決定。計画期間は2026年度から30年度までで、事業規模は20兆円程度と25年度までの5カ年計画よりも更に5兆円上積みされる予定だ。

 1月には 下水道管の腐食が原因とされる埼玉県八潮市の道路陥没事故が発生したことは記憶に新しい。同中期計画では例えば上下水道施設の戦略的維持管理・更新に関しては、事故発生時の社会的影響が大きい大口径下水道管路(口径2メートル以上かつ30年以上経過)の健全性確保率を30年度までに100%に引き上げることが打ち出されている。更に、「道路施設の老朽化対策」や「港湾施設の耐震・耐波性能などの強化」「流域治水対策」など幅広い対策が示された。

 とりわけ、道路やトンネル、橋梁などの耐用年数は平均40~50年程度とされており、今後、1960年代前後の高度成長期に建設された多くのインフラの修繕が必要となる。市場では「次の20年で建設から50年以上が経過する老朽インフラの割合は加速度的に高まる」(アナリスト)ことが注目されている。

●アクティビストの攻勢による株主還元強化も評価材料

 加えて、今後予想される大型地震のほか、台風、豪雨など激甚化・頻発化する自然災害に対応するためにも社会インフラの整備は一段と求められており、政府は26年度に「防災庁」を設置する方針を示している。老朽インフラ対策や減災・防災関連で活躍する建設業界は「国策」に乗るセクターであり、秋には政府が経済対策を打ち出す可能性があることも追い風に働く。

 特に、建設業界はバブル崩壊後に経営再建を進めてきた。この経営再建により、財務健全化が進む一方、株価は割安に放置されたことでアクティビストからの攻勢を受け、積極的な株主還元に転じた企業も少なくない。大手ゼネコンでいち早く最高値を更新した大林組 <1802> [東証P]もアクティビストの攻勢を受けた1社だが、建設株には増配や自社株買いなど株主還元の側面から一段の上昇が期待できる銘柄は多い。

 建設株の主力は、前出の大成建や大林組のほか、鹿島 <1812> [東証P]、清水建設 <1803> [東証P]といった大手ゼネコン、それに西松建設 <1820> [東証P]、奥村組 <1833> [東証P]、熊谷組 <1861> [東証P]など準大手ゼネコンなどだが、業界の規模は大きく依然として再評価余地がある。以下、中長期スタンスで狙える建設関連の注目銘柄を取り上げる。

●安藤ハザマ、五洋建、インフロニアなど注目

◎安藤・間 <1719> [東証P]~準大手ゼネコンで、ダムやトンネルなど大型土木に強み。前期に高採算な工事が多かった反動で26年3月期は減益予想だが、今期配当は前期比10円増の80円と3期連続増配を計画。27年3月期は増益へ。配当利回りは4.9%前後。

◎五洋建設 <1893> [東証P]~海上土木最大手。政府は防衛力強化の目的で空港や港湾などの公共インフラ拡充にも取り組んでいる。同社は前期に国内建築事業で防衛施設などの受注を獲得しており、防衛関連銘柄としても注目されている。配当利回り3.4%前後。

◎鉄建建設 <1815> [東証P]~JR東日本 <9020> [東証P]が大株主で鉄道関連工事に強み。JR東日本は今月に運賃引き上げが認可されており、今後、鉄道関連の設備投資の活発化も期待されている。今期は前期比8円の増配で年130円配当としており、配当利回りは4%近辺の水準。

◎ライト工業 <1926> [東証P]~地盤改良などに強みを持つ建設会社で、斜面の崩落・地滑り対策の法面工事などが得意。中期経営計画で28年3月期の連結営業利益155億円(25年3月期は128億円)、株主資本配当率(DOE)6.0%以上(同5.2%)を掲げている。配当利回りは3.4%前後の水準。

◎インフロニア・ホールディングス <5076> [東証P]~21年10月に前田建設工業、前田道路、前田製作所が経営統合して発足。三井住友建設 <1821> [東証P]を買収へ。26年3月期連結営業利益は前期比16.4%増の549億円と最高益見通し。配当利回りは4.6%前後。

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