石金淳氏【トランプ関税の合意相次ぐ、日経平均の最高値奪還なるか】 <相場観特集>

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コラム

―参院選後の国内政治動向には不透明感、この先に選好すべきセクターを探る―

 米国とEU(欧州連合)が関税交渉で合意した28日の日経平均株価は前週末比457円安となり、4万1000円台を維持できずに終えた。欧州系証券の投資判断引き下げで急落したアドバンテスト <6857> [東証P]が日経平均を押し下げた半面、決算を発表したファナック <6954> [東証P]は急反発したほか、自動車株は堅調だった。トランプ関税を巡る不確実性の後退を背景に、日本株は再び上昇指向を強めるのか。三菱UFJアセットマネジメントのチーフファンドマネジャー、石金淳氏にこの先の相場展望について話を聞いた。

●「相互関税15%の『現実』に視線が向かう局面に」

石金淳氏(三菱UFJアセットマネジメント チーフファンドマネジャー)

 米国市場では6月以降、半導体株が先行して上昇してきた。トランプ政権による半導体規制を巡る姿勢が想定されていたほど強硬なものではなくなるとの期待感に加え、AI関連の需要や台湾積体電路製造(TSMC)の設備投資効果なども意識された。こうしたなかで、米国の日本とEUに対する相互関税率は15%となったが、トランプ大統領が誕生する前との比較で関税率が引き上げられたことには変わりがなく、15%という水準は、相当な負担を強いるものである。実体経済に対するトランプ関税のマイナス影響が今後、クローズアップされることとなるだろう。日本株は過熱感も台頭しており、目先は調整含みとなりそうだ。

 関税を巡る不確実性が後退したことで、日銀は利上げをしやすくなる。7月の決定会合では政策金利は据え置かれるとみているが、国内のインフレ率を踏まえると政策の正常化に向かうと見込まれ、今年秋に日銀は利上げに踏み切る可能性がある。ただし0.5%から0.75%に政策金利を引き上げたとしても、水準としては依然として低く、緩和的な環境が続くことになる。利上げは日本株には若干のマイナス要因となるが、関税発動による世界経済の押し下げリスクのほうが、マーケットへのインパクトは大きい。

 米連邦準備制度理事会(FRB)については9月以降、年内1~2回の利下げが妥当なところだ。足もとではリセッションは考えにくいところではあるが、移民の流入制限による人手不足と需要の伸びの鈍化の2つの影響を米国経済が受ける恐れもある。

 もっとも、参院選を経て国内政治において財政積極化路線がみえてきたことは、日本株にはマイナスにはならないはずだ。この先の1ヵ月間の日経平均は4万円から4万2500円で推移するとみており、4万円を下回ったところは買いゾーンになると考えている。 半導体株をみると行き過ぎた感は否めず、防衛関連株を含め上昇は一服しそうだ。むしろ自動車のような、関税懸念で動きが抑えられていたセクターのほうが選好されやすい。道路の陥没事故が相次いで発生するなか、下水道関連や建設資材は関心の高い状況が続きそうだ。半導体工場が立ち上がるなかで日本国内では電力が不足するリスクが指摘されており、電力設備投資関連も要注目となる。

(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(いしがね・きよし)
1988年慶応義塾大学卒業、ユニバーサル証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。2000年にパートナーズ投信(現三菱UFJアセットマネジメント)転籍。16年12月より現職。


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