【植木靖男の相場展望】 ─財政拡張政策ならインフレ相場へ

投稿:

コラム

「財政拡張政策ならインフレ相場へ」

●米関税を克服する対策を打ち出せるか

 日米関税政策が待ちに待った決着をみた。さらには石破首相の退陣観測報道もあり、日経平均株価はこれらを好感して7月23日に大幅上昇。チャート的にも目先は買い転換した。

 これまで専門家の間では年内はせいぜい4万円を挟んで上下1000~2000円との見方が大勢であった。だが、早くも7月中に4万円を達成してしまったのだ。かねて専門家の予想が一点に集中すれば結果はそうなることはなく、その水準を大きく上回るか、あるいは届かずに終わると述べてきたが、今回も典型的なパターンとなる可能性が出てきた。

 日米通商協議の行方が最大の懸念材料となっていたが、その中身はともかく一応の決着をみたことで、株価が大転換したことは当然といえよう。

 だが、問題はこれからだ。今後、日本経済はどう展開するのか。関税引き上げの影響は少なからず日本経済にダメージを与えることは必至だ。

 したがって、それを克服し得る経済対策の登場が待たれるところだ。だが、現在の政局を鑑みると、対策は秋の補正予算で、との見方が強い。それでは遅すぎるのではないか。政治的空白が7~9月に生じてしまう。

 株式市場からみると、株価は8月の夏休みもあり、8~9月に一服する可能性も考えざるを得ない。幸い、米国株価は緩慢な動きながら高値圏を維持している。当面、すぐに大きく値を崩すことはなさそうだ。

 だとすると、日本株も大きく下げるとは思えない。だが、夏休みを入れる可能性はありそうだ。そして9月頃から再スタートするのではなかろうか。政治的な空白を経て秋に打ち出される景気対策は、誰の手によるにしても、市場が驚くような内容であることが必要だ。少数与党を前提とすれば、補正予算はかなり財政拡張的にならざるを得ない。

 かくなる状況では、インフレは一段と進むことになる。まれにみる酷暑を踏まえると、食料品価格は予想外の高値になる公算もあろう。大正の米騒動を参考にすべきかもしれない。当時、株価はいったん収まった後に再び火を噴いたことを忘れてはならない。

●好業績期待株の一本釣りが展開か

 さて、こうした情勢下では当面の物色対象をどうみたらよいのか。いずれ平成バブルのときと同じインフレ相場が到来する可能性があるが、これまで同様、テーマを中心とした好業績期待銘柄の一本釣りとみてよさそうだ。

 テーマは、 ①半導体関連、 ②データセンター関連、 ③造船関連、 ④防衛関連、⑤金融関連などが、順次交差しつつ物色される展開を予想する。よって、注目する銘柄は常に同じような顔ぶれのものが交代で買われることになろう。

 たとえば①半導体関連ならアドバンテスト <6857> [東証P]、②データセンター関連では古河電気工業 <5801> [東証P]、③造船関連なら三井E&S <7003> [東証P]、④防衛関連では川崎重工業 <7012> [東証P]、⑤金融関連であれば三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]、東京海上ホールディングス <8766> [東証P]といったあまり面白くもない銘柄だが、これらがその都度交代しながら水準を切り上げる展開となりそうだ。

 目先的にはFOOD & LIFE COMPANIES <3563> [東証P]だ。ファーストリテイリング <9983> [東証P]の初期の上昇段階に似ている。住友不動産 <8830> [東証P]は底固めが続いている。いつ上昇に転じてもおかしくない。東京ガス <9531> [東証P]は5000円台を固められるか。

 また、日本製鉄 <5401> [東証P]はまだ地ならしの段階。いずれ世界から注目されるのではないか。

2025年7月25日 記

株探ニュース

オンラインで簡単。
まずは無料で口座開設

松井証券ならオンラインで申し込みが完結します。
署名・捺印・書類の郵送は不要です。