馬渕治好氏【参院選通過、自公過半数割れと米関税交渉の読み筋】 <相場観特集>
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―トランプ関税への警戒感拭えず、目先は下値リスクも意識― 22日の東京株式市場では朝方は思わぬ買い優勢の展開となり、日経平均株価は先物を絡め急発進、一時450円あまりの上昇で4万円大台を回復した。しかし、その後は上値が重く、急速に上げ幅を縮小し後場の取引でマイナス圏に沈んだ。トランプ米政権の打ち出す関税政策に対する先行き不透明感が拭えないなか、投資家のセンチメントも不安定な状況に置かれている。8月にかけてサマーラリーは期待できるのか、それとも夏枯れ相場の様相を呈するのか。マクロ面からの視線でマーケットの展望を読むブーケ・ド・フルーレットの馬渕治好氏に今後の東京市場の見通しについて語ってもらった。 ●「上値重く3万8000円近辺まで下値試す展開も」 馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表) 参院選の結果は自民党と公明両党の議席数を合わせて47議席にとどまり、非改選議席と合わせて過半数割れとなったが、これについては事前に織り込まれていたとみてよさそうだ。もっとも、きょうの東京市場では目先は悲観的な見方を示していた投資家の買い戻しを誘発する場面もあったが、結局買いは続かなかった。冷静に考えて、今回の参院選の結果は株式市場にとって少なくともポジティブ材料ではなく、政局に対する思惑から中期的には株価に下押し圧力が働きやすい。 当面はトランプ米政権との関税交渉に投資家の視線が向かうことになるが、おそらく日本側の思惑通りにはいかない形が想定される。8月1日が期限として区切られているものの結果的には何も決まらず、実質的に交渉が継続する格好となりそうだ。当面の日経平均のレンジとしては、上値は終値で4万円を回復する場面はあっても4万1000円台には届かず、4万円トビ台で頭打ちとなるような展開を予想する。一方、下値もそれほど大きく売り込まれるような局面は想定しにくいが、3万8000円近辺を下限ラインとみておきたい。個別にみていくと企業の決算発表は決して悪くない状況にあり、これがファンダメンタルズ面から全体指数を下支えしそうだ。 米国経済については今後関税の影響で悪化する可能性が高く、そのため外国為替市場では中期的にドル安・円高方向に振れやすい。自動車や半導体など輸出セクターは関税による収益デメリットと円高の逆風から見送りが基本であろう。悲観ムードが強まり深押しした場面ではリバウンド期待で買い向かうことは可能だが、目先の物色人気に追随して上値に飛びつくような投資は避けたい。やはり投資対象としては、こうした外部環境の影響が及びにくい内需株に優位性がありそうだ。小売りや外食などのセクターのほか、コンテンツ関連(IP関連)などにも目を向けておきたい。 当面、日経平均は上値が重そうだが、もう少し長い目で見れば年末に向けて強調展開が見込めると考えている。したがって、今は押し目買いを前提に、日経平均やTOPIXの下値形成場面では、好実態の銘柄を丁寧に拾っていくスタンスで臨みたい。 (聞き手・中村潤一) <プロフィール>(まぶち・はるよし) 1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。個人投資家などに向けてセミナー講演を活発に行っている。セミナーのスケジュールは「ブーケ・ド・フルーレット」のホームページ参照。 株探ニュース