いざ「現実買い」の舞台へ、AI搭載で進化加速「業務用清掃ロボ」関連 <株探トップ特集>

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コラム

―人手不足や急激な人件費高騰追い風にビッグビジネスへの変貌を先取れ―

 サービスロボット関連株が、ここ「理想買い」から「現実買い」への道程を快走している。配膳ロボがファミレスなどで人間と協働するシーンは身近なだけに目に留まる機会も多いが、ここでは業務用の清掃分野における ロボットの目覚ましい進歩に注目したい。背景には、人手不足や人件費の高騰があり、社会的要請も市場の急拡大を後押ししている。また、こうした自律走行ロボがAIを搭載したことで利便性も格段に向上し、ユーザーのニーズを捉えた格好だ。現実買いに突入し、ビッグビジネスへと変貌する「業務用清掃ロボ 」関連株を改めて点検した。

●急速に存在感を高める

 人手不足の問題が言われて久しいが、ここにきて一段と深刻の度合いを増している。もはや、企業の存続にかかわる事態に、あすはわが身と戦々恐々とする経営者も少なくない。東京商工リサーチは7日、「2025年上半期(1~6月)の『人手不足』が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同期比17.8%増)に達した」と発表。「今後も、人手不足関連倒産は増勢をたどることが懸念される」としている。

 こうした状況を追い風に、皮肉にも活躍期待が高まっているのが、いわゆる「サービスロボ」だ。レストランチェーンなどで、かいがいしく働く姿を見ることが多くなった「配膳ロボ」をはじめとして、「警備ロボ」や「デリバリーロボ」などが注目を集めるが、なかでも急速に存在感を高めているのが「業務用清掃ロボ」だ。

●注目集める倉元の動向

 株式市場においても業務用清掃ロボへの関心は高い。6月23日の取引終了後に倉元製作所 <5216> [東証S]が、100%子会社のアイウイズロボティクスが販売する販促機能搭載の室内業務用清掃ロボ「J30S」について、ファミリーマートへの導入台数が累計で1100店舗となる見込みとなったことを発表した。翌日には株価が急伸、一時53円高の259円まで買われる人気ぶりとなった。その後は利益確定売りに下押すものの、ここ調整一巡感もあり230円近辺で頑強展開となっている。同月30日には、J30Sがローソンに1号機が導入されたと発表。同社では、販促機能を搭載することで単なる清掃業務にとどまらず、清掃ロボと広告配信機能を組み合わせた新しいマーケティング手法を提案していく方針だ。新しいニーズを獲得し、活躍領域を広げているだけに目が離せない展開が続きそうだ。

●デベロッパーも導入前向きに

 市場調査会社の富士経済が発表した「2025年版 自律走行ロボットポテンシャル分析」でも「人手不足を背景に業務用清掃ロボと配膳ロボの導入が進んでいる」としており、市場の拡大を予測する。業務用清掃ロボについては「23年頃より製品認知度や受容性が高まり、ビルメンテナンス企業に加え、人手不足や人件費の高騰に危機感を抱くデベロッパーも導入に前向きになっている」と分析。「エレベーター連携のための費用が低価格化しつつあり、今後は夜間にエレベーター連携を行い、複数フロアをロボットのみで清掃する事例も増える」とみている。

 清掃ロボを扱う関連企業でも「かつては痒(かゆ)い所に手が届かないという印象だったが、いまはきめの細かい清掃ができるようになってきた。清掃ロボを活用することで、頭を悩ましていた人員シフトが軽減されるところも評価されているようだ」と話す。AI搭載で更に利便性を増す業務用清掃ロボだが、少子高齢化が加速するなか、いよいよ飛躍期を迎えている。

●リードするアマノ

 アマノ <6436> [東証P]は勤怠管理システム大手で、駐車場や駐輪場などパーキング事業でも成長ロードを快走するが、清掃ロボ分野においてもリードしている。クリーンシステムでは、業務用清掃ロボの更なる拡販により業績伸長を見込む。同社は、14年に初のロボット洗浄機を発売し、国内初となる本格的な業務用清掃ロボの事業展開を開始しており、実績も十分だ。小型床洗浄ロボ「HAPiiBOT(ハピボット)」は、AIによる高度な自律走行を実現し精密な清掃を行う。また、専用クラウドサービスで、ロボットの稼働状況の確認や清掃ルートの変更がパソコンやスマートフォンで可能だ。26年3月期連結営業利益は、前期比6.3%増の245億円を計画し3期連続の最高益更新を見込む。

●活躍素地大きい日本信号

 鉄道・交通信号大手の日本信号 <6741> [東証P]は、新たな成長分野として清掃ロボにも注力している。同社の得意分野であるセンサー技術を最大限に生かすことで、安全かつ誰でも簡単に扱える自動床清掃ロボ「CLINABO(クリナボ)」を展開。20年に山手線で約半世紀ぶりの開業となった高輪ゲートウェイ駅でも清掃に従事している。また、広範囲を高速で清掃し、カーペットやフローリングなどに最適な次世代自動床吸じんロボ「CLINABO CL02」も手掛けている。信号大手として、顧客に多くの鉄道会社を抱えるだけに今後の活躍素地は大きいといえそうだ。同社の26年3月期連結営業利益は、前期比0.9%増と微増ながらも、100億円大台乗せを予想し連続での最高益更新を計画している。

●オムロンは複合型で攻勢

 制御機器大手のオムロン <6645> [東証P]は、巡回清掃、巡回警備、コンテンツ配信機能(施設案内やプロモーションなど)といった3つの機能を持つ複合型サービスロボ「Toritoss(トリトス)」を手掛ける。複数の機能を複合的に使用することで、24時間稼働し営業時間中でも安心して効率的に人手不足を解消できる。清掃機能は、設定したルートに従い障害物を自動で回避しながら除じん清掃を実施し、充電も自動で行う。幅広い分野で人手不足が顕在化するなか、顧客ニーズを捉えそうだ。米関税政策の影響が不透明なため業績予想はレンジで開示しており、26年3月期連結営業利益は、前期比3.6~20.3%増の560億~650億円を予想。株価は、先週7日に3503円まで売られ年初来安値を更新。“トランプ関税”の行方が大詰めを迎えており様子見姿勢は強いが、株価は安値をつけたところで“コツン”ときたムードも。

●セック、自律移動型ロボを一括管理

 今後は幅広い施設において、さまざまな種類のロボットを複数台稼働させる状況が想定され、ロボットプラットフォームの導入が進展することも予想されている。宇宙分野やコンピューティング分野で存在感を示すセック <3741> [東証P]だが、さまざまな種類の自律移動型ロボを一括管理するためのソフトウェア「RTakt(アールタクト)」を展開。RTaktは、特定のメーカーやクラウドサービスに依存することなく、異なるメーカー・異なる用途(例えば清掃ロボや配膳ロボ、搬送ロボなど)の自律移動型ロボを一括管理・運用することが容易になる。また、どのメーカー・用途のロボットも同じ操作手順で運用できることで、ロボットを運用する現場のスタッフの負担が減少するという。幅広い分野の施設でさまざまな種類のロボットと協働しやすい環境が求められるなか、今後活躍の舞台を大きく広げそうだ。同社の26年3月期の単独営業利益は、前期比2.6%増の18億4000万円を計画しピーク利益更新が続く見通しにある。

●ブルーイノベ、サイバダインにも活躍期待

 ドローン関連として株式市場でも熱い視線が注がれるブルーイノベーション <5597> [東証G]にも目を向けてみたい。同社は、ネクストソリューションとしてオフィス向けロボット清掃の分野にも活躍領域を見いだそうとしている。昨年1月には、既存システム・アプリと接続し、異機種・複数の掃除ロボを一元管理・制御可能な「BEPクリーン|API」の提供を開始したと発表。自動清掃に対する要望の高まりを受け、ビル管理システムや他の業務ロボットなどと連携し、清掃業務を自動化・無人化し、スマートオフィスの実現を目指す。25年12月期の営業損益(単独)は3億3300万円の赤字(前の期は3億9800円の赤字)と赤字幅の縮小を計画している。

 また、CYBERDYNE <7779> [東証G]は装着型のロボットスーツ「HAL」を手掛けるが、清掃ロボ分野にも傾注している。同社の次世代型清掃ロボ「CL02」は、高速自律走行を実現し、1回の充電で最大3000平方メートルを自在に走行し清掃を行う。更に、エレベーターの自動昇降も可能で、大規模施設においてもロボットが全フロアを自動清掃できるという。また、モビリティ用途を拡張して、工場内での搬送ロボとしても稼働している。ゼネコンなどと協力してオフィスビルを中心に導入を進めており、25年3月末時点で178台が稼働中だという。25年3月期の連結営業損益は9億2600万円の赤字(前の期は20億1800万円の赤字)に赤字幅が縮小。なお、26年3月期の業績見通しは開示していない。

●清掃のプロ・ダスキンは正規販売代理店

 清掃用具レンタルが主力で、「ミスタードーナツ」をフランチャイズ展開するダスキン <4665> [東証P]も関連株の一角として目を配っておきたい。同社は、サービスロボ大手ソフトバンクロボティクス(東京都港区)の業務用清掃ロボ「Whiz」正規販売代理店であるとともに、アイリスオーヤマ(仙台市青葉区)が販売する清掃機能を高めた後継機種のDX清掃ロボ「Whiz i アイリスエディション」の同代理店もつとめる。革新的ナビゲーションで清掃のカタチを進化させるが、ポイントは清掃のプロ・ダスキンならではの充実のサポート体制だ。使用開始から運用の定着まで支援し、毎月1回は保守点検・メンテナンスを実施する。26年3月期の連結営業利益は、前期比8.7%増の79億円を予想している。

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