窪田朋一郎氏【鳴かず飛ばずの7月相場、東京市場の近未来図】 <相場観特集>
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―トランプ関税の行方と今後のリスク要因を見極める― 14日の東京株式市場は日経平均株価が軟調に推移したものの、下値では出遅れた向きの押し目買いが観測され、前週末終値近辺で比較的底堅い動きをみせた。ただ、値動きははっきりしない。後場は日経平均、TOPIXともにプラス圏で推移する場面もあったが、取引終盤に売り圧力が強まり結局マイナス圏で着地している。7月に入ってから日経平均は鳴かず飛ばずの状況となっているが、ここから一段の調整があるのか。それともここは買い場といえるのか。松井証券のシニアマーケットアナリストで個人投資家事情にも詳しい窪田朋一郎氏に今後の東京市場の展望と物色の方向性などについて意見を聞いた。 ●「目先強調ながら7月後半以降は深押しリスクも」 窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト) 週明けの東京市場では日経平均は軟調気味に推移し、結局TOPIXと共にマイナス圏で着地したが、下値に対して抵抗力も発揮し底堅い動きを維持した。目先強気相場が維持されているようにも見えるが、今月後半以降は買い手控えムードがにわかに高まりそうだ。トランプ関税問題については依然不透明感が強く、相場の波乱要因として当面は火種が尽きないとみている。 直近でトランプ米大統領は欧州連合(EU)に対し30%の関税を8月1日から賦課することを表明したが、マーケットのネガティブな反応も限定的なものにとどまった。しかし、これはある意味危険な要素もはらむ。トランプ米政権は、政策を打ち出す際に市場動向を気にしていることは明らか。相互関税の発動が嫌気された4月の世界的な株価崩落局面でも、その後はベッセント財務長官などが火消しに動き、何とか持ち直した経緯がある。このころを境に「TACOトレード」が話題になり始めたが、見方によってはマーケットがクラッシュするような大きな動揺を示さなければ、トランプ氏は関税政策を緩めるようなことはしない可能性がある。 今の状況は、マーケット側も「トランプ氏が前言を翻すだろう」という思惑から冷静な反応をみせているが、やや楽観的に織り込み過ぎてしまっているきらいもある。結果として、トランプ氏が関税政策において強硬姿勢を貫いた場合、株式市場でもタイムラグをおいて売り圧力が一気に強まるようなケースを警戒しなければならない。また、直近相次いで発表された経済に関する指標が思った以上に強く、これによってトランプ氏が関税によるデメリットを恐れるに足らずとみなす可能性がある。例えばアマゾンのプライムデーセールの売り上げが前年比30%伸びるなど絶好調に推移しているように見えるが、これは消費者が企業に在庫分があるうちに前倒しで物品を購入する動きが反映されているに過ぎず、早晩その反動が出るケースなども考えられる。更にハト派になびかないパウエルFRB議長の解任説が再びくすぶり始めており、仮にこれもクローズアップされてきた際には、FRBに対する信認失墜から全体相場の波乱につながることが想定される。 向こう1ヵ月の日経平均のレンジとしては、まず上値については足もとで強調相場が続いた場合、7月中旬までに4万円台に乗せる可能性があるが、そこは当面の天井とにらんでいる。他方、下値メドは3万6000円前後を想定しており、FRB人事問題が表面化した際にはそこを更に下抜ける状況に遭遇することもあり得るとみている。個別では食品セクターなどディフェンシブ関連が相対的に強みを発揮しそうで、味の素 <2802> [東証P]、JT <2914> [東証P]などに着目。このほか、三菱地所 <8802> [東証P]などの不動産株もマークしておきたい。半導体や防衛関連は追撃買いを控え、しばらく様子をみたいところだ。 (聞き手・中村潤一) <プロフィール>(くぼた・ともいちろう) 松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「グロース市場信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」など、これまでにない独自の投資指標を開発。また、投資メディア部長としてYouTubeチャンネルやオウンドメディア「マネーサテライト」を運営。 株探ニュース