明日の株式相場に向けて=下水道クライシスで動き出す国策銘柄
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きょう(10日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比174円安の3万9646円と反落。今週8日に続いて、きょうはETF分配金捻出のための換金売りが発生する日として警戒する動きがあったが、結局下げ幅としては日経平均にして0.5%未満、TOPIXベースでも0.5%台にとどまっており、正直大したことはなかったというのがイベント通過後の印象である。金額的にTOPIXで8300億円、日経225で1000億円、合計9000億円強の売り圧力が指摘されていた。「1日で9000億円強」という部分だけ切り取ると大変な売り圧力に思えるが、実際はこれに先立ったヘッジ目的やイベントドリブンによる利ザヤを狙ったショートポジションの手仕舞い、つまり買い戻しの動きが生じることで相殺される部分が大きい。このETFの分配金捻出は毎年7月の恒例行事ともなっているが、身構えてはいても結局は予定調和という形に落ち着くケースが多いようだ。 とはいえ、7月中旬以降は日柄的に注意が必要な相場環境ともいえる。自動車やハイテクなどトランプ関税に一喜一憂する外需系銘柄には、不安定な相場環境がしばらく続く可能性がある。半導体関連の主力どころも少々気迷いモードで、ここにきて輝きを取り戻し時価総額膨張が続くエヌビディア<NVDA>を横目に、今一つ勢いが感じられなくなってきている。エヌビディア関連の最右翼であるアドバンテスト<6857.T>は何とか追随しているが、一方で東京エレクトロン<8035.T>などの上値の重さが気になるところ。他方、防衛関連株の動きも目先陰りが出てきた。防衛予算増強の動きは中期的に不可避で、三菱重工業<7011.T>を筆頭とする“リアル防衛関連”へのテーマ買いの流れ自体は退潮することはないが、目先は買い疲れ感から株価も休養局面に入っているようだ。 では内需セクターはどうか。最近はインバウンドのテーマが投資マネーを誘引しにくくなっているとはいえ、トランプ米大統領のSNS砲で右往左往することのない点は内需系銘柄のアドバンテージといえる。実際、防衛や半導体関連など花形セクターの陰に隠れてはいるが、国策として意識されるテーマには、波が打ち寄せるように投資マネーの攻勢が連綿と続いている。その代表的なものが下水道関連だ。国土強靱化はかなり以前から国策として株式市場でも認知されているが、優先順位というものがやはり存在していて、そのなか、待ったなしといえるのが下水道インフラの点検及び予防保全への取り組みである。 今年1月に埼玉県八潮市で起きた下水道管腐食が原因とされる大規模な道路陥没事故は、国家主導で早急に対応しなければならない社会問題を想起させた。時計の針を戻すと今年1月28日に陥没事故が起こり、翌29日には橘官房副長官が記者会見を行い、国土交通省が全国の下水道管理者に緊急点検を要請したことが報じられたが、それも当然で事が起こってからでは遅いのである。最近では今月5日に、大阪市東淀川区の交差点で道路一帯が冠水する事故が発生したが、これも地中の工業用水道管が破損して水が漏れたことが原因となっている。また、先月下旬には鎌倉市で水道管の主管と支管をつなぐ継ぎ手が外れ道路が冠水しただけでなく、約1万戸が断水する事態となった。全国で道路から間欠泉のように噴き上げる事例が相次いでいるが、その延長線には八潮市のような道路の崩落という最悪のシナリオが横たわっている。既に耐用年数を超過している管路は全国で380キロメートルに及ぶとされ、しかもその規模は今後20年間で何と12倍に膨らむという。 更に季節的な要因も危機感を煽っている。地球温暖化の影響を意識させる異常ともいえる気温の上昇が日本列島を襲っているが、「気温の急上昇に伴い老朽化した水道管が膨張し破裂するケースが今後増える可能性がある」(証券系ストラテジスト)という指摘もあり、これも関連銘柄の株価を刺激する。人間の思惑でコントロールできない自然現象が絡むテーマに対してはマーケットの反応も増幅される傾向が強い。 下水道関連では、出来高流動性が高く投資マネーのターゲットとして最も存在感を示しているのが日本ヒューム<5262.T>。このほか、株価妙味に富む銘柄として注目しておきたいのが、マンホールやライン導水ブロックで実績の高いイトーヨーギョー<5287.T>でPERとPBRなどの投資指標面からも水準訂正余地が大きい。このほか、上下水道工事を強みとし株価に値ごろ感のある大盛工業<1844.T>や、水道用鋳鉄管を主力展開する日本鋳鉄管<5612.T>などをマークしてみたい。 あすは株価指数オプション7月物特別清算指数(オプションSQ)算出日にあたる。このほか、3カ月物国庫短期証券の入札が予定され、午後3時に6月の投信概況が投資信託協会から開示される。なお、個別企業では良品計画<7453.T>の24年9月~25年5月期決算にマーケットの関心が集まる。海外では、6月の米財政収支が発表される。(銀) 出所:MINKABU PRESS