トラック輸送の需給バランス懸念解消へ、「物流DX」関連に再評価機運<株探トップ特集>

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コラム

―現実味を帯びる物流クライシス、効率化で課題に挑む企業の商機拡大へ―

 日本郵政 <6178> [東証P]傘下の日本郵便が配達員の点呼を適切に行っていなかった問題で、国土交通省関東運輸局は6月25日付で一般貨物自動車運送事業の許可を取り消す行政処分を下した。同社は今後5年間、事業許可の再取得ができず、集荷などを担う約2500台(全国約330局の郵便局で使用)のトラックやバンが使えない。また、同省は軽自動車を使った事業について早急な対策を求める安全確保命令も出しており、命令に反した場合は更に厳しい行政処分が科される可能性もある。顕在化している 物流逼迫が一段と深刻化する恐れがあり、効率化や最適化のニーズが高まりそうだ。

●直面する2030年問題

 トラックドライバーに働き方改革関連法が適用された2024年4月以降、輸送能力の不足が懸念される状況が続いている。NIPPON EXPRESS ホールディングス <9147> [東証P]グループのNX総合研究所によると、24年度の国内貨物の総輸送量は前の年度に比べて1.4%減と極端な輸送低下には至らなかったが、今後は労働人口の減少に伴いドライバー不足がより顕著になる見通し。内閣府の25年版「高齢社会白書」では30年に総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が30%を超えると試算されており、いわゆる「2030年問題」による輸送能力の低下が危惧されている。

 物流の混乱を回避するためには、荷主企業や物流業者、消費者が一体となって取り組んでいくことが必要となる。そのひとつが複数の荷主が荷物を同じトラックに積み込む共同配送で、直近ではあらた <2733> [東証P]とPALTAC <8283> [東証P]が西関東エリアで開始したほか、artience <4634> [東証P]グループの東洋インキとDIC <4631> [東証P]グループのDICグラフィックス、サカタインクス <4633> [東証P]の3社は11月から首都圏で始めることを明らかにしている。ただ、労働集約型産業である物流は労働生産性が低いといった課題があり、人工知能(AI)などの先端技術を活用した効率化が求められている。

●物流混乱を阻止する銘柄群

 ハンモック <173A> [東証G]は、受注業務や請求業務など、さまざまな業務で発生する書類のデータ化と、人による確認・修正作業をセットで提供するサービス「WOZE(ウォーゼ)」を展開。3日にはトヨタモビリティパーツ茨城支社の仕入供給グループ(水戸市)に導入されたと発表している。

 セイノーホールディングス <9076> [東証P]グループのハコベルは8日、配車計画支援システム「ハコベル配車計画」に定期配送・固定ルート組支援機能を搭載したと発表。また、6月25日には自社のトラック予約/受付サービス「トラック簿」と、traevo(東京都港区)の車両動態管理プラットフォーム「traevo Platform」との連携を開始し、荷待ち・荷役作業時間のより精緻な把握ができるようになった。

 AZ-COM丸和ホールディングス <9090> [東証P]と子会社のジャパンクイックサービス、GO(東京都港区)は共同で、ラストワンマイル物流のDX推進に向けて1日付で新会社「MOMO A(モモエース)」を設立した。タクシーアプリを展開するGOのテクノロジーと、AZ丸和HDの営業力やサービス力を結集し、これまでにない付加価値を提供するという。

 ウイングアーク1st <4432> [東証P]は、クラウド配車業務プラットフォーム「IKZO Online」が、未契約の協力運送会社のドライバーにも利用できるよう機能強化を図り、6月11日から提供を開始。多重下請構造を貫く企業間のデータ連携で、荷主がドライバーの荷待ち・荷役時間までを把握できるとしている。

 鴻池運輸 <9025> [東証P]は5月29日、データの力で物流の課題を解決するHacobu(東京都港区)に出資したことを明らかにした。同社は協業を通じて、デジタル基盤の強化や新サービスやそれらを統合したソリューションの共創などにより、現場起点の変革を加速させる構えだ。

 このほか、流通BMS(Business Message Standards)を主体としたEDI(電子データ変換)などの卸売業向けサービスをクラウド型で提供しているサイバーリンクス <3683> [東証S]、クラウド型車両管理システムなどを手掛けるスマートドライブ <5137> [東証G]、車両入退管理サービス「FLOWVIS(フロービス)」を展開する古野電気 <6814> [東証P]、物流DXを推進する独自のバース予約管理システム(物流拠点におけるトラックの入出庫を最適化するシステム)の開発に着手しているINTLOOP <9556> [東証G]なども見逃せない。

●ロジザード、関通なども注目

 物流業務は改善すべき余地が多く残されており、そのひとつが倉庫業務だ。例えば、材料や製品が倉庫に入庫してから出庫するまでを管理できるシステム「WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)」を導入すれば倉庫業務の負担を軽減することができるため、更なる需要拡大が期待される。

 関通 <9326> [東証G]は4日、自社のEC事業者向け物流代行サービス「GAOW(ガオウ)」の独自開発WMSが、Hamee <3134> [東証S]子会社のNE(エヌイー)が手掛けるクラウド型のECプラットフォーム「ネクストエンジン」とのAPI連携を開始したと発表。また、1日からは次世代SaaS型倉庫管理システム「BRAIN AEGIS(ブレインイージス)」の提供を開始している。

 ロジザード <4391> [東証G]はクラウドWMS「ロジザードZERO」を手掛けており、現在1800を超える物流現場で稼働中。3日にはピー・シー・エー <9629> [東証P]のクラウド業務ソフト「PCAクラウド 商魂・商管」とのAPIによるシステム連携を開始したと発表しており、これにより二重入力の作業削減、在庫の正確な把握、業務の効率化が可能となった。

 東計電算 <4746> [東証S]はドラッグストア向けWMSパッケージや、アパレル特化型WMSパッケージなどを展開している。5月には荷物の保管や輸送に使用されるパレットの管理ソリューション「PACSPLUS Smart AI」をリリース。現場の負担を最小限に抑えながら、業務効率化と精度の高い在庫管理を実現できるという。

 YE DIGITAL <2354> [東証S]は、倉庫内業務をWMSから分離し、自動化設備導入のたびに発生するWMS改修を最小限にする倉庫自動化システム「MMLogiStation」を提供。直近では作業効率などの向上につながる各種オプションを相次いでリリースしている。

 これ以外では、仕分けシステムやパレットシャトルなどを扱うトーヨーカネツ <6369> [東証P]、マテハン(マテリアルハンドリングの略で、物流業務を効率化・自動化するために使用する機械の総称)ソリューションを提供する椿本チエイン <6371> [東証P]、自動倉庫システムや無人搬送車などを展開するダイフク <6383> [東証P]、クラウド型パレット管理システムを取り扱うユーピーアール <7065> [東証S]、グループ会社が無人搬送車を手掛ける田中精密工業 <7218> [東証S]、ロボットやマテハンシステムの活用で倉庫のフィジカルを強化するオカムラ <7994> [東証P]などが関連銘柄として挙げられる。

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