スポーツ分野に参入も、新市場を開拓期待「パワーアシストスーツ」関連6選 <株探トップ特集>

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コラム

―シニア層の運動にも適用可能、中国スタートアップ企業など新製品を開発―

 「人の力を拡張する技術」は既に現実のものとなった。例えば、ChatGPTをはじめとした人工知能(AI)は使い方次第では、使いこなしている人の生産性は数倍から数十倍になっているだろう。その一方、超少子高齢社会に突入して久しい日本では、人手不足が深刻化すると同時に、建設や介護、流通などの業界では作業者の労働軽減が課題となっている。そんな課題の解決策の一つとみられているのが装着することで重労働による身体への負担を軽減する「パワーアシストスーツ」だ。作業現場などでの活用が進められているが、いまや登山などスポーツや運動の支援ツールとして用いる動きも見られており、今後市場が拡大していく可能性がある。

●登山やハイキングなどで活躍期待も

 中国の山東省に「泰山」という山がある。標高は1545メートルと高さでは決して他を圧倒するような山ではないが、道教の聖地として知られており、世界遺産にも登録されている。この泰山には、日々多くの人々が観光に訪れている。ここで登山など新たな観光支援ツールの地位を確立しつつあるのが「パワーアシストスーツ」なのだ。同スーツを着用することで、実に40%程度もの登山時間短縮が実現されているようだ。

 これまで医療・介護や、工場、物流などの現場で活用されてきたパワーアシストスーツだが、同スーツを活用することで体力や足腰に自信がなくなった中高年にも登山やハイキング、サイクリング、ランニングといったスポーツや運動ができるようになる可能性が出ている。中国での動向が注目を集めているが、その関心は日本でも高まっている。例えば、6月に開催された「東京アウトドアショー2025」では、世界最大級のテクノロジー見本市である米「CES」で受賞実績のある中国・上海のスタートアップ企業Hypershellが手掛けるパワーアシストスーツ「Hypershell X」が披露されて話題を集めた。パワーアシストスーツの新市場への適用に向けては、耐久性や製造コストなどで本格的な普及にはなお課題も残されているが、その潜在市場は大きく今後の展開に向けて期待が膨らんでいる。

●椿本チは大阪・関西万博で「着るロボット」を出展

 また、現在開催中の大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」では椿本チエイン <6371> [東証P]がアシストスーツからの着想を更に発展させた「ロボティクスウェア(着るロボット)」を出展している。「T’s Exoskeleton」というブース名で、「着るロボット」を作るテーラー(仕立て屋)をイメージしている。2050年、ロボットは衣類のように「着る」ことが可能となり、誰もが自由に空を飛んで移動し、重いモノも軽々と持ち上げられるという世界を描いている。

 医療用装着型サイボーグHALを手掛けるCYBERDYNE <7779> [東証G]でも、HAL腰タイプ作業支援用などを手掛けている。長寿命化に伴う高齢者活躍などに向けてもパワーアシストスーツの市場開拓の動きは、今後、更に進んでいくだろう。以下では作業支援に向けたパワーアシストスーツを手掛ける企業の動きを紹介する。

●ワークマンや朝日インテク、クラボウなど

 ワークマン <7564> [東証S]~背筋使用率を38%以上軽減させる全身アシストパワースーツを販売している。背筋の使用率を軽減することで、作業の持続性がアップするほか、ベルトが伸張、収縮する力を補助に荷物を軽く持ち上げることができ、ベルトによって骨盤が安定し正しい姿勢で動くことで身体にかかる負担が軽減される。同社は23年2月に「快適ワーク研究所」を設立しており、健康労働を推進するギアを開発している。

 朝日インテック <7747> [東証P]~医療機器分野における自社ブランド製品・OEM供給品を手掛けるメディカル事業と、医療機器・産業機器分野における部材を開発・製造するデバイス事業を展開している。同社のアシストスーツの特徴はワイヤーロープの技術とゼンマイバネを組み合わせた無電力ユニットで、左右のパワーユニットが独立しているため自由度が高く、中腰作業への負担軽減を実現した。

 クラボウ <3106> [東証P]~パンツ一体型アシストスーツ「CONDITIONING BRACE WEAR(CBW)」を手掛けている。背中と腰のサポーターパーツで、荷物の持ち上げ動作や、長時間に及ぶ前かがみ姿勢における作業姿勢のサポートと、動きやすさを両立したパンツ一体型の着るアシストスーツとなる。

 ミズノ <8022> [東証P]~スポーツで培った技術を応用し、作業用のウェア・シューズや装備品、スニーカー、普段着、寝具などの生活関連品も手掛ける。「MIZUNO POWER ASSIST SUIT」はウェアタイプであり、着脱が簡単なほか、非電動のゼンマイバネを動力に使用しており簡単に操作できる。

 ハイレックスコーポレーション <7279> [東証S]~自動車向けコントロールケーブルが主要製品。同社は東京理科大学発ロボット開発企業のイノフィス(東京都八王子市)に出資している。イノフィスが販売するマッスルスーツは、空気圧で稼働する人工筋肉の働きで動作を補助する装着型のアシストスーツであり、同社はマッスルスーツ用高耐久インナーなどを供給している。

 モリタホールディングス <6455> [東証P]~消防車のトップメーカーで環境車両や防災関連製品を手掛ける。着るだけで腰の負担が楽になるサポートウェア「ラクニエ」を提供する。前屈・中腰姿勢での腰をしっかりサポートしつつ、動きやすさと着脱のしやすさを兼ね備えたサポートウェアである。

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