明日の株式相場に向けて=沸騰する「農業・レアアース」の物色人気
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きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比101円高の3万9688円と反発。今週は8日と10日の2営業日にわたってETF分配金捻出のための換金売り需要が発生するため、全体相場には金額ベースで合計1兆5000億円弱の下げ圧力が働くとみられている。加えて容赦ないトランプ関税の通告もあって、きょうは下値模索余儀なしと思われたが、相場というのは難しい。ショート筋の買い戻しが利いて、日経平均はほぼ前日の終値を上回った水準で推移した。 トランプ米大統領の「朝令暮改」には投資家サイドも目が慣れてきており、関税に絡む内容や交渉期限が目まぐるしく変わっても、正面から受け止めずに高を括るというワザを覚えた感がある。しかし、トランプ氏の真骨頂は実は「朝三暮四」の方で、最初に理不尽な高いハードルをチラつかせ、それよりはマシという状況を作ることで条件を飲ませる。厳密に言えば貿易相手国は騙されているわけではなく、意図することは見え透いていて稚拙なのだが、分かっていても最強国である米国には逆らえないというのが現状だ。日本に対しては30~35%関税のカードを見せ札にはしていたが、「日本がこれ以上とやかく言えば」という条件付きであり、誰もそれを真に受けてはいなかったのだが、きょうの株高の背景として挙げられたのは「25%にとどまって良かった」という解釈である。株価が言わせた典型的な後付け講釈で、もし下値模索の展開となれば、相互関税上乗せ分を合わせた税率が従前の24%から25%に引き上げられた、という事実が悪材料として喧伝されたはずである。 きょうは主力株がおとなしい一方で、中小型株の大立回りが目立つ1日だった。東証グロース市場では同市場で時価総額上位のフリー<4478.T>、MTG<7806.T>、Synspective<290A.T>といった銘柄が買われ、グロース250指数が2%近い上昇をみせるなど気を吐いた。また、プライムやスタンダード市場でも大型株などと比較して、小型株指数の上昇が際立つ格好となった。いわゆる循環物色の一環として捉えてよく、日経平均が急速に上値を指向している時はそれに連動しやすい大型株に資金が誘引されるが、方向感なく小幅のレンジでとどまっている時は値動きの軽い個人投資家好みの銘柄に物色の矛先が向く。これはある意味マーケットにおける不文律といってもよい。テーマ物色の流れも半導体関連や防衛関連のような目抜き通りを行くビッグテーマでは、個別株も主力どころに視線が集中しやすいが、少々ニッチ系に属するテーマになると、そこに特化したポジションに位置するような銘柄がにわかに輝きを放つ。 例えば農業周辺株。参院選の公示日を境に各党が農業政策への取り組みを前面に押し出して論戦を繰り広げる状況となった。今回の選挙では大苦戦を自認しているはずの石破首相も大票田を意識してか、食料の安定的確保に向け農業分野に2兆5000億円規模の予算を検討する考えを表明している。株式市場もその流れに乗る形で農業関連銘柄に買いが向かった。モメンタム相場の典型であり、そこは割り切りも必要となるが、きょうストップ高を演じた農業総合研究所<3541.T>の日足チャートをみれば一目瞭然、今の投資マネーの潮流を如実に映し出している。農業総研の株価が暗示するように、農業のテーマにおいて要衝となるのは流通システム分野で、その観点から雨風太陽<5616.T>は要注目となりそうだ。また、オイシックス・ラ・大地<3182.T>も併せて注目したい。 このほかレアアース関連も妙味あり。中国の輸出規制で国際的にも供給確保に向け、米国はもとより各国の目の色が変わってきた。古河機械金属<5715.T>や東洋エンジニアリング<6330.T>が今のところシンボルストック的な値動きとなっているが、物色の流れが横に広がるとすれば、夢はあっても時間を要する海底だけではなく、現実的な都市鉱山にもスポットが当たる。アサカ理研<5724.T>や松田産業<7456.T>は要マークだ。特にアサカ理研が元来有する仕手性の強さはポイントで、最近の出来高は波状的な資金流入を示唆している。 AI関連もクラウドサービスや人材サービスとの融合で最近は好業績銘柄が増勢にあり、物色人気に厚みが出てきた。そのなか、25日移動平均線を踏み台に再び跳躍の気配をみせる豆蔵デジタルホールディングス<202A.T>に改めて目を向けておきたい。また、JTP<2488.T>は生成AIソリューションやAIエージェント分野に経営資源を投下して成長ドライバーとすることに本腰を入れており、株価が伸び切った感触はない。6月下旬につけた年初来高値奪回を通過点とする上昇トレンドが継続しそうだ。 あすのスケジュールでは、6月のマネーストックが朝方取引開始前に開示され、前場取引時間中には6カ月物国庫短期証券の入札が予定される。また、午後3時以降に6月の工作機械受注額が発表される。海外ではニュージーランド中銀の金融政策委員会の結果が開示されるほか、マレーシア中銀も政策金利を発表する。また、6月の中国消費者物価指数(CPI)、6月の中国生産者物価指数(PPI)も注目度が高い。米国では5月の米卸売在庫・売上高、FOMC議事要旨(6月17~18日開催分)などに耳目が集まる。(銀) 出所:MINKABU PRESS