雨宮京子氏【トランプ関税に戸惑う市場、ここからの展望を読む】(1) <相場観特集>
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―思惑錯綜する夏相場、日経平均4万円大台定着は可能か― 7日の東京株式市場は様子見ムードの強い地合いで日経平均株価は下値を探る展開を余儀なくされた。トランプ米政権が打ち出す関税政策に対する警戒感から上値の重い状況にあるが、下値では出遅れた向きの押し目買いやショート筋の買い戻しが入り、下げ幅も今のところ限定的なものにとどまっている。不安材料も少なくないなか、今後サマーラリーに向けた動きは期待できるのか。また、注目しておくべきポイントは何か。ここからの相場展望と個別株の動向などについて、雨宮総研代表の雨宮京子氏、SBI証券投資情報部長の鈴木英之氏にそれぞれ意見を聞いた。 ●「調整交えるも上昇トレンドに変化なし」 雨宮京子氏(雨宮総研 代表) 東京株式市場では日経平均が4万円大台に乗せると戻り売りに押し返される展開が続いている。しかし、これはトランプ関税の行方を見極めたいとの思惑が買いを手控えさせているもので、内容がどうあれ形が見えてくれば相場は漸次織り込むことが可能とみている。つまり相場のトレンドは上向きであり、目先の押し目形成場面を丁寧に拾って報われる公算は大きい。実際、日経平均4万円近辺では配当再投資の買いなど実需買いが軸となっていて、この水準で瀬踏みをしてもヤレヤレ売りで手仕舞いという流れとは異なる。国内企業の25年4-6月期決算は業態によって跛行色はあるものの、全体としては好調が見込まれ、ファンダメンタルズ面から強気に構えておいてよいと思われる。 日経平均の当面のレンジは下値が3万9000円前後、上値は6月30日のザラ場高値をブレークして4万1000円近辺まで伸びる可能性があるとみている。トランプ関税に絡み一時的に深押しがあったとしても、仮に3万9000円ラインを下抜ける場面に遭遇した場合は、迷わず買い向かって正解であろう。米国ではトランプ減税法案が下院を通過し成立に至ったことは、中期的にポジティブ材料として株高を後押しし、日本株もそれに連動する構図が想定される。また、今月20日に投開票の参院選については自民党の苦戦が予想されるが、過半数割れの可能性までマーケットはある程度織り込んでいて、仮にそうなっても波乱にはつながらないのではないか。また、選挙期間中はアナウンスされる政策への期待感から下値抵抗力を発揮しやすいという面もある。 個別株については、関税のデメリットを承知したうえで会社解散価値を下回る(PBR0.9倍前後)トヨタ自動車 <7203> [東証P]の押し目を狙いたい。また、トヨタ系の自部品会社アイシン <7259> [東証P]も株価指標面で割安感が強く、合わせてチェックしたい。このほか、政府が育成方針を掲げる映画やアニメなどのコンテンツ関連では東宝 <9602> [東証P]が魅力的に映る。「国家サイバー統括室」の発足で改めて注目度の高まるサイバー防衛に絡む銘柄では網屋 <4258> [東証G]をマーク。地方創生や国土強靱化のテーマに関しては応用地質 <9755> [東証P]の下値切り上げ波動に着目している。更に足の速い小型株ではM&A戦略によって業容が一変している児玉化学工業 <4222> [東証S]に目を向けておきたい。 (聞き手・中村潤一) <プロフィール>(あめみや・きょうこ) 雨宮総研 代表。元カリスマ証券レディとして、日興証券時代は全国トップの営業実績を持つ。ラジオ短波(現ラジオNIKKEI)、長野FM放送アナウンサー、『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)記者、日経CNBCキャスター、テレビ東京マーケットレポーター、ストックボイスキャスター、SBI証券投資情報部などを経て、日経CNBC解説者に。 株探ニュース