美容室生き残りで不可欠に、脚光浴びる「業務用化粧品・美容DX関連」 <株探トップ特集>
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―高付加価値サービスと生産性向上の取り組み活発化で関連ビジネスの商機拡大― 美容室を取り巻く環境が厳しさを増している。スタイリストなどの人手不足に加えて、シャンプーなど美容資材の高騰、水道光熱費などのコスト高が収益を圧迫。帝国データバンク(東京都港区)の調査によると、美容室の倒産件数(負債1000万円以上、法的整理)は2023年度に182件を数え過去最多となったが、24年度は2月までに197件とこれを更新している。 こうしたなか美容室業界では、生き残りをかけてプレミアムサービスの提供やデジタル技術を活用したマーケティングなどで、客単価の上昇や生産性の向上を図る動きが活発化している。美容室を取り巻く環境は厳しいものの、これらに関連する企業のビジネスチャンスも拡大が期待できそうだ。 ●24年度の理美容サロン市場は前年度比1.5%増 国内における美容室市場は小幅ながら成長を続けている。矢野経済研究所(東京都中野区)が先月発表した「理美容サロン市場に関する調査を実施(2025年)」によると、24年度の理美容サロン市場は、事業者売上高ベースで2兆1240億円(23年度比1.5%増)になったと推計している。多くの理美容サロンや事業者で料金改定が実施されたことや、それによって影響が心配された来店客数や来店頻度が、料金改定前に比べて大きく見劣りするような状況にならなかったことが要因としている。 続く25年度は同2兆1260億円(24年度比0.1%増)と予測する。企業による集客力と客単価アップの取り組みが貢献するものの、料金改定による効果が概ね落ち着くことから微増にとどまる見通しだ。 ●業務用化粧品市場も小幅な成長続く 一方、理美容向け業務用化粧品は、理美容サロン市場以上に伸びている。同じく矢野経済研究所が先月発表した「理美容向け業務用化粧品市場に関する調査を実施(2025年)」によると、24年度の理美容向け業務用化粧品市場規模は、メーカー出荷金額ベースで23年度比2.7%増の1611億円となった。続く25年度も同1615億円(24年度比0.2%増)と予測している。 メーカーによる価格改定の実施が寄与し販売実績が拡大。これに加えて、個々の理美容サロンを起点としたECチャネルでの専売化粧品(店販品)の販売(物販)も堅調だという。 ●高付加価値メニューやデジタル化がカギ 美容室の新規開業意欲は強く、店舗数の純増傾向が続いていることなどもこれらの市場拡大の背景にあるとみられるが、ただ中長期的には少子高齢化により客数の減少は避けられない。 そこで美容室では、競争力強化のためにカラーやパーマ、ヘアケアなど高付加価値メニューや製品の提案に力を入れている。当然、美容室向け化粧品各社でもこれに対応した商品の開発に注力。また、メンズ美容のニーズの高まりなどもビジネスチャンスととらえられ、業務用化粧品市場はサロン市場以上の伸びを見込む。 同時に、美容室の生き残りに欠かせないとされているのが、美容室のデジタル化だ。24時間対応のオンライン予約システムの導入による利便性の向上やCRM(顧客関係管理)システムを活用した個別対応の提案やリピート促進キャンペーンなどで顧客体験の向上を図ることが今後重要になってくる。 そこで今回は、美容室の高付加価値化や生産性向上につながるビジネスを展開する企業から注目銘柄をピックアップしてみたい。 ●美容室向けビジネスの関連銘柄 まず注目されるのは、 化粧品メーカーのなかでも業務用を中心とする企業だ。 ミルボン <4919> [東証P]は、美容室専用のヘアケア製品やヘアカラー剤などを製造・販売する業務用化粧品メーカー。20年6月からは公式オンラインストア「milbon:iD」を本格スタートし、プロが使うヘアケア・コスメの情報を提供し、美容室で取り扱っているブランド(オージュアなど)をオンライン通販(EC)で入手できるようにし、登録者数を順調に増やしている。また、今年5月にはナレッジコミュニケーション(千葉県市川市)と協働し、生成AIを活用した美容室向けサービスの研究・開発を開始するなど新たな価値提供にも取り組んでいる。 コタ <4923> [東証P]は、美容室向けの頭髪用化粧品・医薬部外品メーカー。美容室の来店客に髪の状態などについてカウンセリングを行い、顧客のヘアスタイルやヘアコンディションの維持に必要かつ最適な製品(シャンプーやトリートメントなど)を対面で店舗販売することに重点を置いている。また、独自に開発した美容室の経営改善システム「旬報店システム」を軸としたコンサルティング・セールスにも注力している。今年3月にはアウトバストリートメント(多層分離型毛髪化粧料)に関する特許を取得。これを応用した「コタクチュール ベース」が足もとで好調に推移している。 アジュバンホールディングス <4929> [東証S]は美容室やエステサロン向け化粧品の開発・販売が主な事業で、スキンケア、ヘアケア製品を中心に展開。また、ECで育毛剤の販売を行う。足もとでは、美容室でカウンセリングを受けた顧客がオンラインで美容室から商品購入ができる公式オンラインストア「アジュバンリンク」を24年4月に本格始動し、リピート機会の損失軽減に注力するほか、カラー事業の拡大に取り組んでいる。 日華化学 <4463> [東証S]は、繊維加工用界面活性剤など化学品事業が主力だが、売上高の約4分の1(24年12月期)を美容室向け化粧品事業が占めている。繊維部門で培った技術を毛髪に応用した毛髪科学を裏付けとする研究開発に強みがあり、美容室専売のヘアケア総合ブランド「デミ コスメティクス」を中心にヘアケア剤、スタイリング剤、スキャルプケア剤、ヘアカラー剤、パーマ剤などを展開。足もとではメンズブランドの強化などにも取り組んでいる。 ビューティガレージ <3180> [東証P]は、プロ専用の美容機器や用品、化粧品の総合卸サイト「ビューティガレージ オンラインショップ」を運営。また、美容サロンやクリニックの店舗設計デザイン事業や経営支援などのソリューション事業も展開している。足もとでは、生成AIなどの最新テクノロジーやデータベースの活用によるECの強化や、BPOサービスによる経営支援などにも取り組み、美容サロン業界向けプラットフォーマー機能の最大化と新たな価値創造による店舗開業支援力の大幅強化を図っている。 SCAT <3974> [東証S]は美容ICT、ビジネスサービス、介護サービスの3事業を展開しており、うち売上高の約6割を美容ICT事業が占めている。同事業ではPOSレジ顧客管理システム「Sacla(サクラ)」をはじめ、Web予約システム「予約マイスター」、美容材料ディーラー専用販売管理システム「i-SCAP EX」などを提供している。6月には「Sacla」シリーズの最新版である「Sacla PREMIUM Plus-DX Partner for Beauty-」をリリースしており、CRMを核にした運営改善と顧客対応を支援している。 サインド <4256> [東証G]は、理美容店舗向け予約管理システム「ビューティーメリット」の運営が主な事業。大手の集客・予約サイトとシステム連携することで、予約枠の最大化・管理業務の効率化が可能なほか、クーポン設定・スタッフ管理・シフト管理など、理美容店舗の管理運営に必須な管理業務をデジタル化して提供しているのが特徴。更に売り上げや予約数のデータも同システムで管理することによりサロン業務全体の一元管理を可能にしているのを強みに契約店舗数を順調に伸ばしている。 更に、7月1日に飲食・理美容業界の店舗DXを支援する新会社 LINEヤフービジネスパートナーズを設立したLINEヤフー <4689> [東証P]などにも注目したい。 株探ニュース